お互い苦労人
「……え、ヴァイスくんだよね? 私のことをサヤって呼ぶってことは?」
「あ、あぁ。 お前はサヤだよな?」
僕の問いかけにサヤはこくりと頷いた。
……驚きだ。
まさかこんなところでサヤと再会するだなんて。
「いや〜。 メイドさんになったってのはこの間聞いてたけど、まさかこんなに可愛くなっちゃうだなんて」
「まぁ色々あったからな。 この身体にもある程度慣れた」
「ふ〜ん。私としてはキュートなヴァイスくんも全然いいと思うけどね!」
昔と何一つ変わらず、ハイテンションのサヤにどこか懐かしさを感じながら、僕は一つ質問を投げかけた。
「ところで、どうしてこんなところにいるんだ?」
「……え」
「どうして天界に戻ってないんだ?」
「…………」
以前魔法通話をしたときから問い詰めようと思っていたことだ。
案の定サヤは「え〜っと」と目を泳がせて言い訳を探していた。
しめしめ、いい気味だ。
「どうしたんだ? この間あんだけ僕をバカにしておいて、まさか天界から追放されたまま、なんてことはないよな?」
「う……うぐ!」
サヤは悔しそうな顔を浮かべた後、観念した表情で肩を落とした。
「そうだよ。 追放されたまま……ずっと帰れなかったんだよ! どうだ! まいったか!」
とうとう観念したサヤはなぜか胸を張って得意げな表情で高らかに宣言した。
「……そうか。 まぁ、生きていたらいいこともあるさ」
「あ〜! ちょっと! 憐れみの視線向けるのやめてくれない!? 言っとくけどヴァイスくんだって対して変わらないんだからね!?」
「うぐ、それを言われると耳が痛い」
なんだかんだ言って僕もサヤも境遇は似たようなものだ。
かつての威厳はどこへやら、誰かの下でヘコヘコ働く日々……。
「……それで、どうしてここに?」
「ん? いやぁ……まぁヴァイスくんと違って私は封印はされなかったから、追放されて……でもその時は女神の力を失くしちゃっててね。 色んな人と出会って生活してきたんだ」
「……へぇ」
先程までの明るさから一転して、どこか憂いげな雰囲気を漂わせるサヤを見て、僕はそれ以上の追及を控えた。
「レイラさまに拾ってもらったのも成り行きだね。 色々あってお世話になってるんだ〜」
「ふふっ。 お前が誰かに『さま』だなんて付けるのはなんだか新鮮味があるな」
「あ〜! そんなこと言ったらヴァイスくんだって、最初私に敬語使ってたじゃん! お互い様だよ!」
「あぁ。 そうかもな」
なんだかこんなやり取りをするのも懐かしいように思える。
「そうだ。 レイラに紅茶を淹れてくれと伝言だ。 あまり長居すると不思議に思われてしまうだろ?」
「りょ〜かい! ヴァイスくんも手伝ってくれるよね?」
「仕方ないな。 僕の淹れる紅茶は不味いぞ? それと、今はセリカだ」
「あははっ! なにそれ。 分かったよ、セリカちゃん!」
かくして僕たちは遅れを取り戻すべく、急いで紅茶を用意するのであった。




