相談者来る?いや連れてくる?
次話が長くなりそうなので、今回は短めで切りました。ごめんなさい。
一応、小ネタもいれたのでそちらを楽しんでもらえると幸いです。
「あー。うー……あー」
オカルト同好会(何でも屋)という、十年前のラノベでも中々見られないような部活が発足してから数日が経過した。
とは言っても、こんなあからさまに怪しい場所に来る生徒がいるはずもなく、俺たちは暇を持て余していた。
旭陽に至っては究極に暇なのだろう。発声練習にすらならない謎の発声を行っていた。
「あー……あ、あーあーうー」
触らぬ旭陽に祟りなし。
旭陽の暇ですアピールは無視することにて、俺は読書を開始した。
「あー……せーんぱーい?」
「えーっと……なに?」
「暇でーすぅー」
「だなー」
「んもーぅ、そんな適当な返事……あっ、せんぱい。紅茶淹れて下さいよ」
「へいへい」
本を閉じてから立ち上がる。
部室として利用している空き教室は、一部を除いて相変わらず物が少ない。
教室の真ん中に長机が一つ、側にはパイプ椅子とクッション性の高そうなコロコロ椅子が一つずつ。どちらがどの椅子を使っているかは言うまでもないが……と、ここまでは別にいいのだが、窓際にある棚に問題あり。
旭陽はいったいどこから持ってきたのか、小さな棚の上には電子ケトルにティーセットが一式。棚の中にはちょっとしたお菓子が入っているに違いない。
日に日に増えていく私物に恐怖しながら準備すること数分。
今日も紅茶で一息つくことになった。
「おっ?今日のは美味しいですねー。先輩が腕をあげてくれて嬉しい限りです」
あの、旭陽ちゃん? 生徒会の頃から紅茶淹れさせてたくせに美味しかったのは今日だけなの?
え、マジ?
やけに紅茶飲むときいつも妙な顔してるなぁって思ってたけどマジなんですか?
……なんてことを考えながら湯飲みをすする。
『この一杯がたまぁらんねぇ~』
という文字が刻まれた湯飲みは、絶対に紅茶を飲むやつじゃないと思う。
けど、今日の紅茶は美味しかった。
「たしかに今日のは旨いな」
「ですよねー。あ、クッキーあるんですけど食べます?」
「じゃあ、お願いしとこうかな」
「オッケーでーす」
言って、旭陽は案の定。棚からクッキーの入った箱を取り出した。ちらりとしか見れなかったが、他にもお菓子は大量にあるようで……ほんと、どこから入手したんでしょうね。
紅茶とクッキーの甘い香りが充満する部室。
窓から西日が差し込みぽっかぽっか……。
何事もなく今日は終わる。
そう思っていたのだが、残念なことにそうはならなかった。
旭陽はすでに水面下で動いていたのだから……。
〈オマケ〉
次話、冒頭までのちょっとしたやり取り(小ネタ)
「あ、先輩。今からお客さんが来るので椅子の用意しておいて下さいねー」
「へっ?……あ、ちょっと!?」
急にスマホの着信音が鳴ったかと思うと、旭陽は俺に妙なお願いをしてから部室を出ていってしまった。
「すぐ戻りますからー!」
廊下の方からは、そんな旭陽の要らぬ情報とペタペタ駆ける足音。
椅子の用意って……え、今すぐ?
お客さんは何人来るんだよ! ていうか。そもそも椅子は二つしかないんだけどー!?
「仕方ないか……」
独りごちる。
これは不可抗力であって、べ、別にお客さんのためなんかじゃないんだからね!ほんとなんだからね!
……などと、どうでもいいことを考えながらパイプ椅子を移動させる。
そして、俺は旭陽が戻ってくるのを空気椅子で待つことにした。
相談者現れず……タイトル詐欺っぽくなってしまった