真相なんてこんなもの
「なあ立川、君は知っているか?」
「何をですー?」
すっかり恒例となったゲームセンターの景品狩り。
その前に最寄のファーストフード店で一息入れようと席についたのだが、兼ねてから疑問に思っていた事を口にしていた。
「長塚だ。あいつは何故ああなのか……何か理由があるのかと思ってな」
立川と長塚は、一方的に長塚が立川を苦手としているようだが基本的にな仲が良い。同期というのもあるのだろうが、立川からすれば弄りやすい相手なのだろう。
同性とはいえ先輩後輩という立場の自分よりも、混み入った事情については知っている可能性が高い。
「市ヶ谷さんは知らなかったんですねー」
ポテトを摘んでいたかと思えば、ペーパーナプキンで指を拭ってドリンクに手を伸ばす。
「あんまり言いふらすような話でもないんですが……まあ部室のメンツなら問題ないですよね!」
いいのだろうか。まあいいか。どうせ困るのは長塚だ。
首を縦に振るとですよねーと頷いて、立川が話し始めた。
「あいつの実家って田舎の方でちょっといいとこだ、っていうのは市ヶ谷さんも知ってますよね?」
それは知っている。大学進学のためとはいえ、遠方に子供を二人も出し、さらにお下がりとは言え車を与えられるのだ。それなりの金銭的余裕がある家なのは間違いないだろう。
「本人曰く、今はそうでもないけど昔はどうこうって話で。時代錯誤な話ですけど許嫁が居るらしいですよ」
「……うん?」
「許嫁です。将来結婚を約束した相手が別に居るんですよ」
「……うん!?」
ありえねー、と立川はうんざりした表情をしている。長塚に対しては本当に遠慮がないし男として見ていないのが良くわかるが、これは安心していいのかどうか判断に悩むところである。
それよりも、まさかというかとんでもない話が出てきた。
「確かに、言いふらすような話ではないな……」
つまりあいつは現状二股状態なのか。殴るか。
「あいつの祖父だかの時の話なんで本当にそうなるかは分からない、とは言ってました。あやふやなままじゃ駄目だからちゃんと解消するつもりみたいですよ」
「あぁ、その話が進んでいないから、というわけか……」
長塚は変に律儀というか義理堅いところがある。今回の件に関してはそれが良くない方向に作用してあいつを待たせているという事なのだろう。
「それは無事解消出来るようなものなのか……?」
「どうなんでしょうね。許嫁問題がどうなろうと 長塚に先輩は勿体なさすぎます」
釣り合ってねぇー! と叫びたいようだが流石に店内なので握り拳を作って力説するにとどめたようだ。
「あいつの事とかどうでもいいんですよ! もういきましょうプライズが私達を待ってます!」
いつの間に平らげたのか、ポテトはすっかり無くなっている。
「そうしよう。聞いておいてなんだが、あまり他人の事情を知り過ぎるのも良くないな」
長塚がいつまでも関係をハッキリさせないものだから少しいらついていたのだが、人にはそれぞれ事情があるという事なのだろう。
それに、他人の心配ばかりをしている場合ではない。
「今日はちょっと細かいやつのコンプリートなんで、ちょっと大変だと思うんですがよろしくお願いしますよー!」
景品を取ってくれる都合のよい人、で終わるのは避けたいがどうしたものか。