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原作崩壊した世界で男装王女は生き抜きたい  作者: 平坂睡蓮
第一部 第4章 試練の刻
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2.お前を消す方法

 セシルと別れ、私は1人洞窟を進む。

 僅かに傾斜があるので、少しずつ地下に向かっているようだ。

 魔法だとは思うけれど、洞窟全体は視界に困らない程度には明るい。恐怖心はあまりなかった。


 しばらく進むと部屋のような空間に出た。

 部屋の向こうには2つの出口……えっ、これ次はどっちに行くんだ?


 戸惑いながら2つの出口付近に近づくと、またもやプレートがあった。


「なになに、貴方が正しいと思う方向へ進みなさい?」


 プレートにはその言葉と、こんな文言が書かれていた。


「第1問:好きな人にはどんなことをしてあげたいですか? 右:相手が喜ぶこと 左:相手が困ること――ってなんじゃこりゃ?」


 普通に考えれば“右”である。しかし何かのひっかけとかであれば左の可能性もある。

 第1問となっていることから、同様の問題は複数続くらしい。


「これが魔力を得る試練? でも父上は洞窟の最奥で試練を受けられると言っていたし、これは試練ではない?」


 とにかく考えていても仕方ないし、仮に間違えたとしても命に危険があるようなことはないと思う。ラフィール教皇が試練は死ぬようなことはないと言っていたし。


 ひとまず常識的に考えて“右”に進んだ。


「また部屋があるし、出口も2つ。さっきと同じパターンかな」


 右に進んだ結果、先ほど同様の部屋に出た。先ほどの回答は正解なのか不正解なのかよくわからない。


「第2問:あなたは好きな人のどんな表情に興奮しますか? 右:恥ずかしがる顔 左:涙を流した顔――おっと、これは私の性癖が試されている」


 これが第2問ということは先ほどの質問は正解だったのだろうか。

 この質問は私の好みに従えば、答え“左”になってしまう。一般的にはおそらく“右”だろ思うけど。


「ここは……左、いかずにはいられないっ!!」


 どうせ死ぬようなことがないんだし、不正解だとどうなるのか好奇心が勝ってしまった。


 左の部屋に進むとそこは行き止まりだった。洞窟の最奥に到着したのではなく、不正解だから行き止まりなのだろう。

 何もない部屋だ。問題プレートもない。これは引き返すべきか――。


 引き返そうとしたその時、部屋に時代錯誤な自動音声的な声が響いた。


『不正解です! 貴方は変態の要素があるので先には進めません。逆ボッシュートします』


「なっ何!?」


 ビックリして音源である天井付近を見る。すると突然天井に穴が開き、穴に吸い込まれるような猛烈な風が吹き始めた。

 慌てて地面に伏せてやり過ごそうとしたけれど、あまりの風速に力負けして、結局は掃除機に吸われるごみクズのように天井に巻き上げられてしまった。


「ぎゃあぁあぁぁぁあああー!!」


 色気もへったくれもない悲鳴を上げて、私は天井の穴に逆ボッシュートされたのだった。



 ◇◇◇



「――ということがあったんだよ、セシル」

「はあ……、そう言われましても、最奥に到達するまで挑戦し続けるしかないんじゃないでしょうか?」


 逆ボッシュートされた私は、洞窟の入口まで強制送還されていた。スタート地点からやり直せということである。

 入口で待機していたセシルによると、突然床に穴が開いて私が穴から吹っ飛ばされてきたということだった。

 吹っ飛ばされて身体をおもくそ打ったけど、怪我まではしていない。


「ぐぬぬぬ……、よくわからんけど、とにかく再挑戦してきます」

「頑張ってください」



 そう言われ再挑戦すること実に5回……。いい加減セシルのところまで強制送還されるのが恥ずかしくなってきた。


「くそっ、問題プレートも出口もない部屋だ! また何もない部屋に辿り着いてしまったっ!!」


 流石に何度も逆ボッシュートを味わいたくないので、正解であろう答えばかりを選んだつもりだったのだ。しかし常識とかそういう問題ではなくて、出題者との解釈違いとか好みの問題とか性癖の違いというか……、そういう観点で不正解になることが何度もあった。

 それでも何とか苦労しつつも先に進んだ。


「ついに第30問か……、一体いつこの質問攻めは終わるんだ? はー……えっとなになに、第30問:世界が滅びようとしています。あなたの大切な人は自分が犠牲になり世界を救うと言います。その時あなたはどうしますか? 右:その人の意見を尊重し犠牲になることを止めない 左:世界が滅びてもいいからその人が犠牲になることを止める――か。難しいな」


 なかなかの難問だった。世界をとるか大切な人をとるか。世界をとれば大切な人は失われ、大切な人をとれば世界は滅びる。世界が滅びれば結局は全て失われることになるのだろうけれど……。

 こういう時、勇者とか物語の主人公なら“世界も救うし、大切な人も守る”とか言ってご都合主義の主人公補正とかでどうにかしてしまうものなのだろうけれど。


「今まで問題に答えてきて思ったんだけど、この出題者は挑戦者の資質を試しているっていうよりは、出題者の思想と反する者をはじきたいって感じなんだよね。――私なら“右”を選ぶ。でも、きっとこの出題者は……」


 流石にもう逆ボッシュートは勘弁願いたかったので、出題者の意図を組んだつもりで“左”へ進むことにした。



 そして辿り着いたのは、出口が1つだけの部屋。

 今までとパターンが違う。正解だったのか?

 しかも、しかもだ! 部屋の中央には何故かテーブルと椅子が置かれている。そしてテーブルの上には在るはずのないものが置かれていた。


「そんなバカな……何で、何で“ノートパソコン”が置いてある!?」


 正しくそれはノートパソコン。この世界にあるはずのない異物。

 昨日の同人誌とはわけが違う。どう考えてもこの世界にとってはオーパーツでしかないそれは確かにそこに鎮座していた。


「どういうことなのこれは」


 戸惑いながらも近くでPCを観察する。

 何処からどう見てもPCだ。しかも電源は入っているのか僅かに動いている音がする。画面はスリープ状態なのか、ブルーの画面になっている。


 恐る恐るマウスを動かしてみるとスリープ状態が解除され、画面が表示された。


「こっこれは……カラス?」


 表示されていたのはデフォルメ化されたカラスのアイコン的なものだった。吹き出しには「何について調べますか?」の文字。

 既視感、圧倒的既視感。

 現代ではそのアニマルはカラスではなくイルカだった。とあるソフトを起動させたときに登場してヘルプ表示などをおこなってくれる、正直邪魔なサポート役キャラクター。


 これは……、これは“アレ”を打ち込まずにはいられない。どうしても抑えられない好奇心が私を襲う。

 イルカのアイコンに対して多くの使用者が打ち込んだであろう、あの言葉だ。


 そして私は自身の好奇心に負けて、あの言葉を打ち込んだ。


「何について調べますか? “お前を消す方法”」

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