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吹けば飛ぶよな、人間だもの

生み出されたハテシナユメコは双刀を呼び、

俺たちに斬りかかってきた。



「うぉ! どうすんだよこれ?!

 俺は物理で戦えないぞ!」


「そんなに堂々と敗北宣言しないでよ……

 悪いけど、薙刀を出してくれる?」


「あ!みんとすに書いてあったやつだな、了解!」



本で読んでいる装備なら、イメージしやすい……



俺は瞬時にレイの手元へ、両極双頭の薙刀を生み出した。


レイはそれを手にすると、

すぐさま組み上げてハテシナユメコの双刀を受け止める。


ガキンッという心地良い音が、コロシアムに響き渡った。



「すげぇ、小説で読んだ戦いそのまんまだ!」



ツカサが謎の感動を覚えている……

気持ちは分からなくもないが、お前も仕事しろ。


そんなツッコミと共に、俺はツカサにも勇者の姿を思い描いた。

周囲から聞こえる歓声が、徐々にヒートアップしていくのを感じる。



「おっしゃ! やっぱこの格好だと気合はいるな!」



喜んでいるツカサを尻目に、

レイとハテシナユメコの攻防は続いていた。


俺みたいな凡人には、その太刀筋を捉える事が出来ない。

ツカサも、目で追うのが精一杯という様子だった。


これだけ観客がいるというのに、

そこはまるで2人だけの世界みたいだ。



「ははっ!

 偽物とはいえ、またユメちゃんと戦う事になるとはね」



2人の剣技は、本で読んだ通りに美しい……


けれど本物のハテシナとは力量が違うのか、

レイの方が押し勝っている様に見えた。


このまま行けば、

やがてレイの薙刀が彼女の双刀を払うだろう……


これ、もしかしてツカサの出番はないんじゃないか?


レイがいると、勇者の存在感が霞む。



これならばレイだけで勝てるかもしれないと、

俺は思い初めていたのだが……



「レイ…… 大好き」



その言葉を聞いた瞬間。

レイの手が、馬鹿みたいに大きくズレた。


そして薙刀は思いっきり弾かれて、遠くへと消えていく……



俺達はしばし唖然としていたが、

周囲から沸き上がる歓声が、レイの完敗を決定付けた。


こんな間抜けな負け方ってあるだろうか……?

惚れた弱みは恐ろしいな。



「おい、お前やっぱり馬鹿なんじゃないか?

 死んでも治ってないぞ」


「あれはユメコとは別人だぞー」


「うるっさいな! 分かってるよ!!」



あのレイが、めちゃくちゃ恥ずかしそうな顔でこちらを睨んでくる。

いつも格好つけてるくせに、お前は本当そういうとこだぞ。



「仕方ねぇな、俺が戦うか!」



ツカサはしっかりと盾を構えながら、

ハテシナユメコに向かって勢い良く突進した。


そういえばこの2人が戦うのって、

みんとすでもなかったよな……



双刀の素早さを考えるとツカサには分が悪いかと思いきや、

ツカサは盾を上手く使いこなして、

ハテシナユメコの猛攻をしのいでいた。


基本的にガードが主体ながらも、

隙を見つけては剣で攻撃を仕掛けている。


野生の感で動いているのか、

ツカサの動きはとても不規則だ。


そのせいで攻撃が読み難く、ハテシナユメコは苦戦していた。

隙を突かれれば、命取りに成りかねない。


と、なれば……



「ツカサ、大好き……」



やっぱりそう来るよな。

恐ろしい精神攻撃だ……



「俺も、ユメコの事が大好きだ!!」



まぁ、相手が脳筋でなければの話だが。


こいつのメンタルは、底無しである。



「おーい、そいつとユメちゃんは別人だぞー」


「うるせぇな!分かってるよ!」



自分だけやられた事が悔しいのか、

レイはツカサに向かってヤジを飛ばす。


意外と子どもっぽいところがあるよな、レイ……


まぁ今回に関しては、

動揺して剣を弾かれなかったツカサの方が偉いだろう。


俺は拗ねているレイから戦闘中のツカサへと視線を戻し、

全力で応援してやろうと思ったのだが……



「………………」



その対戦相手である、

ハテシナユメコの様子がどうもおかしい。


何故か分からないけれど、顔が真っ赤である。

熱でもあるのだろうか??


それとも、まさか……



「おい、どうしたユメコ?」


「………………っ!!」



もしやこの反応は、照れてたりするのか?!


ハテシナを模倣しているというのなら、

精神面もある程度は表現されているのかもしれない。


ハテシナがツカサに大好きと言われて、

平常心を保てるとは到底思えなかった。



大好き攻撃が、諸刃の剣という事ならば……


これはもしかして、吹けば飛ぶのではないか?!



「おいツカサ!そのまま愛の告白を続けろ!!」


「は?俺がユメコを好きだって伝えればいいのか??」


「そうだ!!

 まぁ本人ではないが、予行練習だと思って何卒……」


「そっか、分かった!」



なかなかの無茶振りをしているつもりではあるが、

こいつはすぐに納得してくれて本当に助かる。


ツカサは軽く咳払いをした後、

真剣な表情でハテシナユメコを見つめた。



「なぁ、ユメコ……

 お前の事、忘れてて悪い。


 だけど俺は、お前の本を読んで……


 物語の中で必死に頑張ってるユメコに、

 心の底から惹かれたんだ。


 俺は、運命の満月を忘れちまったけど……

 お前が助けてくれた日の満月は、良く覚えてる。


 こんな女の傍にいて、

 守ってやりてぇと本気で思ったよ。


 俺は、お前が大好きだ!

 これからずっと、お前の傍に居たい。 


 だからもう一度、俺と出会ってくれないか……」



良い事を言うじゃないか、ツカサ!!!


これが予行練習だなんて勿体ないな……



その想いがハテシナへ届くように、

俺は祈ってやらずにはいられなかった。

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