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少し進んだ弄り方

「スキーだ、スキーに行くぞ長塚後輩」

「嫌です」

「……今食い気味に否定したね?」

 むー、と今にも言い出しそうな先輩が、不満を隠そうともせず表情に浮かべている。

「つーか脈絡もなく言われましても」

 今の今まで立川と市ヶ谷さんの話題でキャーキャー言っていたのに、唐突に話を変えるのだからもう少し配慮というものを覚えて欲しい。

 最も、他所行きモードの際にはきちんと受け答えしているのでこいつは相手を選んでやっている。誰が甘やかしてなどやるものか。

「冬らしい事をしたい」

 季節感は大事だぞ、と携帯懐炉を取り出して手を温めている。なんか高級そうな布の袋に入った携帯懐炉がまさにお嬢様だ。

 我々庶民が使うような使い捨てのカイロではない。オイル式のお高い奴だ。何故知っているのかと言われればお嬢様の名に従いオイルの補充を仰せ使っているからなのだが、専属運転手は仕事が多過ぎやしないだろうか。

「暖冬でどこのスキー場も雪が無いって話でしたが」

「そうなんだよ。長塚後輩、どうにかならないのか」

 このお嬢様は無茶ばかり言いなさる。

「俺よりも先輩の方が知ってるんじゃないですか? リゾート地に別荘とかあるんでしょう」

「あるにはあるが……ほぅ……」

 何やら突然先輩が流し目で見てくる。意地の悪い表情になっているが、嫌な予感しかしない。

「私は君と二人で行きたいのだ、と言っているのだがそれは理解しているな?」

「……えぇ、そういう話ですよね」

「若い男女が二人でスキーに行って別荘で泊まるというわけだ。そうなると別荘の使用許可を取る際に私も家族に説明をせねばならない」

 つまり家族に挨拶をしてくれるのだね? とかちょっと暴走気味な事を言っている。

「泊まり前提!?」

 何言ってんだコイツ。

「なんだ、違うのか?」

「いやそこまで考えてませんて。あーそうか、別荘だとどうしても泊まりの距離しか無いんですね」

 コクコクと小さく頷いている姿がリスっぽいのは何なんだ。

「……やっぱり無理っすね。スキーは諦めましょう」

「君が私の家族に挨拶に来てくれれば解決するだろう?」

 なるほど、今日はこういう方向で俺をからかって遊びたいようだ。迂遠で分かりづらい先輩の日らしい。

「今の中途半端な状態で挨拶に伺ってもいいんですか?」

「……む」

 いや流石にそんな挨拶をするような胆力は生憎と持ち合わせていないのだが。

「むむむむむ? いやそれはどういう……?」

「将来敵に関係性が変わる可能性があるのに、今の段階で紹介しちゃっていいんですか?」

「デレた!? 長塚後輩がデレたのか!?」

 真っ赤になって狼狽しているが、この人本当に自分が揶揄われると駄目なのだ。

 スキーに行くより先輩を弄って楽しんだ方が面白いのではないだろうか。

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