往生際の悪い奴
「なんで不貞腐れているんだ、長塚」
「うわーすげー不機嫌。笑える」
立川と市ヶ谷さんが絡んできた。今そんな気分ではないのでやめてほしい。
「……あぁ、なるほどな」
ついでに言うなら訳知り顔で納得しないで欲しい。不機嫌なのは認めるからそっとしておいてくれないだろうか。お触り厳禁だ。
「学祭の実行委員に先輩取られて不機嫌って……いやほんと長塚あんたね……」
話題の渦中にある先輩は、少し離れた場所で学祭実行員と打ち合わせ中だった。
二人で大学構内を歩いている際に呼び止められて、そのまま打ち合わせをしているのだが、まあなんというか大変だとかよくやるなーという感想しか出てこない。
「お前が俺をどういう風に見ているのか分かったよ。んなわけねぇだろうが」
立川に威嚇してみるが特に効果がない。こいつはやはり敵である。
「お前が不機嫌を隠さないというのが珍しくてな」
「確かに普段はどこ吹く風みたいな態度だしねぇ。ねぇ画像残しといていい? めっちゃ撮りたい!」
しまいにゃ殴るぞこの女。
「流石にやりすぎじゃないか……?」
「そう思うなら市ヶ谷さんが止めてください。俺が言ってもダメですコイツ」
「長塚の普段の言動がこういう時の立川の行動を加速させているんだと思うぞ」
やべぇ敵しかいねぇ。なんだよ四面楚歌か。
「どうした、盛り上がっているようだね。ちゃんと良い子で待っていたかい、専属運転手?」
かと思えば不機嫌の原因がやってきた。
こちらとは対照的に物凄く上機嫌だ。
「誰が専属運転手や」
「いや、先ほども言われていただろう? 学祭実行委員の中ではもう周知の事実だ」
そう。なぜか先輩を実行委員の仕事で連れて行く前に、なぜか 専属運転手さんごめんね、借りて行くねと前置きをされたのだ。
「あぁ、それで……」
「なあ長塚。お前それはもういい加減素直に認めるべきだと思うんだ」
「俺は外圧に負けたくないんだよ!」
素直になれというコールが聞こえてくるが、そんなの知ったことじゃない。
「素直になりたまえよ、長塚後輩」
満面の笑みで肩に手を置くんじゃない。