試験 前編
3時間くらい空を飛び
白い街が見えてきた。
「すごい!!!王都だ!!」
空中で、はしゃぐアリー。
「確かにすごい町並みだ。」
王都の周りは、大きな白い壁で囲まれている。
壁には、黒くて大きな鉄柵がついている。
あれが、門だろう。
グレーの屋根と
クリーム色をの石をベースにした町並みで、
清潔かつおしゃれさを感じる。
その町並みの広さは、視界に収まりきれないくらい広がっていた。
「あれが、お城かな!」
とアリーが指を差した方向を見ると、
一番でかい建物が見えた。
オレンジの尖った屋根が無数にあり、
壁は、白い壁をしている。
一番高いところには、旗らしきものが見える。
「まぁ、あれしかないよな〜。」
あんなに目立つのが城じゃなきゃ、
どこが城になるんだろう。
「ん~~っ!楽しみになってきた!!!」
とアリーは、目をキラキラさせている。
「とりあえず、門に行こう。」
「うん!」
門に、向かうことにする。
門の前に降りたら、2人の騎士がいたので
騎士のところに向かう。
「おはよう!少年!少女!君たちは、ドルバール
付与術学園の試験を受けに来たのかな?」
と騎士の一人が質問する。
「はい!そうです!なんでわかったんですか??」
アリーが返事をして、聞き返す。
「もう、何年もこの仕事してるから、
この時期に、子供で剣を携えてくるのは、
大体ドルバールの試験を受けに来る子さ。
危なそうなものは、剣だけだね。
一応、検査をしてもいいかな?
荷物を見せてくれる?」
と、騎士に荷物を見せて
安全かどうか見てもらう。
「よし、大丈夫だよ!試験頑張ってね!」
と門の中に入れる許可をもらい、
応援してもらった。
門の鉄柵が凄い音を立て、上がっていく。
「はーい!門番さん!ありがとう!」
「ありがとうございます。」
俺たちは、お礼を言って門の中に入った。
「わぁ!!すっごい!」
アリーは、キラキラした目で周りを見渡している。
目の前には、たくさんの建物に
たくさんのお店、たくさんの人がいた。
「こんな所で勉強できるなんて、素敵すぎる。」
アリーのキラキラした目と恍惚とした
表情が止まらない。村育ちだから
こういう都会に憧れを持つのも、当たり前なのだろう。
「早く、行かないと試験に遅れるよ。」
と先に、ドルバール付与術学園に向かうことに
した。
「あ、待ってよ〜!」と
アリーも慌てて、俺についてきた。
しばらく歩くと、同じ年代くらいの
子供たちがちらほら見えてきた。
みんな、タキシードやらドレスやら
かなりいい格好をしている。
「もしかして、みんな受験生かな?」
と耳の近くでこそこそと
アリーが話しかけてくる。
「まぁ、そうだろうな〜。
あ、あそこじゃない?」と指を差す。
オレンジの屋根に、白い壁の
どでかい建物が見えた。
建物に子供たちが入っていく。
近くに来ると、ドルバール付与術学園と書いてあ
る。
「ここが、ドルバール!よっし!
試験を頑張ろう!絶対に合格するぞ〜!」
アリーが中に走って行く。
「あ、ちょっと待ってアリー!」
と追いかける形で付与術学園の中に入った。
「うわ、なんだこの人の数。全員受験生か?」
中に入ると、見渡す限り、子どもばかりいた。
「・・・とりあえず、あそこに集まらないといけないみたいだね。」
アリーはそう言いながら
少しげんなりとした顔をしている。
嫌だが
子どもたちが、集まっているところに
向かうことにした。
30分ぐらい待つと上から
人がゆっくり降りてきた。
重力付与で浮いているみたいだ。
手から、黄色の筒を出す。
「やあ、みんな!おはよう!!
俺の名前は、デール=ディクスだよ!
この王立ドルバール付与術学園の教師をしている!
デール先生と呼んでね!
今回の試験の案内と監督を務める!
