070 とりあえず推移を見守ろう
それはクロサクラの修復が完了した翌日の出来事だった。
――ブオオオーッ!
突然リザードマンの集落に鳴り響く音。
これはもしかして警報の音なのか?
聞いていて不安になる音だ。
「シュル、この音は何なの?」
「これは危険を知らせる音だ。拙者は確認に向かう。お前達は宿に戻れ」
シュルはそう言うと走り去っていった。
監視役が監視対象から目を離すって……それだけのことが起きたってこと?
「アイ、ここはシュルの言う通りにしよう」
「……そうだな。今は不用意に出歩かない方がいいか」
警報音が鳴り響く中、俺とポチは宿に戻ってシュルを待つことにした。
宿に戻ると部屋から外の様子を見る。
リザードマン達は慌てた様子で集落から逃げ出しているように見える。
「リザードマン達慌ててるなぁ……」
「そうだな。シュルの言葉を信じるなら危険が迫っているらしいが」
「……俺達も逃げた方がいいのかな」
「アイがそうしたいなら逃げればいい。クロサクラに乗れば逃げられるだろう」
まあ、ポチの言う通りだがな。
ここで逃げるのは……なんかダメな気がする。
俺達に良くしてくれたシュルに悪いしな。
「……いや、今の言葉は忘れてくれ。俺は逃げないよ」
「そうか」
それから待つこと1時間くらい。
どたどた音がするなと思ったらシュルが部屋に入ってきた。
慌ててるってことは良くない知らせなんだな。
「この集落にスラッジソールが迫っている。外は危険だから絶対に出るな」
スラッジソールか。
確かそれが討伐されたら俺達は自由の身になれるんだよな。
「総力戦になるだろう。拙者も戦いに出るつもりだ」
「俺達を監視しなくてもいいの?」
「短い間だったが共に行動してお前達の人柄は分かったつもりだ」
「ふん、お前は案外甘いんだな。俺達は演技をしているかもしれんぞ?」
「いや、拙者の目に狂いはない。アイ殿もポチ殿も良き者だ」
善人かって言われると……まあ、そうかもね。
今のところ悪いことはしてないし。
「すまない。本当なら逃げろと言いたいのだが……」
「気にしなくていいよ。シュル達が勝てばいいんだし」
「……そうだな」
あ、これダメなやつだわ。
悲壮感漂ってるよ。
スラッジソールってそんなにヤバい魔物なのか。
「お前達に出会えてよかったと思うぞ。では、さらばだ」
シュルはそう言うと部屋から出ていった。
さあ、困ったぞ。
逃げる気はしないがこのままここにいたら最悪な結果になりそうだ。
でもだからって助けに向かったところで俺に何ができるって話だよな。
リザードマンと違って俺は強力な魔法を使えないし。
戦いに参加したところで足手まといになりかねん。
「……ポチ。俺達はどうすればいいんだ?」
「俺は別に逃げても構わんぞ。アイのやりたいようにすればいい」
「うーん……とりあえず外に出て状況を見てみるか?」
「それでいいのか?」
「戦うにしても逃げるにしても情報は必要だからな」
「分かった。それならインビジブルブレスレットをもう一度作れ」
「ああ、そうだな。こっそり隠れながら行こう」
俺はクロサクラの修復で余った金属でインビジブルブレスレットを作った。
そしてインビジブルブレスレットを装着した俺とポチは外に出た。
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