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苦手なやつ

「あー、なるほど。さっすが先輩あったまいいっすねー」

「君だって少し考えればできる筈だ。あまり持ち上げてくれるな」

 キリッとした顔をしていると、先輩でも理知的に見えるから恐ろしい。所謂外向きの顔というやつだ。いやあれも素ではあるのだろうけれども。

「あ、次のステージだ。あーこれも駄目だわ先輩お願いー」

 ケラケラと笑いながら先輩にスマホゲームの攻略を押し付けているのは同い年の立川だ。見た目はどう見ても深窓の令嬢という趣きなのだが、中身はそうでもない。

 女三人寄れば姦しい、と言うが二人でも結構騒がしい。

 まあここは部室なので苦情が来たりしないから大丈夫だろう。

「ところで置物みたいになってる長塚は暇なの? ボッチなの?」

「いちいち煽らないでくれ。読み終えていない本があるから落ち着ける場所で読んでいた所にやってきたのはそっちの方だろう」

「今時物理書籍をこれ見よがしに読んでる意識高い系だもんね、そりゃボッチだよね……」

 ごめんよ長塚、とか本気で気の毒そうに言うからこいつは苦手だ。

「紙には風情があるからね。手触りや残りのページ数を指先で確認できる楽しみというのもあるんだよ」

 さすが先輩、たまにはいい事を言う。というか外面モードだと普段から良いこと言ってる気がする。

「んー、先輩に言われると私も弱い」

 形勢不利を悟ったらしく大人しくなる。こいつの気持ちの切り替えの速さは見習うべき所があるように思う。癪だけれども。

 やっぱ先輩の髪綺麗だよねー、などと立川が宣っている。気が付けばスマホから離れてキャイキャイしていた。キャイキャイだ。ほかに適切なオノマトペが思い付かない。

 肩身が狭い。狭かった。過去形にしたいのでへるぷみー。

 とかなんとか思っていたら天の助けがやってきた。市ヶ谷さんだ。

 例によって例のごとくゲーセンのログ入り景品用ビニール袋にわんさかお菓子を詰め込まれているが、この人は出禁になったりしないのだろうか。

「差し入れだ。適当に食ってくれ」

「おぉさっすが市ヶ谷さん! 甘いものありますー?」

 立川が嬉々としてビニール袋を漁り始める。自分に素直なやつだ。

 慕ってくる後輩の相手をして少し疲れたのか、先輩の眉尻が少し下がっている。

 騒がしいやつの相手というのは疲れるものなのだ。例えばテンション高い時の先輩の相手とかすげー疲れる。

「なんだ、長塚後輩。私が取られて寂しいのはわかったからそうしょげた顔をするんじゃない。後で相手をしてあげるから」

 他の面子には聞こえないようにという配慮だろうが、耳元で囁くのはやめてほしい。動揺するから。

「拗ねてねーですよ」

 本当かな? みたいな顔はやめてほしい。

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