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最凶無比の魔女王は静穏を願う。  作者: ぶるどっく
黒薔薇の魔女王は静かに力を蓄える。
11/55

魔女王様のお仕事 帰城編。

「お帰りなさいませ、我が君。」


 転移魔法を発動させ、王城に帰り付いた私たちを出迎えたのはメイド服に身を包み優雅に礼を取るアイリスであった。そんな彼女を従え、山賊どもの血を浴びてはいないが気持ち的な問題で入浴優先する。連れて帰った者達の処遇はレディウスへ一任した。


 アビス大山脈が近くにあることから、この王城の風呂を作成するに辺り温泉を引いてみた。蛇足ではあるけど、この王城自体私がゴーレムに指示して建設させたのよ。もっとも、図面を引いたり、建設に関する知識を持っていたのはレディウスだけど。

 まあ、やっぱり元日本人としては温泉は見逃せないわよねえ。私好みの広い大浴場は、ゆっくりと身体を伸ばしたとしても全く問題ない仕上がりで、何十人単位で入浴が可能な広さを誇っている。

 

 そんな大浴場の温泉に満足した私。あとは、眠るだけの私が身に纏うのはアイリスの趣味満載の薄いワンピースだけだった。


 こんなにフリルやリボンが有る物よりも、シンプルな方がどちらかといえば好みなんだけどねえ・・・・・。

 そんな風に思いながらベッドの端に腰掛け、自身の姿に現実逃避を始めようとしていた私の部屋の扉をノックする音が響き、レディウスの入室を求める声が聞こえた。


「入りなさい。」

 短く入室の許可を出せば、薔薇水を持ったレディウスが入って来た。

「失礼致します。我が君。」

 洗練された動作で私へ渡す薔薇水を準備する彼を静かに眺める。

 用意できた薔薇水を渡され、口に含めば薔薇の香りに包まれる。レディウスからの視線を感じるが、わざと意識を反らす。

 私の態度にじれはじめているレディウスの雰囲気を楽しんでから、言葉を投げ掛ける。

「何か言いたいことが有りそうね、レディウス?」

「・・・・・何故、あの様な者を貴女様のお側に侍る許可をお与えになったのですか?」

 私が付いてくる事を許した時からずっと、あの赤髪の男へ殺気を送っていたのよねぇ、レディウスったら。

「私のした事に不満があると?」

「違いますっ!我が君のなさることには理由が有ることはわかっています。

 ただ、私にはわかりかねるのです・・・・・。」

 私の言葉を即座に否定し、最後は声を徐々に小さくしていくレディウス。

 私へと取ってしまった自身の言動を思い、その冷たい美貌に後悔の色を滲ませ始める。

 ちょっと、苛めすぎたかしら?


「わかっているわ。

 そうね、貴男もおそらく感じているでしょうけど、この国は隠れる事にはとても都合が良い、でも外の情報を得ようと思ったらとても困難な場所にあるわ。」

「・・・それは致し方ないのではないでしょうか。

 外の国々は未だに我が君の身柄を欲していますから。」


 そう、その通りなのよ。 

 面倒な事この上ない連中が私を狙っている。なかには、エルフや獣人を初めとした亜人達が私を隠しているのだとか言うアホどもが出る始末。私の居場所が分からないから、血眼となって探している不老不死を求める王族とかもどっかにいたはずよ。

 そんな糞どもの事はどうにでもなるけれど、何処の国同士が戦争中であるとか、同盟を結んでいるとか、ある程度の情報は身を守るために必要だと思うのよね。今後この国を大きくしていくならば、外の国にこの国の存在がばれるとも限らないのだから。

 だから、今のうちに少しずつでも密偵が必要なのよ。その教師役として使えるかは分からないけど、あの男でもいないよりはマシでしょう。

 そんな私の考えをレディウスに短く纏め、話してみせる。


「・・・申し訳ありません。

 嫉妬に駆られ其処まで我が君のお考えを理解するに至っておりませんでした。」

 目を伏せ申し訳なさそうにしているレディウスに、私の悪戯心が頭をもたげ始める。

「うふふ、分かってくれれば良いわ。

 ねえ、レディウス?嫉妬に駆られたと言ったわね?」

「っ!

 分不相応にも申し訳ありません。お叱りはお受けいたします。」

「そう。ならば、今日はこのまま私の隣りに寝なさい。

 それが貴男への罰よ、レディウス?」

 私の言葉にキョトンとした表情をした彼は、ようやく言葉が飲み込めたのか顔を真っ赤にし始めた。

「なっっ、何を仰っているのですかっ?!」

 慌てて、私の言葉を取り下げさせようとする姿はやっぱり可愛らしいのよねえ。

「あら、これが貴男への罰よ。

 うふふ。レディウス、それとも私の横は嫌かしら?」

「そのような事は有りませんっっ!」

「ならば決まりね。」

「・・・あ。」

 思わず私の言葉に返しちゃったんでしょうねえ。まあ、本当に彼が私の横に眠ったかどうかはやっぱり秘密よね?



 夜の闇を太陽が微かに顔を出し、辺りをゆっくりと染め上げようとしている早朝に魔女王の私室より出てくる執事の姿は誰にも見られることなくほの暗い廊下の奥へと消えていった。



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