046 未知の言語を知るには……
3人の人間からだいぶ距離をとった。
ちらちらと後ろを見てみるが人間が追いかけてくる様子はない。
どうやら無事に人間から逃走できたみたいだ。
ホッと一安心したところで周囲を確認する。
周りには草木が生い茂っている。
どうやら荒野を抜けて森の中に入ったようだ。
ここは俺が住処にしている森とは明らかに違う点がある。
それは目の前にあった。
「なあ、ポチ。あれって……人間の家、だよね?」
そう、俺達の進む方向には人工物がいくつも建っていたのだ。
どう見ても人間の村ですねこれは……。
「そうだな。俺にもそう見えるぞ」
ポチもそうだと言ってるし間違いないな。
ってことはこの辺は人間の活動範囲ってことじゃね?
これは通り抜けるのが面倒そうだ。
「……人間が近付いてくる。アイ、隠れるぞ」
ポチがそう言うので木の陰に身を潜める。
どう考えてもクロサクラが木からはみ出ているが……【隠密】頑張って!
お前ならうまくクロサクラを隠してくれるって信じてるぞ!
「□□□□□□□□□□□□」
「□□□□□□□□」
隠れていたら会話が聞こえてきた。
でも何を喋ってるのか分かんない。
俺にも分かるように日本語で喋ってくれよなー。
まあ、無理だけど。
だってここ異世界だし。
「ポチは人間の言葉が分かるか?」
「少しなら分かるぞ」
本当かよ。
ポチすげえな。
自力で勉強して覚えたってことだもんな。
俺なんて前世じゃ英語すらまともに理解できなかったぞ。
……あ、でもポチに言語関連のスキルってなかったような?
強いて言うなら【念話】だろうか?
いや【念話】だったら俺も持っているから違うか。
ひょっとして言語ってスキルで習得するものじゃないのか?
だとしたら俺がこの世界の言語を使うことは絶対無理ってことになるぞ。
もし言語のスキルがあれば楽勝なのに。
あーちょっとでも言葉が分かるといいんだけどなー。
別にペラペラ話せなくてもいい。
せめてポチくらいの理解力が俺にもあればなぁ……。
『【名付ける者】を使用しますか?』
急に天の声からのアナウンス。
【名付ける者】を使うかだって?
まあ、別に減るもんでもないし使ってみるか……おお!?
俺の頭に大量の情報が入ってくる!
これは……もしかしてポチの記憶!?
「だから□□□と□□□だって言ったのにな」
「そうだよな。だから□□□は馬鹿なんだよ」
……分かる、なんとなくだが分かるぞ。
人間の言葉が理解できる。
恐らくポチの記憶が流れ込んだことが原因だろう。
……っていうかポチはこれだけ人間の言葉を理解しているんだよな?
しかも自力で……すごいじゃねえか。
「アイ、どうかしたのか?」
「あ、いや、なんでもない」
どうやらポチには影響が無いらしい。
まあ【名付ける者】は俺しか持ってないし、影響が無いのも当然か。
「このまま留まるのは危ない。早く移動しよう」
「分かった。人間に気付かれるのはまずいもんな」
こうして俺達は移動を始めた。
もちろんただ移動するわけではない。
周辺に細心の注意を払い、人間が見ていないかを警戒しながら進んだ。
そんな感じでゆっくり移動してたらいつの間にか夜になった。
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