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付与術師だらけの世界で、頂点になります。  作者: ポンキチ
1章 少年編
18/42

目標

18話目です!


「まずいな。」

師匠の額から、こめかみにかけて 

汗が流れる。 

周りには50体を超えそうな数の狼がいた。


「あの狼は、軍隊狼って言うんだ。

1匹で行動をするが、獲物を見つけると

遠吠えで仲間を呼び。獲物を囲むんだ。

私が、騎士団にいた頃だが十数名が

あいつに殺されたよ。」


俺たちに、狼の説明や過去の話ををするが

そんな場合ではない。

返事をしようにも、恐怖で

声が出ないのだ。 俺とアリーは震える。

師匠も、俺達から返事がないので

悟ったのだろう。


「・・・いいかい?ここから動いちゃだめだよ!」  その言葉を言った瞬間。

雄叫びを上げて、狼が襲ってきた。

「ふっ!」

師匠は、襲ってきた狼の首を切る。

俺たちの横に、死体が倒れる。


次に、上から3体。

師匠はくるりと躱しながら

正確に狼の首を切る。


1体、4体、2体と

次々と狼が襲ってくるが

師匠は、俺達から

離れずに狼の首を切っていく。

騎士の現役を退いた今でも、

ここまでのことができる師匠を見て、

恐怖が薄れていった。

(この人、ここまですごい人だったのか。)

このまま、狼を倒して行けば!!


希望が見え始めた。

「師匠!頑張れ!!」

アリーは、恐怖から立ち直り

応援していた。


先生はアリーの声援を聞いて

ニコっと笑い、狼の首を切る。

「ああ!少しだけ待ってて!」


そこからは、何体襲って来ようと

首や、腹を切られる狼たち。

気づけば、そこら中にいた

軍隊狼は、20体くらいになった。


「「師匠!頑張れ!!頑張れ!!」」

俺とアリーは、応援することしか

できなかった。


そして

最後の狼になり、首を切りつけた。


「ハァッ。ハァッ。ふぅ〜〜。なんとかなったか!」

緊張の糸が切れて、座り込む師匠。

「「師匠〜〜!!」」

俺とアリーは、師匠に抱きついた。

死から開放されて、テンションが

おかしくなっていた。

涙が止まらない。


「こらこら、血がついてしまうぞ。」


師匠には、たくさんの軍隊狼の返り血がついていた。


「がまいまぜん!!」


アリーは鼻水を出し、泣きながら返事をする。

俺も鼻水がダラダラだ。


「もう、仕方ないな〜。

血を洗いたいから。早く帰ろう。」

師匠は、俺たちの背中をさする。

余計に泣いてしまう、俺とアリー。


(本当によかった。また、死んでしまうところだった。

・・・・・・あれ?前世では死をすぐに

受け入れてたのに。今、生きていることを喜んでいる。

助かった安心だろうか?)


不思議に思ったが、考えるのをやめた。 


師匠から抱きつくのをやめて、離れようとした。





その瞬間、ドスッドスッと鈍い音がした。

師匠が俺達をドンッと遠くに

突き飛ばした。

何が起きたかわからない。

師匠を見ると、両足に矢が刺さっている。


「逃げろ!!!」 師匠が叫ぶ。

その瞬間、黒い影の線が

師匠を襲う。

全部、矢だ。


「風付与!!!!!」

師匠は強い風を周囲全体に起こす。


ビュオオオオオオオオ!!!と

旋風が吹いた。


俺とアリーが吹き飛ぶ、

降ってきた矢も、そこら中に吹き飛ぶ。


「ハァッ、ハァッ。いっ!!」

師匠は、両足の矢を抜いた。

(ズッッ)(ズッ)(ズッ)

肉が割ける、嫌な音がする。


俺とアリーも起き上がり

矢が飛んできた方向を見る。


「ぎゃっぎゃっぎゃっ!」

気持ち悪い声が聞こえる。

全長70cm、緑の体に

横にとんがった耳、舌を見せていて

すごい気持ち悪い。


ゴブリンだ。

弓だけでなく、石斧や棍棒を持っている。

その数は、10、50、100、1000?

