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原作崩壊した世界で男装王女は生き抜きたい  作者: 平坂睡蓮
第一部 第1章 こうして原作は崩壊した
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3.ボルドー公爵家とエヴァンス公爵家

「つ、疲れた……」


 ベッドに倒れこみ、今日一日を思い返した。

 今日一日マジで怒涛だった。


 8年間一言も話さず自分から動くこともない人形のような王女が、突然話し始め動きだしたのだ。

 誰でもびっくりする。侍女のミラちゃん、驚かせてごめんね。



 ◇◇◇



 私のことは、すぐに父である国王リチャードに報告された。

 そして、第一王子のフリードリヒや伯父のエヴァンス将軍、ボルドー宰相、教会から派遣されたお医者様たちなんかが私の部屋に押し寄せた。


 お医者の診断に始まり、知能テスト的なものもやらされた。

 知能テストはつい現代人の本気を出してしまい天才レベルの数値をたたき出してしまったが、お医者様曰く、「8年間押さえつけられた才能が今爆発したのでしょう」とか言うに事を欠いて適当なことを報告していた。



「私が分かるかね? お前の父だよ」


「はい、お父様!! 今までご心配をおかけしました!」


 何事も初めが肝心だ。

 元気いっぱい天真爛漫な8歳児を演じよう……精神年齢30歳に近いけど。


「父上、本当に良かったです! 私の妹はもうずっと、一生あのままなのかと諦めていました」


 そう涙ながらに言ったのは第一王子のフリードリヒ。如何にも王子様といった容姿の金髪青眼の少年。


 このフリードリヒがイリスとさっさと婚約してくれれば、私は生き残ることができる。


「兄上にも本当にご心配をおかけいたしました。ずっと頭に霧がかかっているようで……」


「よもや、私の娘に誰かが呪いをかけていたのでは……」


 魔法が存在するのだから、呪いももちろん存在している。


 実際フリーデルトが何故あの有様だったのかは分からないし、どうして突然前世の記憶が蘇り私として動き出すことができるようになったのかは不明だ。



 とにかく今日一日中、検査やら問診やら、訪問者に質問攻めにされるなどしたため非常に疲れた。


 気が付いたらいきなり8歳の悪役王女に転生していたという精神的な疲れもある。

 しかし何よりも「もう大丈夫です! 元気いっぱいです!」アピールをとにかく入念にしなければならなかったのが疲れた。


 何でそんなアピールを入念にしていたかというと、フリードリヒとイリスが出会う夏祭りの時期が思った以上に近づいていたからだ。


「今は3月の終わりだから、夏祭りイベントが発生するまで3~4ヶ月くらいしかしかない。変に過保護にされてそのイベントに介入できなくなったら超困る」


 だから“王女様はもう元気、超元気”認定をしてもらわないといけなかった。


 8年間ボーっとしていた王女が突然元気です宣言しても、すぐに自由にしていていいよとはならない。

 下手をしたら半年間経過観察で自室軟禁の可能性だってあったし、実際お医者様の中にはそのような主張をした人もいた。

 まぁ結果として一か月間の経過観察ということになったので、頑張ってアピールしたかいはあったと思う。



 ◇◇◇



 そういえば訪問者の中に意外な人物の姿があった。第二王子ルイの生母で、側妃であるマーガレットだ。


 立場上は私の義理の母ということにはなるので、様子を見に来るのはおかしな話ではないんだけれど……。


「あの人、シルビア王妃殺害の容疑者だったしなぁ……。何しに来たんだろ」


 マーガレット妃は部屋に入ってくることはなかった。扉の外からほんの少しだけ顔を覗かせていたのを、たまたま見かけたのだ。


 私の生母である王妃シルビアは3年前に亡くなっているが、原作では暗殺された可能性があると示唆されていた。その暗殺の嫌疑がかかっていたのがマーガレット妃だった。


「マーガレットも結構可哀想な人なんだよね……本当は王妃になるはずだったのにシルビアのせいで側妃に格下げされたんじゃ、殺したいほど憎くても仕方ないか」


 今朝ボロ紙に書き連ねたゲームの情報を見ながらつくづくそう思った。


 元々マーガレットは王妃になるはずの人物だった。


 マーガレット妃は宰相エドワード・ボルドーの妹で、生まれた時から将来の王妃に内定していた。

 ところがリチャード王がマーガレットの取り巻きの一人だったシルビアに一目ぼれしてしまい、シルビアを王妃にしてマーガレットは側妃に格下げになってしまったのだ。


