十一話 絶対魔防を持つ亡国の姫武将 前編
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旭が剣ヶ峰村に到着してから一ヶ月が経過した。
タマ子がパーティーの加入した効果もあって、至極順調に一行は魔獣討伐を進めていた。
今では平均して討伐推奨レベルが三位と見なされている魔獣をほぼ毎日のように討伐している。
これは剣ヶ峰山の岩竜のような主を除けば、剣ヶ峰村近隣で討伐できる魔獣としては最上位となる。
その甲斐あって旭の冒険者の位階も五位まで昇格し、小吉も七位まで上昇した。
ちなみにタマ子は一応奴隷なので冒険者組合に登録することができない。
「このあたりの魔獣も一回りしたかな」
「はい、大体剣ヶ峰村から往復二日以内で討伐できる魔獣は一通り戦ったみたいですね」
「そうか。ならばそろそろ頃合いだろう。さらに奥地へ進むとするか」
剣ヶ峰村周辺では既に物足りなくなったため、名声を高めるためさらに強力な魔獣が出る、高位冒険者のみが侵入を許された未開の地へと足を踏み入れることを決意した。
「はい、組合からの許可は忠五郎さんに手を回してもらって先日既に受けています。明日にでも行動することができますよ」
小吉は最近旭の考えを先読みしての行動が増え、従者としての振舞いが板についてきた。
「さすがだな。では早速必要なものを買い込んで明日にでも出発するぞ」
「おー!」
「はい」
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今回の討伐行は恐らく一週間以上はかかると思われるので、一行は色々な店で長旅に必要な物資を大量に買い込んだ。
特に旭の分の食料を考慮に入れるとその総計は相当な重さになった。
一通り必要な物資を購入したあと、一行は最後に黒エルフのハーフであるリナの店へと足を運んだ。
「よう、リナさん元気か」
旭は扉を開けると、馴れた感じでカウンターで作業をしているリナに声をかける。
リナは相変わらずいつものように、胸元がはだけた色っぽい服装をしている。
「あら旭くん、今日もきてくれたの。お姉さん嬉しいわ」
リナはサービスとばかりに胸元を旭の目線にしっかりと向けながら一行を歓迎する。
「ほほー。ごほん、リナさんの作る薬は質がいいからな、毎日買っても足りないくらいだ」
旭は一ヶ月前に初めてこの見せに来てから毎日欠かさずリナの元へ通っている。
もちろん薬なんかは週に一度でも買いにくれば十分間に合うのだから、その目的は誰の目から見ても明らかであろう。
「うふふ、本当にそれだけかしら」
「いやまあリナさんと仲良くなりたい気持ちももちろんあるが、リナさんの作る薬が凄いのは本当だよ」
「正直ね。私素直な子はきらいじゃないわよ」
そう言いリナは床に落ちた小物を拾いながらさらに深い角度で旭に胸元を見せ付ける。
「おっほー」
旭はリナの胸に目線が釘付けだ。
「あきらー、いいかげんにするのー」
すると、鼻の下を伸ばしている旭に、頬を膨らませたタマ子がぽこぽこと旭の頭をたたきなだら怒り出した。
「いてて、タマ子痛いって」
「うるさーい」
「まあまあタマ子さん、落ち着いてください。あとであっしが蜂蜜を買ってあげますから」
「ほんと! じゃあ今回は蜂蜜に免じて許してあげるからね」
タマ子は旭が女に色目を使うのが気に食わないらしい。
タマ子の側で旭がいかがわしい態度を取ると、すぐさま旭の邪魔をしてくるのだ。
「旭くんも小さな妹さんができて大変ね。ところで今日は何の用かしら、何時ものようにお話にきたの? そうならお茶でも入れるわよ」
小吉の絶妙なフォローでタマ子の機嫌が直った所で、リナが用件を聞いてきた。
「ああそうだった、実は今日はリナさんにお願いがあってきたんだ。実は俺達は明日から奥地へと進むことにしたんだ。リナさんはぜひそこに一緒についてきて欲しいんだ」
