025 名前を決めてみました
旅に出ることになったので準備をする。
と言ってもやることはそんなに多くはない。
まず護身用の武器を作った。
これは念のためだ。
【アダマンダガー+30】
攻撃力 +200(+30)
伝説の金属アダマンタイトで作られた短剣。
伝説の金属をどこから調達したのか……それは製作者のみぞ知る。
この短剣は補正により能力値が上昇する。
アダマンタイトで作った短剣だ。
切れ味はすごくいい。
試しに鉄鉱石を切ったら真っ二つになったし。
これは取り扱いには注意した方がいいな。
それからアロアジョウ草で編んだバッグを作成。
バッグの中には回復薬、生気の薬、黄金の葉、金剛草トンカチを入れた。
回復薬、生気の薬、黄金の葉は用心のために持っていく。
金剛草トンカチは道中で【加工】を使うかもしれないから必要だろう。
最後に住処の戸締りをしたら準備は完了だ。
「準備できたのか?」
「ああ、準備完了だ」
「では行くぞ。俺について来い」
ブルーウルフに続いて俺はロボットで追いかける。
ブルーウルフは器用に木々を避けて走るが、俺はそういうわけにもいかない。
俺はロボット操縦の初心者なんだよ。
この木々の生い茂る森の中を走行させるのは難易度が高い。
「おいちょっと待て。もっとゆっくり走ってくれ」
「そうか」
だから何度かブルーウルフに「ゆっくり進め」と言った。
でも、あいつ話を聞かない。
道案内する気はあるのかよ。
「遅いぞ。もっと速く走れないのか?」
挙句の果てにはこんなことを言い出すし……。
気遣いのできない奴だよ本当に。
でも、ブルーウルフを追いかけるのは良い訓練になった。
【操縦】のレベルがどんどん上がってる。
スキルのレベルが上がるとロボットの走るスピードが増してきた。
森を抜ける頃にはブルーウルフと並走できるくらいになったぞ。
スキルの恩恵ってすげー!
「……そういえば目的地ってどこなんだ?」
荒野を走っている時、ふと気になったのでブルーウルフに聞いてみた。
「ミリー鉱山だ。このペースだと鉱山まで1日はかかるな」
「結構遠いんだな」
「ちなみに寝ずに走り続けた場合はもう少し早く着くぞ」
「……それは却下だ。俺は寝ないと倒れてしまう」
「お前は不便な体なのだな。少女よ」
「お前が体力オバケなだけだろ……ん?」
そういえば、俺達ってお互いの名前を知らないな。
いつまでもお前呼びじゃなんだかよそよそしい。
もう知らない仲でもないし名前くらい知っておいた方がいいよな。
「なあ、今更だけどお前の名前は何て言うんだ?」
俺がそう言ったらブルーウルフが急に立ち止まった。
え、何か変なことでも言ったか?
「俺に名前は無い」
「え? 親に名前を付けてもらえなかったのか?」
「俺達ウルフは互いを匂いで識別する。だから名前など必要ない」
あーそういうことか。
まあ、名前がなくても意思疎通できるならいらないかもしれない。
だけどそれは同種族だったらの話だろ。
俺はウルフみたいに匂いで識別したりしないからな。
やっぱり名前がないと不便だわ。
「俺とブルーウルフは別の種族だ。名前があった方が便利だと思うぞ」
「そうか? 俺はどうでもいいんだが」
「それじゃ決まりだな。俺はお前を何て呼べばいいんだ?」
「ブルーウルフじゃダメなのか?」
「それは種族を示す名前で個体名じゃないぞ」
「ふむ……なら、お前が決めてくれ」
「え、いいのか?」
「好きにしろ。俺は呼ばれ方にこだわるつもりはない」
本当にこいつは名前にこだわりがないみたいだ。
じゃあ遠慮なく名付けさせてもらおう。
どんな名前がいいかな?
やっぱり呼びやすい名前がいいよね。
うーん……よし、決めた!
「今日からお前の名前はポチだ!」
「ポチか。分かった、今度からはそう呼んでくれ。……ところで少女よ」
「ん?」
「お前の名前はなんだ? 名付けるくらいなんだから何かあるんだろう?」
「ああ、もちろんあるぞ。俺の名前は……えっと、あれ?」
おかしいな、自分の名前を思い出せない。
……そういえば最近、前世の記憶があやふやになってきてる気がする。
生活習慣とか食べ物については覚えてる。
でも人の名前に関することはごっそり忘れてないか?
だからって自分の名前まで忘れるのはどうかと思うの。
まあ、いいや(よくない)
俺は生まれ変わったんだ。
前世の名前に固執する必要はない。
新しく決めてしまおう。
俺は吸血鬼の女の子。
どうせなら自分にぴったりな名前がいいが……さて、どうしようか。
こういうのは下手に悩むより、スパッと決めた方がいいんだよな。
そうだな……俺のステータスはオール1から始まった。
1だからワン……は犬の鳴き声っぽくて嫌だ。
じゃあドイツ語でアイン……は男の名前だな。
ならアインのンを取ってアイでどうだ?
……いいんじゃないかな。
「どうしたんだ? まさか名前を忘れたのか?」
「そ、そんなわけあるか。いいか、俺の名前はアイだ」
「アイか。分かった、今後はそう呼ぼう」
これでよし。
お互いの名前が決まったことだし、先に進むか。
『【名付ける者】を獲得しました』
あれ、スキルを覚えた?
名前を付けることがスキル習得の鍵だったの?
まあ、あって困るものでもないだろうし別にいいか。
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