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前編

 ここは現代。

 フリーデルトの身体にinされた現代人の魂が生きていた世界。



 1人の男がカフェテラスで生クリームたっぷりのプリンアラモードを食べていた。

 テーブルにはチーズケーキやシュークリーム、マカロン等々……様々なスイーツが、テーブル一杯に置かれている。


 普通の男がこの有様だと、周りから奇特の目で見られる光景なのかもしれない。

 しかしこの男、とんでもないイケメンである。猛禽類のような切れ長な目がセクシーすぎる。

 何事も「※ただしイケメンに限る」という言葉があるように、イケメンは何をやっても絵になる。例え男の頬に生クリームが付いていようとも。


「センパーイ!!」


 全身黒づくめでチャラそうに見える青年が、賞状の入った筒とデカいトロフィーを持って、スイーツイケメンに声をかけた。


 チャラ男もイケメンである。

 少々服のセンスとか耳のピアスとか、髪型からチャラさを感じさせるが、イケメンである。


 何だろうかこのイケメンの異次元空間は。そこだけ世界が違う。ファビュラスな空間。良い香りがしそう。……実際はスイーツの甘い香りで満たされているわけだが。


「早かったじゃないかい? せっかくの受賞だというのに、もう少し会場で他の皆と購入を楽しめばよかったのに」

「いえいえ! まずは先輩へのご報告が何より優先でしょ!!」


 そう言いながら、筒から賞状を取り出して、スイーツイケメンにじゃーんと言いながら広げて見せる。


「ほう、銀賞か。……金賞でもおかしくない出来だったようには思ったのだが」


 賞状には『アニマムンディ新人賞 銀賞 カラス殿』と記載されている。

 カラス神の世界の歴史は他の神々から評価されたのだ。フリーデルトの紡いだ歴史が。


「まぁ、ちょっと手出ししすぎた点がやっぱり減点されちゃいましてね。それでも銀賞っよ!? もう俺、感激っす! 今まで賞なんてかすりもしなかったのに、先輩にアドバイス貰ったおかげっす!」


 チャラ男は余程感激しているのか、うれし涙を浮かべながら、勝手にイケメンが注文したチーズケーキを食べ始めた。


「もうね、ホントもうダメかと思ったんですよ。ラファエルのせいで俺のシナリオはめちゃくちゃ、まさか悪役王女のフリーデルトが生まれる前に死んじゃうなんて! でも先輩からいただいた魂がよーく働いてくれて、何とか上手くまとめられたっす!!」


 チーズケーキをたいらげたチャラ男は、店員を呼びメニュー表を指さしながらこっからここまで全部というあり得ない注文をした。店員は若干引き気味だったが、少々お時間いただきますと言いバックヤードへ引っ込んでいく。

 チャラ男はマカロンをパクパクと口に放り込んでいる。


 イケメンは一冊の本をカバンから取り出した。乙女ゲームの攻略本。

 男が持つにはちょっと似つかわしくない表紙だが、イケメンは何をやっても許される。「※ただしイケメンに限る」である。


「フリーデルトに入れた魂の主が、この攻略本が出る前に死んだ魂でよかったよ。なかなかいるものではない、あの乙女ゲームをやりこんでいて、なおかつ“隠しルート”の詳細を知らずに死んだ魂など」


 そう言ってパラパラと乙女ゲームの攻略本をめくった。

 “隠しルート”攻略法――そんなページを眺め、チャラ男に譲り渡した魂の主のことを思った。


 苦労の連続。

 フリーデルトになったあの魂の主は、さぞかし原作との違いに苦しんだことだろう。

 一に第一王子が暗殺され自分が男装王女として王太子になるしかなくなったこと、二に自分自身が呪詛の媒介になっていること、三に魔力を得る試練を受けなければならなくなったこと。極めつけは――。


「ヘンリー・ボルドーのクーデターからの、呪詛の顕現。“隠しルート”におけるクライマックスだね」


 そう言って男はシュークリームにかぶりついた。

 中身は抹茶クリーム。たっぷりと詰まった抹茶クリームは、男の口元にべっとりと付く。イケメンはそれすらも美しい。


「カラス、お前は本当によくやったよ。あれだけ用意していたシナリオからかけ離れて原作崩壊していたのに、結局は“隠しルート”のシナリオに乗せることができた」

「いやいや先輩がアドバイスしてくれたシナリオじゃないっすか! 主人公イリスと悪役王女のフリーデルト、この2人の友情ポイントのパラメーターをMAXまで上げることで開かれる“隠しルート”! ヘンリーのクーデターとか、呪詛が溢れ出して大変になるとか! 一応恋愛シミュレーションゲームのはずが、まさかの友情ファンタジーモノに!」

「攻略本が出て、プレーヤーの皆さんはその内容に驚いたようだけど――評判はすこぶる良い。今期の売り上げは想定の2倍になりそうだ」



 フリーデルトになった彼女がこの会話を知ることは永久にない。

 しかしもし万が一知ることがあったのなら、彼女はどう思うだろうか? 結局のところ……多少の差異はあっても、すべては神の描いたシナリオの上。

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