リナは単独で薬を作るために必要な素材を採ってくるだけあって、その腕は確かである。
旭は奥地に行く際にリナをぜひともパーティーに引き込みたかった。
そのために一ヶ月間毎日店に通い、安くない薬や時には薬の何倍もする魔道具も買ってきたのだ。
さらに時には必要とあらば魔獣の素材をリナに優先的に回してもいたのである。
もちろんそれ以外の目的もある。
「旭くんもいきなりねえ。確かに旭くんにはお世話になってるから出来る限り協力してあげたいけど、でもお店を空ける訳にもいかないし」
リナも旭に世話になっているため、協力してもよい素振りを見せているが店の事も心配のようだ。
「もちろんタダとは言わないよ。素材の売却金は半分出すし、それとは別に金貨百枚出すよ」
リナの目がきらっと光ったような気がした。
彼女は言い方は良くないが金に目がない。
どのような目的があるのかは分からないが、何か事情があって金を貯めていると旭は予想していた。
「本当、それなら喜んでご一緒するわ。でも私はメインは回復魔法よ。あとは後ろから弓でフォローする事位しかできないわよ」
「ああもちろんそれで構わない。正直俺の回復魔法だけでは心もとなかったので、それだけでも十分助かるよ」
「オッケー、じゃあ契約成立ね。あと悪いけど明日は迎えに来てもらっていいかしら。この見た目だからあんまり目立ちたくはないのよね」
リナはハーフエルフのため迫害の対象となるため普段は人混みは避けている。
「ああ全然構わないよ」
「ありがとう。じゃあこれから明日の準備するから今日はもうお店を閉めるわ、旭くんも悪いけどまた明日ね」
「了解した。じゃあ明日の七時に迎えにいくので宜しく頼む、じゃあまたな」
「ええ、また明日」
旭一行はリナに一旦の別れを告げて彼女の店をあとにする。
既に明日の買い付けは済んだので後は宿に戻って明日の準備をするだけである。
途中タマ子の機嫌取りに蜂蜜をしっかり買い与えてやってから、宿に戻ることにした。
宿に帰って、旭は上手くリナを一時的にせよパーティーに加入できたことをむふふと喜んでいた。
声にだすとタマ子がうるさいので口には出さなかったが、このように臨時パーティーを繰り返して彼女の信頼を得ることが出来れば自然と仲間になってくれそうな予感がしたからである。
もちろん旭の中では仲間になると良い関係になるという点は同義であったのは言うまでもない。
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翌朝、旭一行は予定通り朝七時にリナを迎えに彼女の店の前に立っていた。
旭はコンコンと店の扉を叩き彼女に来訪を知らせる。
間も無くしてカチャと鍵を開ける音とともに扉が開かれ、旅支度を終えたリナが姿を見せた。
「おはよ、わざわざ迎えに来てくれてありがとね。お礼にタマちゃんにこれあげるわ」
「えっ、これ全部食べていいの?」
「ええもちろんよ」
「わーい、ありがとー」
リナが渡したのはお手製の飴やクッキーなどの菓子だ。
彼女はタマ子が自分が旭を誘惑する女だとして、あまりいい感情を抱いていないと思ったのだろう。
そのため道中揉める事の無いように、前もってタマ子を懐柔しようとしたのだろう。
「リナって思ったよりいい人だったんだー」
「当たり前じゃない。タマちゃんが食べたかったらいつでも作ってあげるわよ」
「やったー、わーい、わーい」
当のタマ子はリナの目論み通り、早くもいいように懐柔されている。
旭にとっては悪くない事なので、旭は小吉共に、特になにも言わずにかすかに口元をほころばせながらも黙っていた。
「二人とも仲良くしている所悪いが、さっさと出発するぞ」
「ええ、分かったわ」
「はーい」
リナは馬を持っていないということなので、急ぎで忠五郎に適当な馬を金貨十枚で一頭見繕って貰って彼女に宛がった。
