エピローグ
20話です!
朝になった。
俺とアリーは、昨日の疲れのせいか、
未だに眠っていた。
「「すーっ。すーっ。」」と寝息を立てる俺達
ガチャッ
「二人とも、起きてくれ!!」
医者の先生が、俺達を起こす。
「・・・・んー。どうしたんですか?」
俺が先に起きて、返事をする。
「んー。んっ!ふぁ〜〜」
アリーも起きたようだ。
「手術は、終わったよ。師匠に命の別状はない。」
「「よっしゃぁ〜!!!!!」」
俺達は、喜んだ。
アリーも俺も、両手を握り合い
喜びのダンスをする。
喜んでいる俺達に
「もう、お見舞いできるから行きなさい」
と先生に言われた。
タタタタタタッと走る。
ガチャッ!!
「師匠!!!」
アリーが勢いよくドアを開けて入る。
その後から俺も入る。
「アリーさん!マルクスくん!」
と元気そうな師匠がいた。
「師匠!大丈夫??」
とベッドに駆け寄ったアリーは、
心配そうな顔をしていた。
「うん!私は大丈夫だ!」と笑顔で言った。
「元気になったら、また訓練を一緒にできますね!
退院っていつになるんですか??」
とアリーが先生に聞く。
「・・・・・・それが、」
「私から、話をさせてくれ。」
師匠が先生が喋ろうとしたが
手を上に上げて
話を制止する。
「・・・アリーさん、マルクスくん。
・・・ごめん、最後まで君たちの
訓練の面倒を見ることがはできないんだ。」
師匠は俯きながら、話す。
「「どういうことですか??」」
俺とアリーは、声を揃えて聞く。
その言葉に、師匠は唇を噛む。
体に掛けてある布団を剥ぐ。
俺とアリーは、師匠の全体を見て、驚く。
両足がないのだ。正確には。
両足の膝から下がないのだ。
「ゴブリンの矢に、毒が塗ってあって、
私の足は壊死してしまった。
あのままでは、死んでいた。
生きるために足を切り落としたんだ。
義足を履けば、歩けるようになるとは
思うが、前みたいには戦えない。
義足を履くのにも、かなり時間がかかる。
君たちに、修行できるのかも怪しい。」
師匠がない足をさする。
足の感覚がないと言っていた時に、
気づいていれば、
軍隊狼から助かった時に
すぐに帰っていれば、
いろんな後悔が、込み上げる。
「・・・師匠は、騎士団を作るという夢は?」
返事がわかってても聞きたかった。
師匠は黙った。
「こんな、足では無理さ。」
師匠は、俯いたまま喋る。
夢が潰える瞬間とは、どれほど悲しいのだろう。
どれほど、虚しいのだろう。
俺もアリーも、下を向くしかなかった。
師匠にかける言葉が出ない。
何か言わなければ、
そう思った時、
師匠が口を開いた。
「普通はね。」
俺達は、師匠の言葉で顔を上げる。
「でも、私は自分の騎士団を作るよ!!」
その口調からは、いつもの師匠の
覇気を感じた。
「重力付与で、浮くこともできるし、
剣を振れる腕がある。
こんなことで、
自分の夢を、目標を、諦めないよ。」
いつもの、師匠に戻っていた。
いつもの、かっこいい師匠に。
「師匠。なぜ、自分の騎士団を作りたいんですか?」
アリーが聞く。
確かに聞いたことがない。
「・・・先生、外に出てくれるかい?
3人だけにしてほしいんだ。」
先生は静かに頷き
外に出ていった。
「これから話す話は、他言無用だよ?」
師匠が真剣な目でこっちを見る。
俺とアリーは無言で頷く。
「私は、ある人を探している。
その人は、元陽翼の騎士団で
すごい優しい人だった。
でもね、ある事件が起きて
黒騎士になってしまった。」
黒騎士とは、
罪を犯した騎士を意味する。
「だが私は、あの人が罪を犯すとは
到底思えない。
私は、本当のことを知りたい。
そして、あわよくば
あの人の無実を証明したい。
あの人は、現在どこかの国に
逃亡している。
それを知るために
情報が必要なんだ。騎士団長になれば
いろんな情報を手に入れれる。
小さい情報から国家機密までね。
あの人を見つけるために、
無実を証明するために、
私は騎士団長になりたい。」
静かだが、言葉に力強い意思を感じた。
「これが、私の夢であり目標だ。
少しがっかりかい?大した夢じゃないだろ?」
師匠が少し笑って言う。
緊張させたのが気まずいのだろう。
数秒間、沈黙が流れる。
その沈黙をアリーが消した。
「いえ、師匠て感じです!」
ニコっと笑ってアリーが話す。
「優しい師匠が、
その人の無罪を証明したいくらい
素敵な人なんですね!
私は、師匠の夢をこれからも応援します!」
その言葉で、師匠が涙目になる。
「だが私は、君たちの面倒を最後まで
見ることはできない。この足で、
歩けるようになるのに時間がかかる。」
師匠は、自分の夢より
俺たちのことを気にかけていた。
「気にしないでください!毎日報告に来ます!!
