青い
「あれが青春というやつなんだろうな、長塚後輩」
「ですかねぇ」
珍しく先輩と出掛けていたりしたのだが、その後結局講義やら何やらでいつものように部室にやってきたのであった。
「殆ど叫ぶようだったが、情熱的な告白だった」
うんうんと腕組みをして頷いているが、別に先輩が何かしたわけでもなかろうに。
「人気の少ない場所選んでただろうに……」
大きな公園の外れの方で制服を着た子達を偶然目撃してしまったという話だ。声は大きかったが、あれは周囲に人が来ないと思っていたからだろう。
「まあ彼らには気がつかれなかったんだ。邪魔をしたわけではないのだし気にする必要もなかろう」
「それだけが救いですよ本当に」
もし見られていた事を彼らが知ったら可哀想すぎる。
「しかしいいな、ああいったザ・青春というやつは」
「先輩は縁がなさそうですもんね」
「ふぬぅ!」
「ぐっへ!」
後頭部を叩かれた。痛い。
「君は本当に私をなんだと思っているんだい!?」
「先輩だと思ってます」
本当にそう思っているから疑わしそうな目を向けないでほしい。
「というか私達だって彼らとそう年齢が離れているわけでもないのだぞ」
「大学生と高校生は結構違うと思いますよ」
具体的にはアルコールが飲めるか否かがかなり違う。
「なあ長塚後輩、私達も付き合いもそこそこ長いのだし、私の言いたい事を忖度してくれてもいい頃合いだと思うのだが」
「まあ何となく察してはいますが思惑に乗るのもどうかなーって」
「そこは乗るべきだよ長塚後輩」
そうかな? そうかも。
「でも思いつきませんよ、青春っぽいことなんて」
要するに先輩もなんか青春っぽいことがしたいのだ。なんて傍迷惑な。
「長塚後輩はダメなやつだなー」
「先輩に言われたくねーです」
「つーかさっきまで二人で出掛けてたのをデートってことにしましょうよ」
「しょうがない、今回はそれで勘弁してやろうではないか」
なんで偉そうなんだこの人は。