短い間だけど、よろしくね!」
とハキハキと大声で挨拶をするデール先生。
30半ばくらいだろうか?
黒紙で前髪をパッツンにしている。
丸い黒縁メガネをかけて、
目は、糸のように細い。
シャツに赤い蝶ネクタイをつけて
赤いローブを着ている。
下は、黒いスラックスに黒い革靴だ。
「それでは、試験の流れを伝えるね!
まず筆記試験!その後は、水球飛ばし。
あとは、面接になります!
それでは、あっちが筆記試験会場になります!
ちなみに、わかってると思うけど
筆記試験が不合格だと
水球飛ばしに行けないし、
水球飛ばしも合格しないと
面接に行けないから、
みんな頑張ってね!」
とデール先生は、指を指して
みんなを試験会場に促したあと、
さらっと恐ろしいことを言い出した。
知ってはいたけども。
周りが殺伐とした雰囲気になった。
周りの子どもたちは、
ぞろぞろと試験会場に入っていく。
「よし!頑張ろう!」
アリーは緊張していないみたいで、いつも通りだ。
「おう!」
俺達も試験会場に入った。
適当な席に座る。
全員が座ったら、デール先生が
教壇の前に立った。
「それでは、筆記試験を始めます!
目の前に置いてある紙が
問題用紙と筆記用紙だから、
終わったらこっちに持ってきて。」
と説明された。
「みんな筆記用具を準備したかな?
それでは、始め!!」
デール先生の合図で
一斉に紙がめくれる音とペンの書く音が、
辺りから聞こえてくる。
「名前を書き忘れないようにね〜。
失格だから。」と
前の世界のテストでも、聞き馴染みの
注意喚起をしていた。
数十分後、最初に席を立って
デール先生のところに
答案用紙を持っていく子供がいた。
「どれどれ〜」と用紙を眺めるデール先生。
「よし!合格!!あっちの扉に行ってね!」
大声で合格発表して扉に指を差す。
(え!?その場で合格、不合格と言われるの?
きっつ!!!確かに、落ちたら次の試験に
行けないとは言ってたけども。)
周りの子供たちも、察したようで
空気が重くなる。
それから数分後、解けた子供たちが
たくさん出てきた。
合格!合格!合格!とデール先生の声が聞こえる。
「君は・・・不合格!!今すぐに帰ってね。
道中お気をつけて。」と
ついに初の不合格者が出てきた。
女の子だ。
教壇から俯いて泣きながら帰っていく女の子。
さらに、試験会場が重くなる。
「合格!不合格!不合格!不合格!」
とさらに、不合格者が多数出てきた。
空気が重すぎる。
答案用紙を書き終えたのに
中々立ち上がらない子もいる気がする。
だが、その空気を一人の少女が切り裂いた。
「先生!!お願いします!!」と大きな声で
答案用紙を提出する。
アリーだ。
「どれどれ〜!」とアリーの
答案用紙を眺めている。
「うん!君は合格!というか満点だね!!
すごい!!」
アリーの満点合格が聞こえた。
こっちに向かってピースしている。
(さすがはアリーだ。・・・よし、行くか!)
俺も答案用紙の空欄を全て埋めたので、
デール先生のところに向かう。
「よろしくお願いします。」
答案用紙を提出する。
「どれ、うーん。」と用紙を眺める
デリー先生。
「うん!合格!あちらに進んで!」
と合格発表をもらった。
扉を開けると外に繋がっていた。
たくさんの子どもたちがいた。
「ヤッホー!マルクス!」と
手を振ってくれる。
「アリー、満点てさすがだな。」と褒める。
「でへへ〜すごいでしょ〜」
と得意気なアリー。
それから10分後、
デール先生が扉から出てきた。
「やぁ、待たせてごめんね!
これから水球飛ばしの試験会場に行くから
ついてきて!」とデール先生の指示に従い、
ついていくことになった。
俺とアリーは、筆記試験を
合格することができて、
俺達なら行ける!と確信した。
だがこの後、
試験の恐ろしさを
目の当たりにすることになった。
読んでくださってありがとうございます!