私は伝説になる
ポニーのキャメルを駆けさせ、槍を振るう。
「やあああっ!」
「メエエエエッ!」
視界の端ではヤギのスノーイが角を突き出して突進を繰り出していた。
「オオオッ」「ガウラァッ!」
グレイウルフ達は攻撃を掻い潜り、避け、威嚇する。
いったあっ!
「『ラピッドリー・スピニング・シピニー・ダブル・ボール』!」
高速の回転を加えた二つの刺々しい魔力球を生み出し、全長2mのリーダーグレイウルフに放つ。
「グガアアアアッ!」
リーダーのHPが半分まで削れた!
「よし! 行くよ!」
気合いを入れ、指令を出す。ガクン、と視界がブレた。
あれ?
地面に叩きつけられる。
ポニーは離れた場所でグレイウルフ達に群がられていた。
「ガウワアッ!」
リーダーの声にハッとそちらを見れば、大きな口が眼前にあった。
「わああああっ!」
しばらく、暗闇に包まれる。そうして、徐々に明るくなり、見慣れた天井がうつる。
「あーあ。負けちゃった……」
エンジョイ・ライフを始めて1年半……
私は未だに第1のボス戦、グレイウルフの群れを突破できずにいた。
そして 今日は……
<ピンポーン! 運営から『お知らせ』が届きました! このお知らせは行動終了後に自動で開き、読み上げられます。>
ベッドから身を起こす。
『プレイヤーの皆さま、今まで当ゲーム《エンジョイ・ライフ》をご利用いただきありがとうございました。
25年という長きにわたり、運営できたのは皆さまのご愛用あってこそです。
この25年間で様々な伝説が生み出されました。
伝説となった方には次回作の β プレイ権を贈らせていただきます。
惜しくも伝説を築き上げられなかった方も、製品版をご利用いただければと思います。
重ねますが、25年間ありがとうございました』
<ピンポーン! 運営から『エンジョイ・ライフの伝説』が届きました!>
これは関係ないな。
<ピンポーン! 運営から『サクセス・ライフ β プレイ権』が届きました!>
<ピンポーン! 運営から『サクセス・ライフ β プレイ権』が届きました!>
<ピンポーン! 運営から『サクセス・ライフ β プレイ権』が届きました!>
はあっ!?
『エンジョイ・ライフの伝説』を開く。
伝説のプレイヤーには、25年間の最古参者が数名の名があり、最大レベル952のプレイヤーの名が続き、一番下の方に私の名前、喜楽が続いていた。
『 :
最弱レベル12 カナート
最年少 喜楽
ゲーム進行率最下位 喜楽
最後の新参者(521日) 喜楽 』
こんな伝説……いやだ。