表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺の右腕は彼女の右腕  作者: しぃ
1/3

十年越しの再会

 ラブコメを頑張る。

 高校三年生の最後の春。

 それは、多くの人にとって掛け替えのない大切な一年。

 受験勉強に励みつつも、残された残り僅かな自由な時間を、今まで過ごしてきた友人たちと笑って泣いて分かち合う。



 彩りの溢れまくった一年に──なる筈だった。

 今現在、俺──花道(はなみち)(ゆかり)は一人悲しく、電車に揺られて、窓から見える自然の景色に懐かしさを覚え、思いを馳せていた。

 この景色を見るのも…かれこれ十年ぶりくらいだろうか。



 …漫画やアニメで良くある両親の海外出張、それがまさか現実に起こるなんて、俺は思いもしてなかった。

 兄弟姉妹もいなければ、住んでいたのは都内、海外出張と言うだけでも大変なのに、金を無駄には掛けられない。



 親父のその判断により、俺は小学校低学年くらいまで住んでいた、祖父母の実家に行くことになった。

 見知らぬ土地より、そっちの方が良いだろうというお袋の配慮でもある。



 色々と手配は済ませてくれており、高校への編入手続きや学費の振込に諸々の雑費等々。

 親父にお袋よ…そこまでしてくれるなら、俺にアパートで一人暮らしでもさせてくれ。



「…はぁ」



 ため息まで吐いて、俺がアパートの一人暮らしを願う理由は、一つ。

 祖父母の家の隣に、恐らく今でも住んでいる幼馴染。

 その、幼馴染が問題なのだ。

 悪い奴ではないし、嫌いでもないのだが……ただ、会うのが気不味い。



 彼女──蒼神(あおがみ)総花(そうか)との最後は、所謂喧嘩別れだった。

 喧嘩した理由は今ではもう覚えてないが、物凄く些細な事だった気がする。



 今更ながら、なんでアイツが俺なんかと連んでいたのが不思議でしょうがない。

 記憶の美化がなければ、総花は、紛うことなき美少女だった。

 サラサラとなびく紺色の長い髪、夜空の輝きをそのまま落とし込んだかのような瞳。

 強く抱き締めたら折れてしまうんではないかとも錯覚する、線の細い体に、端正に整った顔立ち。



 もし、彼女の欠点を上げろと言われたら、一つしかない。

 しかも、その一つは彼女自身ではどうにも出来ない代物で、現代の人権的な考えからすれば個性の一つ。



 蒼神総花には、()()()()()

 事故によって失くしたのではなく、生まれた時から欠損している。



 学校に居た先生や同級生の何人かは、彼女を偏見の目で見ていた。

 容姿が整っていても、身体的欠損なんてハンディキャップも良い所だ…と。



 取り敢えず、幼馴染の話はこれくらいにしよう。

 考えると、胃が痛くなってくる。



「今でも、怒ってんのかな…アイツ」



 憂鬱な気分になるのを回避しようと、俺は目的の駅に着くまでスマホで音楽を聞いて過ごした。



 春は、もうそこまで迫っていたと言うのに。


 ◇


 田舎と都会、その中間より田舎寄りな町、三日月町。

 私──蒼神総花は、産まれてからずっとここで過ごしている。

 両親が言うには、田舎に近い方が、お前が暮らしやすいから…だそうだ。



 私は、特に暮らしやすいとか暮らし難いとかは考えた事ないけど、自然に溢れていて落ち着ける場所だとは思う。

 十年ぶり程に会う幼馴染を迎えに行く為、私は一人駅までの道程を歩く。



 徒歩で行くには少し遠い道程だが…自転車に乗れないのだからしょうがない。

 昔、片手でもヘッチャラだと言って、お父さんの前で大転倒した日から、自転車には乗ってない──正確には乗らせてもらえてない。



 だけど、それも今日で終わりだ。

 ゆーくんが来ればモーマンタイ! 

 甘えっ子ちゃんスキルを総動員して、彼に動いてもらうんだ。

 …あんな別れ方した仕返しに、ちょっとくらい痛い目を見てもらう。



 そんな、未来の明るい計画を立てながら、ルンルンとスキップをして駅に向かっていると……一人の青年とすれ違った。

 やる気のない、と言うよりは気だるげな顔に黒い瞳に、テキトーに切りそろえられた焦げ茶色の髪の毛。

 身長は、百五十ちょっとの私より頭一つ分以上大きい。



 懐かしい匂いが…した。

 そして、私の特別の印、右手の甲にある傷跡が、青年の右手の甲に見て取れた。

 嬉しさのあまり飛び跳ねる想いを、私は無視なんて出来ず、人間違いを恐れぬ片手の抱擁を青年──いや、ゆーくんと交わす。



「ひっさしぶりー! ゆーくん!!」


「痛てぇ!? …おい! いきなり…なに…すんだ…よ?」


「忘れちゃったのかにゃ〜? 可愛い可愛い幼馴染の顔をさぁ?」


「総花…か?」


「ピンポンピンポン! だーいせーいかーい!」



 彼の胸板に顔を押し付けるように、強く抱き締める。

 リュックを背負い、ボストンバックも手に持っていたが私には関係ない! 

 私が抱き着きたいと思ったその時に、相手の意思や状況など関係なく抱き着くのだ!! 



 突然の行動に驚いているのか、ゆーくんは顔を赤くして固まっている。

 赤面して、固まるような事、私したっけ? 



 抱き着きながら思考を巡らせると、一つの正解に思い至った。

 …ふっふっふ、なるほどなるほど。

 分かったよ、ゆーくん! 

 答えは単純明快だったよ! 



「えっへへ〜! 照れる程、私に会えたのが嬉しいんだな、このこの〜!」


「ちょっ、やめろ! 動くな! それ以上動くな!?」


「な〜ん〜で〜?」


「幾ら人通りが少なくても! 道の真ん中で抱きつく奴があるか!?」


「む〜、しょうがないなぁ」



 片腕だけの私を、無理矢理剥がさないのは彼なりの優しさなんだろう。

 …昔から、そうだ。

 私を特別扱いしないって言ってる癖に、本当に変な所で気を使ってくる。



 各言う私も、そう言う所が好きだから一緒に居たのだが……

 まぁ、昔の事は今は気にしないで行こう! 



 また、彼と同じ学び舎で過ごせるのだから。


 ◇


 高校生活最後の春。

 少年少女の、空いてしまった溝を埋める物語が始まった。

 忘れてしまった過去を取り戻す、そんな物語が始まった。


 次回もお楽しみに!


 誤字脱字などがありましたらご報告お願いします!


 感想や評価、お気に入り登録もお待ちしております!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