19 追跡者の一日④(鳳条柚月)
「……また兄さんが抱きつかれた……しかもあんな公衆の面前で押し倒されるぐらい強くっ!!」
「……」
このブラコン娘にはなにを言っても無駄なのでしょう。ちょっと抜けているところは相変わらずだから慣れたけど。
それよりもクララの行動は不可解ね。遥真を押し倒した(ちょっぴり羨ましい)と思ったらすぐさま立ち上がり遥真を連れて行ってしまいました。
遥真が押し倒される前になにか飛来してきたようにも見えたが……クララはそれを避けるために抱きついたのかな……。
先程メイドたちに見失った遥真たちの居場所を聞いたとき、不審者を発見したと報告があったのも気になる。
クララが言っていた刺客か……いえ、その場合真っ先に私の護衛部隊から報告があるはず。
彼女たちは優秀。不審者が行動を起こした時点で速やかに対処、報告をするはず……ではこの状況はいったい……。
ポンポン。
物思いに耽っていたら肩を叩かれた。
雫……ではないわね。彼女は私の前で今も物陰から遥真が去っていた方を見ているから。
では誰が……?
そう思い振りかえった私の目に映ったのは意外な人物で、でも私に答えを教えてくれる人物だった。
「あなたは……」
そして私たちは追跡される側へと変わった瞬間でもあった。