毎日、マルクスと2人で修行して
マルクスと毎日、報告に来ます!」
アリーは、
師匠を真っ直ぐに見る。
「そして、報告した内容から、
私達にアドバイスをしてください!
そして、私とマルクスがすごい騎士に
なります!!
そしたら、師匠の夢に近づくでしょ?」
その提案を聞いた師匠から
涙が流れる。
アリーは、師匠に抱きつく。
「これからも、私達の面倒を見てください。
すごい騎士に、育ててください。」
2人は、抱き合いながら泣いていた。
アリーの言葉に毎回、驚かされる。
(アリーには、敵わないな。)
「マルクスくん、こちらにおいで」
涙声の師匠に呼ばれる。
師匠の近くに寄った。
「アリーさん、マルクスくん
君たちはすごい子だよ。」
師匠が、急に褒めだした。
「いや、俺は」
俺は否定しようとするが
師匠が、手で制止する。
「アリーさんは、付与術士としての
ポテンシャルはすごい。
間違いなく逸材と呼べるだろう。」
師匠の言葉で、アリーが照れる。
「それに対して君は、最初は修行から
逃げると思っていた。
でもね、見てご覧。指輪が痛くないだろう?」
あれ?
確かに、師匠からもらった指輪が痛くない。
あの家から100m離れているのに、
「100m離れたら、指輪が締め付ける
認証付与をしたという話をしただろ?
でも、認証付与の内容に続きがあるんだ。」
続き??なんだ?
俺は泣きやみ、何だろう?と考える。
「あの家から、100m離れたら締め付ける。
ただし、訓練から逃げたいと
指輪をつけた人が、思う時のみ。ていう風に
認証付与したんだ。」
驚きのあまり、きょとん顔になる。
そういえば、重力付与で
結構、高く空を飛んだ時も、
ポーションを作るために
薬草を取りに言った時も
今回の訓練でも、10Kmくらい
離れたのに指輪が痛くならなかった。
「君は、4年半ずっと指が痛くならなかった。
つまりは、逃げなかったてことだ。
毎日、訓練を必死にしたってことだ。」
師匠は、俺の頭に手を置く。
「君は、訓練から逃げてた自分を変えることが
できたんだよ。それって、
すごいことじゃないか?」
師匠が、頭を撫でてくる。
目標を持ったアリーと師匠に憧れた。
目標を持つアリーと師匠みたいに
なりたくて必死に頑張った。
そんなすごい人たちに
褒められるのは、少しだけ
2人に近づいた気がした。
だが、
「・・・・師匠。俺には、
目標がありません。アリーと師匠は、目標があって
それに向かって努力してて、
凄く尊敬しています。
二人みたいになりたくて、4年半頑張りました。
でも、まだまだ俺は、2人みたいには
なれていないと思っています。」
俺は心の中を、アリーと師匠に伝える。
「俺はすごくなんか・・・ないです。」
師匠の言葉を、否定する。
「・・・ぷっ。あははははっ!!」
師匠が大声で笑う。
俺とアリーは、ぎょっと驚く。
「な、なんで笑うんですか!!?」
俺は、心の中をさらけだして
笑われるなんて、恥ずかしくて死にたくなった。
アリーは口をぽかーんと開けている。
「あははは!!いや〜ごめん、ごめん。
マルクスくんが、そんなことを思っていたのを
知らなくてね。」
師匠が涙を流しながら笑う。
そんなに面白いか??
俺は、なんだかムカついてきた。
「でもね?マルクスくん、私達みたいに
なりたいって、それは無理だよ。」
師匠が俺の告白を切り捨てる。
「な、なんでですか!?」
俺には諦めろということなのか??
そんなに俺は、だめですか?
悲しくなってきた。
だが、思っていたことと
違う言葉が帰ってきた。
「君は、君なんだぞ。
私達を目指したって
君が求めている
将来の君には、なれない。」
師匠が、俺の手を握る。
「君は、君だけが本気で目指せるものを
見つけなさい。見つけたら、
私なんて足元に及ばないくらい
すごい付与術師になれる。
君が憧れた、2人の内の一人が保証する。」
「私も保証する!
マルクスはすごいやつだよ!」
アリーが両手で
俺と師匠の手を掴む。
師匠とアリーの言葉でやっと気づいた。
俺はとっくに、憧れていた
二人に認められていたのだ。
俺は俯いて、返事をする。
「・・・・・・はい。・・・・頑張ります。」
顔からポタポタと
雫が落ちるが、
アリーと師匠は
何も言わず、手を握り続けてくれた。
読んでくださって、
ありがとうございました。
これで、1章が完結です。
楽しんでいただけたでしょうか?
今回、初めて小説を投稿してみて
小説を書くだけでも、こんなに
大変なんだと実感しました。
続けて読んでもらえるか
わかりませんが
最後まで話を書きたいと思っています。
これからも、この物語に
お付き合いいただけると
嬉しいです!
それではまた!