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やっぱり苦しいかもしれない

「……遅いな」

「う〜ん。 遅いね」


 昼食の準備を終えてテーブルに着席する僕たちはレイラの帰りをじっと待っていた。


「しかし何をしているのやら。 レイラはいつもこんな体たらくなのか?」

「う〜ん。 いつもは時間通り帰ってくるんだけど……今日はヴァイスくんもいるから張り切っちゃってるのかな」

「……張り切ってる? それは一体……」

「いやぁ悪いね。 遅くなってしまったよ」


 僕がサヤの発言について追及をしようとした矢先、転移したレイラが目の前に現れた。


「うぐっ……お帰りなさいませ」

「レイラさまお帰り〜!」


 レイラの姿を見て、僕は思わず戦慄してしまったもののサヤは慣れた様子でまったく気にしていない。

 レイラの明らかに高そうな黒色のドレスは返り血に塗れて模様を作っており、その背には大きな魔獣の死体が担がれていた。

 少し離れていても香ってくる獣の香りと血の匂いはなかなかにキツイものがある。


「……ん? この料理はセリカが作ったのかい? 悪くないね。 私はお腹が減った。 早速いただくとしよう」

「えぇ……」


 レイラは担いだ魔獣をそのまま地面に叩きつけ、着席すると同時にナイフとフォークを手に取って食事を始めた。

 そのテーブルマナーこそ優雅なものであるが、死臭が漂うその様相はまるで殺人現場のような奇妙さを醸し出していた。


「? セリカちゃんど〜したの? 食べないの?」

「い……いえ、いただきますよ」


 なぜサヤは平気なのだろうか?

 そう不思議に思いながら食事をすすめるが……


「うっ……うぐ」


 非常に気分が悪い。

 鼻からダメージを受けすぎてもはや味が分からなくなってきた。


「……? どうしたんだいセリカ。 体調が悪いのかい?」

「い、いえ大丈夫です。 お気遣いなく」

「ふむ……熱は……なさそうだね」


 僕を不快にしている当の本人は、あろうことか手を伸ばして額に当ててきた。

 より強烈な臭いを至近距離で浴びせられ、僕の我慢は限界域に達してしまう。


「…………きゅう」

「……!? セリカ? おい、おい!? しっかりしろ!?」

「え〜!!! セリカちゃん大丈夫!?」


 焦ったようなレイラとサヤの声を聞きながら、僕は意識を手放すのだった。


 ★


「……ん。 ここは……」

「おや、目が覚めたか。 よかったね」

「お! セリカちゃんおはよ〜!」


 目を覚ますと僕はレイラに膝枕をされていた。

 先程までの返り血に塗れたドレスからは着替えたようで、黒色ではあるものの別のドレスへと変わっていた。


「急に倒れたものだから驚いたが……大事ないようで助かったよ」

「はっはぁ……」


 どうやらレイラは僕が気絶した原因に気がついていない様子だ。

 まぁとりあえず難は去ったわけだから助かった……。


「さて、起きてそうそう悪いが……今晩の支度をお願いできるかな? 苦しければ回復魔法をかけてあげるが」

「あぁ……はい。 おまかせを」


 別に身体がダルいわけでもないため料理自体は可能である。


「そうだ。 食材は私が狩ってきたあれを頼むよ。 下ごしらえからよろしく頼む」

「……あれ?」

「ほら、あれさ」


 胸を撫で下ろした矢先、僕は再び地獄へと叩き落とされる。


「……!!!」


 レイラが指差した先にあったのは先程の魔獣の死骸。

 下ごしらえが終わっていないということはつまり、先程の臭いをそのまま放っているということだ。


「…………きゅう」

「……!? セリカ? おい、おい!? しっかりしろ!?」

「え〜!!! セリカちゃん大丈夫!?」


 あまりの現実を受けとめきれなかった僕は再び意識を手放すのであった。

明日はお休みかもです

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