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最凶無比の魔女王は静穏を願う。  作者: ぶるどっく
黒薔薇の魔女王と忠誠を誓う者達。
31/55

ランスロットの交渉 愚かな選択編。


 小さな山の麓にあった獣人達の集落より離れた森の中にエルフ達の集落があった。

 エルフ達の集落は獣人達の集落よりも賑わい、住んでいる住人達の数も多い様子だった。


 そんなエルフの集落が、冒険者の一人であるランスロットの故郷だった。

 行方知れずとなったはずのランスロットが、集落の門の前に姿を見せたとき集落に住むエルフ達は同胞の無事を心より喜んだ。


「ランスロット、ただいま戻りました!」


 薄く微笑みを浮かべ、もう一度故郷の土を踏むことが出来た事を喜ぶランスロットを、彼の無事を喜ぶ集落のエルフ達を、アイリスは冷めた眼差しで静かに見つめていた。




「良く戻った、ランスロット。

 無事で何よりだ。」


 すぐに長の家へ通されたランスロット達の前には、人間で言えば壮年の年頃に見える口ひげを生やした一人のエルフ、この集落の族長がいた。

「ただいま戻りました、族長。

 ご心配をお掛けして申し訳ありませんでした。」

「うむ、今回の依頼の危険性や重要性は亜人の国の上層部より直接聞いておった。」

「……。」

「ランスロットよ、そなたともあろうものがまさか国へ戻らずに直接この地へ戻ってきたのではあるまいな?

 もし、そなたが国に報告へ行っておれば、すぐにでも我が一族より選ばれ国の指導者の一人となっているエイベル様がお知らせ下さる。

 それが此度は無かった。

 国よりも先にこの集落に戻ったなどという、国の上層部へ指導者を選出している我らが一族の者とあるまじき、恥知らずな真似はしておるまいな?」

 厳しい表情でランスロットを睨み付けながら、表面上だけ無事を喜ぶ素振りを見せるがすぐに詰問するかのような言葉を族長は続ける。

 そのあんまりな態度に、ギルバートがランスロットを擁護する言葉を発しようとするがランスロット自身によって制止される。


「……族長、私は貴方に国よりも先に伝えなければならないことがあります。

 そのために、国よりも先にこの場へと来ました。」

「……まあいい、聞くだけは聞こう。」

 族長の態度にランスロットも思う所はあったが、それを押し殺して一族のために今までの事を語り始めた。

「……私達に出された依頼の内容はすでにご存じの様子。

 そして、そのきっかけとなった出来事もご存じでしょう。」

 ランスロットは、族長へイエンソド大湿原で死にかけた事や、自分達を助けてくれた存在がいたことを語った。


 すべての話を聴き終えた族長は、何かを考えるようにしばし無言となる。

「……死にかけた者の命を助けるなど……。

 ランスロット、まさかお前達を助けたのは"魔女"か?」

「……。」

 ランスロットは族長の問いかけに対し無言を持って答えた。

 国の上層部と太い繋がりを持っている族長に対し"魔女"と呼ばれる女王の存在を明言することは、女王との約束を違えることになるかもしれないとアイリス達に確認するまでもなく予測していたのだ。

「……族長、もう一つ言い……」

「ランスロットっっ!!

 なぜっっ?!捕まえずにおめおめと戻ってきたっっ!!」

 ランスロットは、女王より許可を頂いた女王の国へ移住する話を提案しようとするが、族長の厳しい叱責の声に遮られてしまった。

「この愚か者がっっ!!

 お前が魔女を捕まえさえすれば我らが一族の発言力が国の中で強まったというのにっっ!!」

 顔を真っ赤にして興奮して怒鳴り散らす族長を前にランスロットは言葉を失う。

 そんなランスロットの姿に何を勘違いしたのか、族長は愚かな命令を告げる。


「ランスロット、今すぐ魔女を生け捕りにしてこい。

 なに、助けられた礼をするとでも言って罠に掛けろ。

 ……死んでいないなら、多少怪我をしていても構わん。

 これも、全ては我らが一族が繁栄のためなのだからな!」


 族長は気が付くべきだった。

 彼に対して殺気が籠もった剣呑な眼差しを送り始めた二人の存在があったことに……。

 族長は自ら破滅の道を選んでしまったのだった。


ドウオォッコオォォォッンッッ!!!


 族長の家から膨大な魔力が出現し、屋根を吹き飛ばす程の魔法が炸裂したのだった。



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