数えきれない数いた。


「ぎゃぁっ!!」

無数のゴブリンたちが師匠を襲う。


「師匠!!!」

アリーは、師匠がいる場所に走る。

「マルクス!ついてきて!!」 

「お、おう!」

声に反応して、反射で動く。


「こっちに来るな!!逃げろ!!」

師匠が叫ぶ。だがアリーは無視する。

「氷付与!!!!!」

師匠の上にドームの形をした氷を作る。

氷付与が終わり、落ちる。

「マルクス!飛び込んで!!! 」

俺とアリーは、師匠の元に

頭から突っ込む。その瞬間に

ドーム形の氷が、俺たちの上に

ドンッとかぶさるように落ちてきた。

「マルクス!この氷を補強して!!」

「おう!!!!」

俺達はさらに、氷の厚みを増やすため

付与術をかける。

厚みが30cmくらいになっただろうか。


外からは、ガキン!バキ!と音がする。

ゴブリンたちが叩いているのだろう。

だが、しばらくは大丈夫そうだ。


「なぜ!逃げなかった!なぜ言うことを聞かなかった!!!」


師匠がすごい剣幕で怒りだす。

だが、言い返す。

「師匠が逃げれなかったからです。」

アリーの言葉で、唇を噛む師匠。


その後、諦めたように

はあっと、大きな溜め息をつく。


「ここからどうするんだ??」


思考を切り替えたようだ。

ここにいても、埒が明かない。

氷を、補強し続けてもいいが

あの数のゴブリンだ。

いつかは、壊される。


「この氷を衝撃付与で砕いて、崩れてる隙に

重力付与で空に飛びましょう。」


アリーが、提案する。


「無理だ。あの数のゴブリンだぞ。

今、氷でぼやっとしか見えないが

この氷の全体から、砕ける音がする。

全方位ゴブリンがいると思ったほうがいい。

砕いた瞬間に襲われる。」

師匠が否定する。


「なら・・・・どうすれば。」

アリーは、悔しそうに俯く。


「師匠、足は動きそうですか?」

俺は、矢に刺された足の具合を聞く。


「すまないが、ピクリとも動かない。

多分、矢に毒が塗ってある。立ち上がることは

できない。」


動けない師匠に、

全方位から来るゴブリン。

氷のドームも時間が経てば崩される。

氷付与の補強もいつかは壊されるし。

何より密閉された空間だから

酸素も少ないだろう。

時間の問題だ。


もう諦めるしかないのか? 

人生を諦めて、また死ぬのか。

前世の時のように、死を受け入れた方が

楽なのか?


前の世界を思い出す。

やりたいことも夢もなく。

心に活力の湧かない日々。


考えなしに

ありきたりな就職先について、安い金を稼ぐ日々。


近寄ってきた女を口説いて、恋愛をして、キスして、

セックスして、別れる。

付き合った相手は、好きだったかもわからない。


友達に誘われた飲み会も、付き合いだと思って

行ったが、愛想笑いをしてその場で相づちを

打つだけ。


周りから見たら普通の人生を送っていたはずなのに

なぜか何もかも楽しくなかった。

生きているはずなのに、生きている感じが

しなかった。


そして、トラックに轢かれて死んだ。


そして、この世界に転生した。


そして、また死ぬのだ。


次は、どこの世界に転生するのだろうか。

もしくは、魂だけになって、

もうこういう風に人として生きれないのだろうか。



まぁ、死んだらわかるか。

 










死んだら、わかる?

 




今回は俺だけじゃない。

ここで諦めたら


アリーも死ぬんだ。


師匠も。


アリーは必死に夢を追いかけてる。

彗星騎士団に入る夢を。


師匠は、必死に付与術を教えてくれた。

なんの為か? 俺たちのためでもあるけど、

自分の騎士団を作りたいという夢のためだ。



なぜ、軍隊狼に襲われて助かったときに

泣いたのか。

 

理由がわかった。


助かったから、だけじゃない。



前世の世界で

考えなしの人生を送り

何も頑張らなかったのに。


この世界で俺は、4年半だけだけど


必死に頑張ったんだ。


必死に努力したんだ。


それって、必死に生きてるってことじゃないのか?


そして、必死に目標に向かって生きることって

素敵なことだと


アリーや師匠から教わったんだ。



俺は、目標に向かって努力のできる

アリーと師匠に


憧れていたんだ。



だから4年半も、嫌な努力を続けれた。

つらい修行の後の爽快感は、

達成感だけじゃない。


憧れたアリーと同じことができた喜びだ。


憧れた師匠からの課題をクリアできた満足感だ。


こんな、すごい二人を















死なせるわけには、いかない!!







「二人とも、俺の話を聞いてもらえませんか?」



俺は、初めて目標を心に立てる。


絶対に3人で生きて帰る。という目標を




読んでくださってありがとうございます。

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