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最凶無比の魔女王は静穏を願う。  作者: ぶるどっく
黒薔薇の魔女王は静かに力を蓄える。
9/55

魔女王様のお仕事  宴開幕編。

 さて、視察を無事に終えた私にはもう一つ大切な仕事がある。

 それは、お金を稼ぐこと。私の国の中で食料などの事は完結させるつもりなんだけど、生活して行くには財力も必要でしょう?だったら、どうすればいいのか?


 私の答えは、奪われても文句を言えない奴から奪え、よ。だって、商売とかそういったことはまだまだ今の私の国では難しいし、家財一切を捨てて逃げてきた子達もいるのよ。例えば、奴隷とかさ。そんな子達からもらえる訳無いじゃない。

 それにねえ、出稼ぎに行って貰おうにも安全にこの国の周囲を超えることが出来るのって、今はまだ私と翁くらいしかいないのよねえ・・・。



 いつものように財力を得るための仕事に出かける私の傍らには執事のレディウスが常に従っている。

 翁から教えて貰った龍族が使っているという転移魔法を使い、適当な1つの外の国の上空に転移する。この便利な転移魔法は、そこそこの魔力を使用するため私以外の人間には使えない。だって、そこそこって言うのは龍族にとってよ?龍族から見れば、ちっぽけな魔力しかない人間が使える魔法じゃないのよねぇ。


 上空より見渡していれば、国の中にある山の中で大きな火が燃える場所が見えた。私は今日の獲物が見つかったことを喜びながら、浮遊の魔法から飛行魔法へ変更してレディウスと共にその明かりの根源を目指した。



 キャンプファイヤーのように大きな火を囲んでいたのは、酒を掻っ食らう薄汚い男どもだった。だいたい百人程度かしら、それなりに大きな山賊どもの住み処を見つけることが出来たことを嬉しく思い口元に笑みを浮かべる。

 静かに結界を展開して逃げることが出来ないように囲み、少し離れた場所へと降り立つ。そのまま山賊の住み処へと私は歩み始める。住み処のすぐ近くまで来て、私はさらに笑みを深めていく。

「レディウス。」

「はい、我が君。」

 一言声を掛ければ、私の行動を理解しているレディウスは私の背中より後ろへ一歩離れて傍観の姿勢を取る。そのことへ満足げに頷き、ゆっくりと暗闇の中から山賊どもの前へ姿を現した。





《サイド 山賊》


 満月でありながら厚い雲が月を隠していたその夜、山賊達は何カ所もの街を襲い、沢山の金目の物や女・子どもといった奴隷として高く売れる戦利品を手にアジトの一つへ凱旋していた。

 奴隷どものすすり泣く声を背後に、勝利の美酒を掲げ、宴は最高潮に達していた時のことだった。

 雲の隙間より満月が顔を出し柔らかい光が差した時、それは現れた。


「皆様、ごきげんよう。」


 艶やかな長い黒髪と同じく黒い瞳、雪ように白い肌、血のように紅い唇。やっと女としての成長が始まったばかりの肢体、まだ容姿に幼さが残るが将来は退廃的な雰囲気の美貌を持つであろう美しい少女だった。

 美しい少女がその身に纏うのは王族・貴族といった少年が着るような短パンの燕尾服であった。しかし、その服装すらも少女の美貌を損なうことはなく、逆の意味で引き立てているようにすら感じる。


 そんな極上の獲物が山賊どもの住み処に現れたのである。


 部下の口々に美しい少女を貶めるような言葉を聴きながら、美しい少女の姿を嘗め回すように確認した山賊の頭はしばらく飽きるまでは自分の専属にしてこの美しい少女をオモチャにしようと企む。しかし、その企みが叶うことはなかった。


ブツッッ!グゥッシャアァァッッ!!!


 山賊達は最初何が起こったのか理解できなかった。

 少女が美しい微笑を口元に湛えた瞬間に、少女に触れようとした数人の山賊の体中より刃物が生え、紅い血をまき散らしながら息絶えた。仲間だった"物"から自分たちに向かって紅い雨が降り注ぐ。


「ふふふ、今度は貴男方が私に狩られる番ですわ。」


 仲間だった物が肉塊へ変わる光景に山賊どもは理解した、自分たちの目の前に立っているのは美しい少女の姿をした"絶望"なのだ・・・と。


 殺される前に美しい少女の姿をした絶望の"命"を奪おうと何人もの山賊が恐怖に耐えながら、粗末な剣を振りかざす。しかし、少女はその場から動くこともせず次々と山賊の命を奪っていく。

 血飛沫が舞い、血の匂いが濃くなり、辺りには肉片が散らばった。その光景に、恐れおののき少女より必死に離れようと逃げていくものもいた。しかし、ある地点を通ると彼らは皆仲良く物言わぬ肉塊となっていった。

 それは、山賊達のあずかり知らぬうちに少女が張った結界の影響であった。少女の張った結界は、許可無く結界を出た物の首を一瞬で撥ねる効果があった。それは、まるで見えないピアノ線が張られているように通った者全ての首を撥ねていった。目の前を走っていた人間の頭が突然に消え去り、血飛沫を上げながら倒れていくその光景は逃げようとした山賊達にとってはまさに悪夢であった。。


 向かっても"死"、逃げることも"死"。彼らには死ぬ以外の選択肢など、少女と出会った瞬間より与えられてはいなかったのだ。


「た、頼む!金も何もかもくれてやるっ。だから、助けてくれ!!」

 全ての部下がその命を奪われた中で、おそらく山賊達の頭であろう男が少女へ命乞いの言葉を叫ぶ。その言葉に、不思議そうな顔をしながら少女は応える。

「狩られる覚悟が無ければ、最初からしなければいいのに。

 それに、貴方だって命乞いの言葉に耳を貸したことなど無いでしょう?」

「ひっっ、ひぃーっ。」

 少女へ背中を向けて逃げ出した山賊の頭をゴミでも見るかのように見つめ、興味を無くしたかのように背中を向けた少女の背後には山賊達と同じ末路を辿った山賊頭の姿があった。



いつも読んで頂きありがとうございます。

一度この話は更新したんですけど、微妙に納得いかなくて少し書き直したり、訂正を加えて、新たに更新してみました。

前回読んで頂いていた方はすみません。

 未熟な所も多々ありますが、楽しんで頂けましたら幸いです。

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