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ノルニル王国



「我はこの森に住む風の精霊。


我らが張りし結界を壊したのは、そなたか?人の子よ」



「精霊!?そんな…!?伝説上の存在ではなかったのか!?」



トライデン様が顔を青くして叫ぶ。



「我ら精霊は、この森の妖精を守り、そして共に暮らしている。


その安寧を妨げるものには容赦をしない」



「風の精霊よ、お待ち下さい。


突然の来訪のうえ、勝手に結界を壊してしまったことは謝ります。


しかし、我らの目的はこのブラギの森を通行することのみです」



顔を真っ青にした大人たちの代わりに俺が説明する。


それで気を持ち直したのかトライデン様も口を開く。



「もちろん、ただでとは言いません。


妖精が好むといわれている魔水晶をお持ちしました。


あなた方の王に贈らせていただきます。


それゆえ、通行の許可をいただきたい」



「しばし、待て」



そう言って、風の精霊は目を閉じた。


妖精の王と連絡をとっているのだろうか。


しばらくして、風の精霊が目を開ける。



「許可は下りた。森の出口まで案内しよう」



おそるおそるトライデン様が精霊に魔水晶渡す。



「ふむ。なかなか大きな魔水晶だな」


「あの、帰りの通行も許可いただきたいのですが…」



俺がそう言うと、風の精霊が面倒くさそうに返答する。



「案ずるな。それも許可が出ている」



そう言い放つと、風の精霊が呪文を唱える。


すると、風の精霊の横に大きな黒い穴のようなものが現れた。



「ここを通っていくがよい」



そう言われても、いきなり見たこともないものに入るのは怖い。


みんなもそうだろう。


訝しそうに穴のようなものを見ている。


唯一、トライデン様が「精霊は嘘をつかないらしいが…」と呟いているくらいだ。



そんな中で、皆に号令をかける声がした。



「皆の者、私について来い!


大丈夫だ。そもそも結界で追い返そうとしていたのだ。


ブラギに私を害するメリットがない」



そう言って、黒い穴へ馬を進めるラビス様。


正直、子ども皇子と侮ってました。ごめんなさい。


年下だけど、この胆力は見事だと思います。


ラビス様を見直した俺は、彼の騎士見習いとして後に続く。


すると、子ども2人が穴に入っていくのを見て、慌てて護衛の皆も続いた。



穴を抜けると、森の外に出ていた。


ソラギではない。


本当にノルニル方面へ出てきたらしい。


一瞬でブラギの森を移動するとは、精霊の力は凄いな。


そう感心していると、ラビス様が声をかけてきた。



「ほお、1番についてきたのはフリッカーか。


やはり、お前は面白い奴だな!」



そう言って、笑顔をみせてくるラビス様。


2人で周りを見渡しているうちに、皆も穴から出てきた。


最後に風の精霊が穴から出てくる。



「帰りは、この辺りで我を呼ぶがよい。


そう何度も結界を壊されてはたまらんからな」



「分かりました。宜しくお願い致します」



結界を壊した犯人として、俺が代表して答えておいた。



「ちなみに、ノルニルの王都はどちらの方向でしょうか?」



ついでに道も聞いておいた。



「人間の世界のことは知らん。


だが、ここからこの道を西へ辿れば人間の町がある。


馬であれば1日くらいでつくだろう」



意外と親切な精霊に礼を言って、出発することにした。



精霊に言われたとおり、西へ馬を進めていく。


日が暮れる頃に街の外壁が見えた。


ノルニル王国のスニックという名の街らしい。


門で街に入るための審査を受けたが、凄く時間がかかった。


帝国からの旅人など皆無であるから仕方の無いことだろう。


ようやく街に入れたときには日が暮れていた。



「フリッカー!日が暮れたというのに街が明るいぞ!」



ラビス様が驚いて声をかけてくる。


俺も驚いて、相槌をうつことしかできない。


スニックの街は、通り沿いに柱が等間隔で並び、その上に光が設置してある。


また、街中の店の中からも明かりが漏れてきており、町全体が明るい。


帝都であっても、このような光景はないのだろう。


何も言わないが、護衛のみんなも周りをキョロキョロ見回している。



皆でいろんな物に興味を惹かれながら、門番から聞いた1番格式の高い宿へ向かう。


しばらく進むと『金の鵜飼亭』という名の宿屋へと着いた。


護衛の人たちが厩へ騎馬を預けに行き、ラビス様とトライデン様と俺が先に宿へ入る。



「今日の宿をお願いしたいのですが、空いてますか?」



代表して1番下っ端の俺が受付で尋ねる。


運の良いことに全員が泊まれるようだ。



「帝国銀貨は使えますか?」



これは断られてしまった。


困って、ラビス様とトライデン様の方を見る。



「公爵の言う通り、ノルニルの貨幣を持ってきて正解だったな」



「国外とは取引がありませんからな。当然でしょうな」



お2人の会話を聞いてホッとする。


値段だけ確認し、トライデン様に確認すると承諾を得られた。


さっそくお2人を先にお部屋へ案内してもらう。


俺は、後から来る護衛の人たちとの相部屋なので、皆が来るのを待つ。



皆が来ると部屋に案内してもらう。


部屋の中も明るく照らされている。


案内してくれた人に聞くと魔道具という魔石を使った装置らしい。



風呂があるということなので、皆で風呂へ入ってから食堂に向かった。


王都でもないのに風呂があること自体にも驚いた。


それ以上に、風呂についてる様々な仕掛けにはもっと驚いた。


魔石をはめ込まれた魔道具ですべてが賄われている。


光もお湯も全て魔力で作られているのだ。


さすがは魔法国家と呼ばれるだけはあると思った。



食堂に入っても、中は魔道具の光で煌々と照らされている。


こんな明るいところでする食事は初めてだ。


食事も魔道具で作っているらしい。


生活が便利で羨ましい限りだ。



ラビス様とトライデン様は、個室で食事をとられている。


護衛と一緒に食堂で魔道具の話で盛り上がりながら、食事をとった。


食事も帝国とは少し趣が違うが、おいしい料理だった。


腹も満たされ、部屋に戻ると初めての旅の疲れが出たのか、すぐに寝てしまった。



次の日は、街中を皆で散策した。


どのような文化なのか調べるため、この街でもう一泊することになったのだ。


ノルニル王国内では辺境に当たるスニックの街でさえ、この文明レベルなのだ。


王都は、どのような生活になっているのだろう。



1日中、ラビス様のテンションが高く、お相手するのが大変だった。


でも、気持ちは良く分かる。


全く違う文化に触れるというのは、興奮するものだと俺自身も思った。


あっという間に1日が過ぎ、もう一泊『金の鵜飼亭』に泊まった。



翌日、宿屋の主人から王都までの道のりを聞き、出発する。


このまま西に進み、馬であれば5日ほどで着くらしい。


セイローン大陸の中央に位置し、氷竜山脈北側の麓にあるノルニル王国の王都ノルニル。


そこへ向けて、馬を進めるのであった。




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