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原作崩壊した世界で男装王女は生き抜きたい  作者: 平坂睡蓮
第一部 第1章 こうして原作は崩壊した
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4.それはフラグだった

 結局のところ、寝ても覚めても私はフリーデルトのままだった。


 R18の薄い本やPC、スマホを処分できなかったことは本当に無念で、趣味で収集した鉱物コレクションの行方も心配だが、前世の社畜よろしく働き詰めの日々を思えば王女様の生活は悪くない。

 いや、むしろすこぶる快適だった。料理美味い。



 ◇◇◇



 結局私の経過観察は一ヶ月で終了したものの、完全に監視の目がなくなるまでは更に二ヶ月かかった。

 意外と皆が心配してくれていて、早く放っておいて欲しいと思う反面、嬉しくもあった。


 フリーデルトとして目覚めたのは3月下旬、それから三ヶ月ちょっとが経過し現在7月。私が介入しなければならないフリードリヒとイリスの出会いのイベントがある月になっていた。


 この三ヶ月間は「私、超元気です!」アピールと同時に、勉強と人脈作りに奔走した。


 とにかく元気でハキハキして人懐っこい良い“少年風少女”を演じた。多分この王子様フェイスなら、女の子らしく振舞うよりも少年風の言動をしたほうが好感度がよさそうだったからだ。

 その作戦は見事に成功して、誰からも好かれる美少年扱いされるようになっていた。

 顔がいいってやっぱり得だわ。


 その結果、フリードリヒ王子はもちろん犬と猫にも結構好かれた。犬とはヘンリー・ボルドーのことで、猫とはセシル・エヴァンスのことである。


 原作の2人のルートも攻略済みの私には、2人を手なずけるのは簡単だった。


 ヘンリーは人懐っこく明るく褒められると尻尾をブンブン振っている幻覚が見えるほど分かりやすく喜ぶが、セシルにはとにかく噛みつく。だからヘンリーは犬。


 セシルは常に冷静沈着で何にも興味なさそうに見えるのに、いざ無視するとかまってアピールが始まる。だからセシルは猫。


「なぁフリーデルト様、親父のことは説得するから一度家に遊びに来てみないか?」


 公爵家の嫡男とは思えないほどくだけた話し方をするのがヘンリーの特徴だ。とても気やすい性格なのだ。


「ヘンリー、私も行ってみたいんだけどさ多分無理だと思うよ? だって宰相様はお母様のことがお嫌いだったじゃん? その娘の私のことだって、うちの敷居は跨がせないって思ってるんじゃないかな?」

「そんなことないって! 親父たちのいざこざは親父たちの話で、俺たちとは関係ないだろ」


 ヘンリーの誘いをやんわりと断るが、言い出したら聞かないのがヘンリーである。


 そんなに私と遊びたいのか9歳児よ、こちとら中身30近い精神年齢だぞ。


「親たちのいざこざが関係ないというなら、私への態度を改めていただけると幸いですね。ヘンリー?」

「あぁ? セシル、お前のことは別だこの野郎」


 セシル煽るなよ……。


 出会った当初は氷の様な容姿と性格の美少年だったセシルも、蓋を開けてみたらヘンリーをおちょくって遊ぶのが趣味という少々残念な性格だった。原作では見られなかった推しの姿には感動したが。


 燃えるような赤毛で精悍な顔立ちで体格も良いヘンリーが文官で将来宰相となり、アイスブルーの髪と瞳で細身のセシルが武官で将来将軍となるとは。

 役割逆じゃね? と思うが下手なことは言わない。

 お口チャック。

 多弁は銀、沈黙は金である。


「はははっ、ヘンリーとセシルはいつも仲がいいな! フリーデルトとも仲良くなってくれて嬉しいよ」

「兄上にはそういう風に見えてるんですか」

「だってフリーデルト、喧嘩するほど仲がいいというじゃないか?」


 そしてどこかズレているフリードリヒお兄ちゃん。そうだね、ザ・王子様のキャラクターってどっかズレてたりするよね。


 そんな感じで私はあっという間に王城に溶け込んでいった。

 最近ではドレスが動きにくいと訴えたらフリードリヒのお古を着て男装してかまわないということになった。

 そのため私のことを「王女ではなく実は王子ではないか?」と混乱する人も出たようだが、私は少年顔なだけで間違いなく女である。その点お忘れなく。


 ただ、後から思えばこの男装スタイルはある意味“フラグ”だったのかもしれない。



 ◇◇◇



 月日はちょっと経って、件の夏祭りの日がやってきた。


 原作では、この日どういうわけかフリードリヒは護衛騎士の2人を撒いて、1人で城下の夏祭りに行くことができた。一日中金魚の糞よろしくいつもくっついている2人をどう撒いたのか……。


 そんなことを考えていたらあっという間に11時を過ぎてしまった。


 あれ? そろそろフリードリヒが王城を抜け出さないといけない時間帯では……。


 原作では昼時に屋台で食べ歩きをするフリードリヒが描写されていたから、もうそろそろ城を抜け出してもらわないと時間的にヤバイ。


 しかしフリードリヒは何かソワソワしているだけで、一向に2人を撒ける気配がしない。


 もしや私というイレギュラーのせいで、フリードリヒが2人を撒けずにいるのでは?


