026 桜よ黒く咲き乱れよ
俺はポチと一緒に荒野の大地を走っている。
まあ、俺の場合はクロサクラをガシャガシャと走らせてるだけだが。
あ、クロサクラっていうのは俺が掘り当てたロボットの名前だよ。
命名者はもちろん俺。
機体の色が黒を基調としてるからクロ。
前世の俺が死に際に見た桜が印象的だったからサクラ。
足し算してクロサクラだ。
最初はブラックナイトにしようかなって思った。
けど俺って騎士じゃないじゃん、と思い至りクロサクラにしたんだ。
このクロサクラって名前は結構気に入ってる。
やっぱり前世が日本人なんだし和の心は忘れないようにしたいよね。
「アイ! 速過ぎるぞ!」
俺の後ろでポチがワンワン吠えている。
ありゃ、いつの間にかポチを置き去りにしてしまったみたいだ。
俺の【操縦】もだいぶレベルが上がったみたいだな。
もうクロサクラはポチが追い付けないくらい速くなったらしい。
「悪いなポチ。ちょっと考え事してたわ」
クロサクラの速度を落としてポチに合わせる。
「巨人の手綱はしっかりと握っていろ」
「クロサクラだ」
「……なんだって?」
「このロボットの名前はクロサクラになったんだ。これからはそう呼んでくれ」
「巨人にも名前を付けたのか。アイは名付けるのが好きだな」
「別に好きってわけじゃないぞ。たまたま名前を付ける機会が重なっただけだ」
「そういうことにしておいてやろう」
なんだよ……態度でかいな。
あ、そういやこいつは元々態度でかい奴だったな。
「そろそろミリー鉱山の麓に着く。麓の森で今日は休むぞ」
ポチが言うミリー鉱山は目の前にある山のことだろうな。
よし、もう一息だな……ん?
なんだか寒気がするような……。
「……ドラゴンだ! アイ逃げるぞ!」
「え、ドラゴン!? どこにいるの!?」
「ドラゴンは空を飛んでいるぞ!」
ポチに言われて上を見ると確かに翼を広げたドラゴンが飛んでいた。
幸いなことにまだ俺達を狙っているような素振りは見せていない。
俺とポチは全速力で走り出した。
ドラゴンがその気になれば俺達なんて簡単に殺せる。
クロサクラの力は未知数だが、流石にドラゴンには勝てないだろう。
俺にできることは一刻も早く身を隠すことだ。
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