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チョコの日激動篇

「あ、お疲れ様です」

「市ヶ谷さんおつかれー。いやーちょうどよかったー」

 何がちょうど良いのかは分からないが、部室にやってくると長塚と立川から歓迎された。

「いつもの差し入れだ。季節を考えてチョコレートを持ってきた」

 机のうえに、小包装されたチョコレートを広げる。やったー、と無邪気に立川が群がるのはいつものことだ。

「今日は遠慮しときます」

「さっき先輩から貰ってたからねぇ、チョコ」

 両手に差し入れチョコを持ちながら立川が長塚を足蹴にしている

器用だ。

「イッテェ!? ちょっと市ヶ谷さんまで蹴るのやめてくださいよ!?」

「いや、そういう流れかと」

「流れ流れ!」

「ウザいなこいつら……」

 長塚がぶつぶつ言っているが、まあ今日はソワソワと落ち着かない様子だったので落ち着かせようと思ったというのもある。決して僻み妬み嫉みだけではない。

「……まあ順調なようで何よりだ」

「順調、順調……?」

「あ、こいつムカつくわー。ド本命貰っといてこの態度とかありえねー!」

 立川、気持ちは分かるが暴力はいけない。

「そろそろ止めておこうか、立川」

「もうちょい早くこいつを止めてくれてもいいんじゃないですかね!?」

 結構力を込めて殴られても反撃しないあたり、長塚はかなり紳士だと思う。思うだけで言いはしないのだが。

 立川は差し入れチョコを次々に開封しては口の中に放り込んでいるが、カロリーは大丈夫なのだろうか。

「あ、こいつのせいで忘れるところだった。市ヶ谷さんこれどうぞ!」

 そう言って差し出されたのは、小さな紙袋だった。

 ラッピングされたチョコだ。チョコだよな? チョコだろう。

「すまないな、ありがとう」

 義理だと分かっていても嬉しいものだ。義理だとしても。

 いやむしろ特有の虚しさがある。

 絶妙なこれじゃない具合。惜しいからこそもどかしい。

 なるべく表情に出さぬように努めているが、成功しているかは自信がなかった。

「いっつも色々貰ってますからね! 奮発しましたよ!」

 そうじゃない。そうじゃないんだ立川。

「何より本命ですからねぇ。今年はちゃんと選びましたよ」

 うんうんと腕組みをしながら頷いている。自信満々なところがあいらしいとは思うが、その自信はどこから来るのだろう。

「……うん?」

 今何か聞き捨てならない単語がなかったか?

「本命?」

 それだ。よく言った長塚。

「本命だよ? そりゃ付き合ってる人に義理は渡さないでしょー」

 何言ってんだこいつ、みたいな表情で長塚を見ているがちょっと待って欲しい。

「え、あ、うん!? マジで!? そうだったの!?」

 長塚がいい反応をしてくれるお陰でむしろ冷静になれている気がする。

「いやアンタ、幾ら市ヶ谷さんが良い人だからって付き合ってもない女のリクエストでゲーセンの景品獲りまくるわけないじゃん」

 どういうことだ。

「いやそういう素振り無かったし……」

 それはそうだろう。好意が伝わっていたことも初耳ならいつの間にか交際していた事も今知ったくらいだ。当事者の片方がそうなのだから第三者が気が付ける筈もない。

「これだから長塚は駄目なんだよなぁ……」

 その前に色々と説明が欲しい。どういうことなんだこれは。

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