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最凶無比の魔女王は静穏を願う。  作者: ぶるどっく
黒薔薇の魔女王は静かに力を蓄える。
7/55

魔女王様の視察 相談役編。

 軍部の視察は、無事に終わったわ。

 私のお願いも聞いてもらえて良かったわね。でも、本当に彼らがあの危険地帯を踏破できるようになるとは思っていないのよねぇ。他の方法も検討する必要があるわね。

 さて、次はどこかしら?レディウス、どこに向かう予定なの?




古代龍(エンシェントドラゴン)の翁 ラショウ 》



「ほっほっほっ。よく参られましたな。我が君。」


 執務のために割り当てられた王城の一角にある執務室の中にその部屋の主である儂の静かな声が響く。


「翁、ごきげんよう。急なお願いをしてしまってごめんなさいね。」


 儂の歓迎の言葉を受けて、儂の三千分の一も生きていない、龍族本来の姿を取れば遥かに小さな体しか持たぬ幼子が笑顔を浮かべる。

 儂から見ればほんに小さなこの身体に、人間の枠を遥かに超えて我らの中でも力有る者といって良いほどの魔力を宿し、独特の能力を作り出してしまったこの頑是無き少女への興味は尽きることが無いのう。


「仕事の話しをする前に、この爺の茶飲み話にも付き合ってもらえんかの?」

「ふふふ、翁との話しは興味深いことが多いから大好きだわ。」

「長い年月を生きておれば、昔の話しなど事欠かないようになる物じゃよ。」


 玉座に座っている時とは、違う無垢なる笑顔を浮かべる我が君。

 思い出すのは儂の住み処であったアビス大山脈と人族が呼ぶかの山、初めて出会った時の少女との長くも短く感じた死闘。ほんにあの時とは、別人のようじゃのう。


「のう、我が君よ。

 我が君の言う義務教育とやらを根付かせた先にはどのような未来が広がっているのかのう?

 長い年月を生きてきた儂でさえも、そのような人族の国は見たことが無いのだがの。

 ・・・まあ、山に引き籠もっておったから気付かなかっただけかも知れんが・・・」

「いいえ、エディにも確認したけれど外の国で教育へ力を注ぐ国は聞いたことがないそうよ。」

「ふむ、では何故力を入れるのかの?」

 くすくすと笑いながら、儂の疑問に答えようとしない我が君。その小さな唇より、儂を驚嘆させるどんな言葉が飛び出して来るのか、楽しみで仕方がない。

「うふふ、ごめんなさい。

 長生きをした翁でも見たことが無いことだものね。

 簡単な事よ。私の国を発展させるために必ず必要になることだもの。」

 さらに、疑問符を浮かべる儂に丁寧な説明を始める我が君。


「翁、教育は国力になるのよ。

 教育をするということは、教え、育むということ。

 誰がどんな才能を持っているなんて分からないじゃない?

 たとえ貴族でも領地を治める才能は無いかも知れない、逆に奴隷であっても王になるほどの才能を秘めているかも知れない。

 それを思えば、等しく一定の教育を受ける義務を課して、その中で才能が有る者を見つけ出し、その才能を磨くことが出来る環境を整える。

 他にも、今はまだ数百人しかいないこの国の国民が増えていけば、国に登用する官吏や騎士の数も増えるわ。

 家柄だけの能力のない者は要らないの。一定基準以上の能力と規則を把握している分別ある存在が私には必要なのよ。」


 儂が思っていた以上に、どうやら儂の仕事は重要なようじゃった。ここまで、この国の未来を思い描いていたとはのう。ほんに、面白き頑是無き少女。儂が唯一頭を下げし、我が君よ。

 そうじゃのう、我が君の軍門に下りしあの日に貴女より頂いた我が名、"森羅万象を司りし者"という言葉より賜った"羅象(ラショウ)"の名に恥ずかしくない働きをせねばならぬな。



 双黒の少女の前に悠久の時を生きている賢者のごとき人型の古代龍(エンシェントドラゴン)が跪く。その瞳より伺い知れるは、尽きることのない興味と忠誠の感情のみであった。

「承りましたぞ、我が君。

 全ては貴女の願いのままに。」

 悠久の時を生きてきながらも、退屈な日々を過ごしておった儂の興味を引きつけ、捕らえて離さぬ頑是無き少女よ。儂の魂を雁字搦めにした、儂の忠誠を誓う、興味深き黒薔薇の魔女王よ。




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