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064 蒼水球の秘密を聞いた

 シュルの案内で俺とポチはリザードマンの集落を観光することになった。


「この集落の名物って何かあるの?」


「ふむ……それなら水晶屋はどうだろう? いろんな水晶があって綺麗だぞ」


「へーそうなんだ。じゃあそこで」


 水晶屋か。

 もしかして旅の目的である蒼水球があったりするかな?

 ……いや、ありえないか。

 蒼水球ってリザードマンのお宝らしいし。

 店売りされてるわけないよな。


 ――てくてく。


 しばらく歩くと前面が鏡みたいなキラキラした建物に着いた。

 これ地上だったらすごくまぶしかっただろうな。

 ここは薄明かりしかないからいいけどさ。


「ここが水晶屋なの?」


「そうだ。さあ、中に入ろう」


 シュルに続いて俺とポチは水晶屋の中に入った。

 水晶屋の中は机の上にいろんな水晶玉が所狭しと並んでいる。


 ごちゃごちゃしているので【観察】で見てもどれがどれだか分かんない。

 持ち上げて確認すればいいのかもしれないが、もし落としたら大変だしな。

 あまり水晶には触りたくない。


「□□□□□□□□□」


 水晶に触らず眺めているとリザードマンに声をかけられた。

 たぶんこの店の店員だろうな。

 言葉は相変わらず何を言ってるのか分かんないです。


「何か探しているのか、と聞いている」


 シュルが通訳してくれた。

 これは助かるわ。

 相手の言葉が分からないんじゃ会話は成立しないもんな。


「ちょっと眺めてただけだよ」


「□□□□□□□□□□□□□□□□□□」


「わざわざ来てくれてありがとう。安くするよ、と言っている」


「お気遣いありがとうな」


 会話を終えると店員は店の奥に引っ込んでいった。

 店員の気遣いはありがたいが、今の俺は無一文なのだ。

 安くてもあんまり関係ないんだよなぁ……。


 まあ、そんなわけでただ水晶を眺めるだけの機械と化していた俺。

 そろそろ見るのも飽きてきたなと思い始めた時、ある青い水晶が目に入った。


 青いし丸いし、これが蒼水球だったりしないかな?

 一応、見てみようか。




 【青水球】

 リザードマンが生産する水晶の1つ。

 内包されている魔力を消費することで水を生み出すことができる。

 魔力が切れたらリザードマンに魔力を注ぎ込んでもらう必要がある。




 なんだよややこしい名前しやがって。

 蒼水球じゃないんかい。


「何か気になる物でもあったのか?」


 シュルが声をかけてきた。

 あ、ちょうどいいや、こいつに蒼水球のことを聞いてみよう。


「俺は蒼水球って物を見るためにここまで来たんだ。どこにあるか知らない?」


「……アイ殿は蒼水球が欲しいのか?」


「いや? ただ見れればそれでいいよ」


「……それならよかった。もし欲しいと言われても売ることはできんからな」


「え? そうなの?」


 やっぱりお宝なだけに他の種族には簡単にあげたりはできないってことか?

 リザードマンって意外とケチなんだな。

 俺だったら金銀財宝なんてあげちゃうぞ……たぶん。


「蒼水球はリザードマンの魔力の源。命と同等の価値があるのだ」


「命と同等って……ちょっと言い過ぎじゃない?」


「いや、事実だ。蒼水球が無いリザードマンは長く生きられないからな」


 それってマジで?

 もしそうなら蒼水球が用意できなかったらリザードマン死ぬの?


「蒼水球はリザードマンの誕生と共に現れる。そして死ねば消える」


 はえーそうなんだ。

 そりゃお宝にもなるわけだ。

 リザードマンにしか扱えないんだもんな。


「じゃあシュルも蒼水球を持ってるの?」


「ああ、持っているぞ。これが蒼水球だ」


 シュルが腰のポーチから取り出したのは深い青色の水晶だ。

 これが蒼水球か……綺麗じゃねえか。


「……もう充分だよ。見せてくれてありがとうな」


「このくらいお安い御用だ」


 よし、予想外の展開だったが旅の目的は達成できたぞ。


「じゃあそろそろ別の場所に移動しよう。ここはもういいや」


「分かった。では、行こうか」


 こうして俺達は水晶屋を後にした。

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