「ホント、酷い話だと思うよ。生まれた時から王妃になるための教育を受けてきたのに、突然王妃の座は取り巻きの令嬢に奪われ、自身は側妃に降格。ひっどい話だわ」


 マーガレットを押しのけて王妃となったシルビアは、ケニー・エヴァンス将軍の妹でエヴァンス公爵家の娘だった。

 ボルドー公爵家と同格のエヴァンス公爵家の娘だったし、教会もシルビアが王妃になることに賛成しリチャード王の我儘を後押しした。


 王と言えども、普通はそんな無茶は通らない。

 マーガレットが王妃になることは王家とボルドー公爵家との約束であり、広く貴族や国民に周知されていた。

 もし王がシルビアが好きというのなら側妃に迎えればいいだけの話だ。

 しかし力がある教会が後押ししたことで、王妃の変更という無茶が通ってしまったのだ。



 リチャード王とボルドー宰相、エヴァンス将軍は幼馴染で、その一件が起こる前まではとても仲が良かったのだと原作では語られていた。

 しかし王妃の座を巡るいざこざのせいで三人の関係は拗れた。


 特にボルドー宰相とエヴァンス将軍の仲は破綻。


 宰相と将軍は「共に王家を支えていこうな!」と誓い合ったズッ友だった。

 しかしが、シルビアが王妃の座をマーガレットから奪ってしまったことで宰相は将軍に恨みを抱いた。


 序列としては将軍より宰相のほうが形式上は格上であるため、何かにつけて宰相は将軍の邪魔をした。

 王も宰相にはマーガレットを格下げして傷つけてしまったという負い目があるため、宰相の肩を持つことが多かった。


 ベルン王国は長く戦争をしていない平和な国だが、ここ最近は周辺諸国がきな臭いそうだ。

 そのため将軍は軍備増強に力を入れるべきと軍事予算の増額などを主張しているのだが、宰相とその肩を持つ王のせいで軒並み却下。

 よほどストレスなのか、将軍は慢性的な胃痛に悩まされているらしい。


 その因縁は息子たちにも引き継がれている。

 原作では、宰相の息子ヘンリー・ボルドーは何かにつけて将軍の息子であるセシル・エヴァンスに突っかかっていた。

 最もセシルは、父親たちのいざこざやヘンリーがキャンキャン吠え立てることも大して気に留めていないようだったが……。


 現在ヘンリーとセシルは、第一王子フリードリヒの護衛騎士をしている。

 9歳の少年たちなので護衛騎士という名のお友達という関係だが、子供といえども未来の王と宰相と将軍である。こうして仲を深めることは昔からの習わしだそうだが、今回に限っては引き離しておいたほうが良かったのではというくらいヘンリーはセシルに強い対抗意識を持っている。


「そのうちヘンリーとセシルにも会うんだろうな……。相手は9歳児だから合わせるのが大変そう」


 ちなみに私の推しキャラはセシルだ。

 しかし流石に9歳のショタセシル相手では犯罪の臭いしかしないので、不用意に親密になるのもちょっとどうかと思う。


 どっちみちこのフリーデルトの容姿ではセシルもヘンリーも恋愛対象外だろう。

 実際に原作の乙女ゲームでは、フリーデルトとはあまり親しくないようだったし、『自分よりイケメンのフリーデルト王女殿下には興味ないですね BYセシル』というセリフがあったような気がする。


「推しにそんなこと言われたら立ち直れないわ……」



 話がマーガレット妃から脱線してしまったが、とにかくマーガレット妃は王妃シルビアを憎んでいたし、その子供である私やフリードリヒのことも嫌っているはずだ。


 私の様子を見に来たのは、憎い女の娘の状況を視察しにきたということなのだろう。

 ただ——彼女の顔には何の表情も浮かんではいなかった。憎しみも恨みも何もない無表情だった。


 マーガレット妃が王妃シルビアを憎んでいたのは周知の事実で、王妃が死んだ時に疑われたのもマーガレットだった。

 しかし証拠はなかったし、直後にマーガレット妃が第二王子となるルイを産んだため、王位継承権を持つ男児の生母を犯人扱いすることはできないとして疑惑はかき消された。


 原作では王妃が暗殺された可能性と犯人はマーガレット妃かもしれないと示唆されていただけだ。結局作中でシルビアの死の真相について明確にはされないままだった。

 要するに伏線未回収というやつだ。



 ◇◇◇



 そんなことを頭の中で考えていたらゆっくり眠気が襲ってきた。


 もしこのまま眠ったら、元の私に戻っているかもしれない。

 そんな考えが脳裏をよぎった。

 今日一日が夢だったら……残念に思うだろうか? それとも安堵するだろうか?


「せめてスマホだけでも破壊したかった……画像フォルダとかR18のBL画像で埋め尽くされてるし」


 そして眠りに落ちていった。


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