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原作崩壊した世界で男装王女は生き抜きたい  作者: 平坂睡蓮
第一部 第1章 こうして原作は崩壊した
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12.崩壊の足音

 結論から言おう。イリスはフリードリヒが嫌いになってしまったようだ。


 アカーン!! なにこれどういうこと!?


 イリスとフリードリヒは時間さえあれば一緒にいることが多かった。しかしよくよく注意して観察していると、会いたい会いたいと騒いでいるのはフリードリヒだけ。

 イリスは侍女長のクラリッサさんに王妃教育を受ける時間を増やしてもらって、フリードリヒを過ごす時間を減らしたがっているようだった。



「こんにちは、イリス。久しぶりに一緒にお茶でも飲まない?」


 そう言ってイリスとお茶会をすることにした。

 昨夜のイリスの態度は明らかだったので、単刀直入に聞いてしまおう。


「イリス、あのさ、もし私の勘違いだったらすごく失礼なことなんだけど……」

「何でも聞いてくださいね、私フリーデルトと一緒にいられるだけてとっても嬉しいのよ」


 イリスは満面の笑みで紅茶を入れてくれた。どうかその笑みをフリードリヒに向けてくれないもんかね。


「その、もしかしてイリスってフリードリヒ兄上のこと苦手だったりする?」


 そう聞けばイリスはスンッと無表情になってしまった。


「あーごめん、ごめん。勘違いだよね、変なこと言ってごめんね」

「違うの……」

「えっ?」

「勘違いじゃない……私、フリードリヒ様のことどうしても好きになれないの!」


 そう言ってワッと泣き出してしまった。


「婚約した時はいつか好きになれるかと思ったの。でも6年経っても無理だった。それどころか私にベタベタ触ってくるし、なんだか気持ちが悪くて」

「きっ気持ちが悪い!?」


 そのレベルで嫌いになっていたとは。確かに凶悪生物Gは気持ち悪いけど……。

 いったいこの6年間でフリードリヒは何をやらかしたんだ!?


「だって殿下、私のことを抱きしめて『私がこうすることで喜ばない女性はいない』とか言っちゃうのよ? 他にも色々気持ち悪くって。もう私、無理。無理よ!」


 ……某映画の某帝が某かぐや姫にそんなセリフ言ってすんごい拒否反応されていたっけ。


 それから出るわ出るわ、イリスは今までの不満が爆発したようにフリードリヒの気持ち悪い”勘違い男”エピソードを愚痴りまくった。


 アカン、こりゃアカン。

 フリードリヒ、君は一体いつからそんな気持ち悪い男になってしまったんだ。とんでもない勘違い男だ。昔から少しズレてんなとは思っていたけど、流石にこれはない。


 原作でも確かに臭いセリフ吐いてんな、とは思ったけれどこれは酷い。酷い。


「そっ、それは気持ち悪いね……」

「そうよね! やっぱりフリーデルトもそう思うわよね!」


 イリスはそう言ってヤケクソで紅茶を飲み干した。


「私、来年16歳だから王立学院に入学するでしょ。学院に入学すれば殿下との接触時間が減る。あそこ全寮制だし。18歳で卒業するときには成人だから、モーリス男爵からお店を取り返せるわ。だから殿下との婚約関係は、学院を卒業したら解消しようと思っていたの」


 ここまで言うとは。ここまで嫌いになってしまうとは。


 そうすると、原作のイリスは間違いなく貴族派に洗脳されてフリードリヒに近づいたのだろう。実際のイリスは洗脳されていないし、これがイリス・バートリーのマジな本音なのだ。

 原作のイリスと実際のイリスの性格が違う理由がよーく理解できた。


「いつも辛いときはフリーデルトの顔を思い浮かべたわ」

「はい!?」

「私、フリーデルトのその顔凄く好きなの。本当に貴女が、フリーデルトが男の子だったらよかったのにって何度も思ったわ。初めて会った時一目惚れだったのよ? ねえ、実は男だったなんてことはない? もうこの際女の子でもいいと思わない!?」


 おいおい、どんだけ罪深いんだよフリーデルトの美青年フェイスは。

 流石の私も百合は守備範囲外だ。

 しかしイリスの目は本気と書いてマジと読む状態だった。


「あーっと、間違いなく女だよ。こんな顔だけど……、えっと私は男の子と結婚したいかな?」

「…………そうよね、変なこと言ってごめんなさい」


 やけに沈黙長くなかった?


「とっ、とにかく成人すればご両親のお店も取り戻せるし、そこまでは何とか我慢だよね。私もなるべく兄上と接触しないで済むように手助けするよ」

「そういう気が利くところも好きなのよー!!」


 思いっきり抱き着いてきたイリスに、流石にドン引きする。


 アカン、フリードリヒが嫌すぎておかしくなってきている。

 でも今ここで婚約を解消されたら何が起こるかわかったもんじゃない。せめて、せめて原作が終わるまでは、私が17歳になるまでは婚約関係を継続して欲しい。


 ただただそう切実に願うばかりだった。



 しかし原作崩壊はもうすぐそこまで迫ってきていたのだった。

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