入学式
私立星蓮学院は中高一貫の学校であり。高等部は外部受験が他の最難関の公立高校と匹敵するほど超エリート校である。しかし、この学校は学業だけでなくその校風がもっとも有名である。
「新入生代表、真締 玲。」
『はい』
例えば入る為には国内トップレベルの学力が基本的に求められるにもかかわらず、大学進学を目標とした進学校というわけではない。
『この学園の校訓、自己と自由______。』
この個性を限りなく尊重した校風はもの凄いもので、生徒にかなりの自由が許されている。歴代の卒業生もこの学校での生活のおかげで自分が本当にやりたい事に気づけたんだと世界的な歌手や小説家、有名な会社の社長など幅広い分野で活躍している。
ある程度形通りの挨拶を終えて前を改めて向くと広い講堂には自分と同じ新入生、その奥には保護者がずらりと座っている。ちらほらと新入生より親の方が勝ち誇ったような顔をしているのは言わずもなが、この学園に入学出来たという事実は子供だけでなくその親のステータスとなる。まぁ、全員がそうという訳ではないがただ確かなのは、あそこに子供の入学を心から喜んでくれる親もステータスを喜ぶ親もどちらも自分にはいないという事だ。
小学校に入学してすぐ両親を亡くした俺は父の弟である叔父夫婦に引き取られた。しかしそこから反吐がでるような始まった。もともと俺を浪費家の叔父夫婦が引き取ったのも両親の残した遺産が目的だったのだ。同い年のいとこもいたが一家揃って俺を厄介者扱いしまくり家事なんかも全部押し付けられた挙句、隠れて借金をしまくった叔父が俺だけを置いて一家で雲隠れしやがった。
小6で再び1人になった俺はまた別の親戚に引き取られる事になったが、同じような生活はまっぴらごめんなわけで、中学受験をして寮に入る事を決めた。
もともと他人よりも自分の頭がずば抜けているという事には薄々気づいていた。だから学年首席は学費、寮費、0円。お小遣いもでるというこの学園に入学した。
マセがきだと言われたが関係ない。俺はこの学園での6年間首席を守りぬき、お小遣いを貯金して卒業と同時に独り立ちする。大卒でなくてもこの学園の卒業歴があれば就職もいくらか有利になる。これが自分で稼げるようになるための最短ルート。
壇上で最後に礼をして顔をあげると同時に俺はもう一度決意した。
俺は絶対に叔父一家のような汚い方法で金を稼ぐような人間にだけはならない。