 原作のフリーデルトとフリードリヒの仲は良くもなく悪くもなかった。一応家族という程度のかかわり方だったように思う。

 しかし私はどうだろうか? 想定以上に仲良くなってしまったのかもしれない。

 そのせいでヘンリーとセシルも王子との距離が近くなりすぎている……だから撒けずに脱出できない?


 こりゃいかん!

 せっかくのフリードリヒとイリスの出会いのチャンスを棒に振るわけにはいかない。


「突然だけど、ヘンリーとセシルに相談があるんだ!」

「は?」

「本当に突然ですね王女殿下」

「とにかく、ちょっとこっちの部屋に来て!」


 策なんて準備していなかったので、とにかくフリードリヒを一人にしなければならないと思い、2人を別室に移動させた。

 取り残されたフリードリヒが「しめたっ!」という顔をしたので、多分すぐに城下に向かってくれるだろう。


 問題は私のほうだ。私もフリードリヒを追わなければいけないのだが……。


「相談ってなんですか?」

「一応フリードリヒ様の護衛だから、あんまり離れるのはまじーんだよな」


 と、2人に聞かれれば答えようがない。

 口から適当に出まかせ言ったんだから相談なんてあるわけない。


「あー、えーっと……」


 めっちゃ言いよどんでいると、ヘンリーから意外なアシストがあった。


「あっ! 分かったぞ、城下の夏祭りに行ってみたいんだ?」

「え? あ、そう! そうなんだよ。ヘンリーは流石だね、よく分かったね。そうなんだ、実は夏祭りをやってるって聞いて。ほら、外出ってなかなか難しいじゃん? だから2人にこっそり連れて行ってもらえないかなぁ、って思ったんだけど」


 ナイスアシストのヘンリーを褒めることを忘れず、その設定に乗っかることにした。

 ヘンリーは予想が当たったと思い、鼻高々で上機嫌である。


「いいじゃん、城下くらい。治安もいいし、ちょっとぐらい連れてってやるよ。セシル、お前フリードリヒ様のことよろしくな! 俺はフリーデルト様とちょっくら行ってくるから」


 乗り気のヘンリーに対して、セシルは微妙な顔をしている。


「僕は反対です。ちゃんと公式に外出許可をもらい正規の騎士たちが護衛につくべきだ」

「あぁ? フリーデルト様が行きたいって言ってるのに、可哀想だろうが」


 いつも通り一触即発の状態になる2人。

 だがここで2人の口喧嘩を見ているわけにはいかない。早くフリードリヒを追わなければ。


「あー、そうだよね。ごめん2人とも我儘言って。部屋に戻ろう? 兄上を一人で待たせているし」


 そう言って切り上げて、元の部屋に戻る。

 思った通り、そこにフリードリヒの姿はなかった。


「殿下? 一体何処へ……?」


 部屋の外も探してみたが見当たらない。


「侍女にも聞いたが誰も見ていないそうだ」


 徐々に慌てだす2人。


「2人とも落ち着いて、もしかして兄上は私たちの会話を聞いていたのかもしれない。兄上も夏祭りに行ってみたくなって、一人で城下に行ってしまったって考えられない?」

「それは不味い、殿下の身に何かあったら!」

「急いでフリードリヒ様を追いかけようぜ!」


 やはり中身は9歳児。

 上手く誘導してやれば、“大人に助けを求める”よりも自分たちでどうにかしようとする方を選択する。


 思った通りに2人を誘導したところで、さらに原作知識を動員し追撃。


「兄上は多分王族しか知らない隠し通路を使って出て行ったんだと思う。その通路、城の裏手の湖の近くの王家の墓地に繋がってるって……。お墓なんて怖いから、3人そろって行かない?」


 そう提案すれば、2人は無言で頷いた。


 こうして何とか私たちは城下に繰り出すことができたのだった。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] !や?が半角なのが気になりました。全角表記もあったので合わせて統一したほうがいいかと。
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