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生きて見る

神の本から解き放たれて。

登場人物たちは、自分で気持ちを語れるようになりました。




「ほらエビル、さっさと行くわよ!」


そう言って私の手を引くのは、

まだ18歳の少女だった……



一つの物語が終わりを告げる時。

私はこの少女に殺してくれと縋り、そしてそれを拒絶され……

今となっては、従者の様な扱いを受けている。

120年も生きておいて、情けない話だ。


こんな男が王だったなんて、笑ってしまうが……

この破天荒な少女とて、神の子の生まれ変わりとは到底思えない。



私の愛したヒミコは、もっと慎ましく従順な神の子であった……

しかしそれが良くなかったのだろうと、今になれば思う。

私は彼女にかかる重圧を、受け止めきる事が出来ていなかった。



彼女の予言を聞いた時、

国を守るより先にやるべき事があっただろう。

女が私を殺し、国を滅ぼすというのなら……

まず真っ先に、その時まで傍にいてくれと懇願すべきだったのだ。


他人を傷付ける事よりも、彼女との幸せが失われる事を恐れたせいで……

私は彼女にまで、他人を傷付ける恐怖を背負わせてしまった。



「私たち2人とも、神の本に背きし反逆者だってさ!

 まさか指名手配されるとはね〜」


そんな呑気な声を聞くと、この少女の行末が心配で仕方がない。

この少女が私を殺さないと言うのなら、

罪は自らで裁かねばと思っていたのだが……


ヒミコの生まれ変わりである少女を危険に晒したままで、

命を断つ事は到底出来なかった。


「とりあえず、解放軍の皆を探さないとね!

 ヒジリさんも心配だし、どうにかして予言者の谷に戻らないと……

 ねぇ、どうすればいいと思う?」


この少女は、私を殺しに来た事をすっかり忘れているのだろうか。

あまりにもフレンドリーで、記憶喪失になっていないか心配になる。


「ユメコ、何故そんな親しげに会話をするんだ……」


「何故って?」


「一度は私を、殺そうとしたのだろう?」


「あぁ、まぁそれはラスボスだったからね」


あまりにもあっさりとした言葉に、

私は考えるのが馬鹿らしくなってしまった。


「君は博愛主義なのだな……」


「え?! ぜんっぜんそんな事ないよ!

 悪意に対する嫌がらせは容赦しないタイプだし、

 命さえ奪わなきゃオッケーみたいなとこあるよ??」


「ならば、何故私の事を許すのだ」


私は多くの人を傷つけた。

この少女はまだしも、

私は間違いなく指名手配をされておかしくない人物だ。


「だってエビルは、ヒミコの愛した人だもの」


少女は屈託のない笑顔でヒミコの名前を口にする。

全てを背負わされたというのに、何ひとつ恨んでいないのだろうか。


「私はね、ヒミコの事が好きよ。だって私の片割れだもの。

 だからね、ヒミコが好きだったエビルの事も好きよ!」


もちろん変な意味じゃないからね、と少女は慌てて付け加える。

言った後で恥ずかしくなったのか、少女の顔は赤かった。


「いつか絶対、ヒミコと再会させてあげるからね!」


この少女が言うと、どんな大言壮語も叶う気がしてしまうから不思議だ。


そもそも君がヒミコの生まれ変わりなのだから、

君が死なない限り魂は還らないのだぞ?

一体どうするつもりなんだ……?


そんな事を考えて、私はつい微笑んでしまう。

神が少女に根負けした理由が、分かってしまった。



この少女が描く、物語のつづきが見たい……



その為に申し訳ないが、もう少し長生きさせて貰うとしよう。


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