「久しぶりだからちゃんと乗れるかしら」
などと言っていたが、実際乗ってみたら大層様になっていた。
おそらく昔から乗りなれていたのだろう。
幼い頃から馬に乗れる身分の者など限られているため、旭は不思議に思ったが、詮索して気を悪くされても仕方がないのであえて聞かないことにした。
これでどうやら問題なく出発できそうなので、リナも含めて四人となった一行は剣ヶ峰村を出てさらに北西にある未開の地へと足を踏み入れるべく歩を進めだした。
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「今日の目的地はここにする」
旭が地図の一点を指し示す。
剣ヶ峰村を出発してから六時間程経過し、一行は少し遅めの昼食を取っていた。
その時間を利用し旭は午後の計画を立てようとした。
「ここは組合が作られた休憩所でありますね」
小吉が旭に返答する。
冒険者組合が本当の最前線として簡単にであるが、高位冒険者の為に危険地域との際に休憩所を設けたのだ。
「ああそうだ。今日はここまで進んで、明日に備えることにする。そこから奥は上級魔獣が頻出する危険地域だ、なので本格的な探索は明日からになる。タマ子お前の出番は明日からだ、頼りにしているぞ」
「道案内はあたしにまかせなさーい」
「タマちゃん、頼りにしているわよ」
タマ子いわく、彼女はここからさらに奥の奥にある妖精の里に住んでいたらしい。
彼女の話によると祖父である里の長はタマ子以上の光魔法の使い手らしい。
だとすると旭の見立てでは、タマ子の祖父一人で討伐推奨二位以上のパーティーが必要になる。
さらにそれに準じた妖精が何体もいるのだから、その戦力は計り知れないだろう。
話はそれたがタマ子はこの辺りの地理は凡そ頭に入っているらしい。
そのため旭はタマ子の言葉を信じて彼女に道案内を任せることにした。
「よしっ、飯も食い終わったようだし、日が暮れるまでに目的地に着くようそろそろ行くとしよう」
旭は全員の食事が終わったのを見計らって、出発の意を告げる。
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昼食を終えてから四時間程で経過した。
最後は急ぎ足となったが、一応道は休憩所までは整備されているためか、特に強力な魔獣に遭遇することなく無事に目的地の休憩所に到着することができた。
休憩所には数件の周りが鉄柵に囲まれた小屋が建てられており、旭はそこで顔見知りの高位冒険者に出くわしたため軽く話した後、その小屋の中の一戸を借り受け、一行は一日の疲れを癒すべく中へと入った。
「外見に反して中は色々な設備が充実してるのね、気に入ったわ」
「リナの言う通り魔道具で光も確保されているし、調理場もそれなりの作りになっている。さらに風呂まで完備されているとは、高級宿のような設備だな。組合も稼ぎ頭のためには金は惜しまないといった所か」
一行は意外にも整った小屋の設備に驚いたが、さすがに危険地域のそばとあり、すぐには緊張を緩めずに荷物を置くとすぐに小屋の外に出て周囲の哨戒を始める。
「旭ーお腹すいたー、ご飯にしよー」
ただタマ子だけはこの環境にはなれているせいか、元気一杯のようである。
「ぱっと回ってみたが今の所強力な魔獣は潜んでいないようだ。気持ち程度だが、かがり火も点けておいたので一応魔獣対策はこんなもんでいいだろう。雑事はこのへんにしてそろそろ飯と風呂にするか」
「ご飯は私が作るから、旭くんはお風呂をお願いしていいかしら」
「それはありがたいな。タマ子にあげた菓子も好評だったみたいだしこりゃあ楽しみだぜ」
朝に機嫌取りにタマ子にあげた菓子は想像以上の味だったらしく、タマ子曰くいままで食べた中で一番美味しかったとのことだ。
旭は小吉をリナの手伝いに残し、自身は風呂場へと向った。
旭は風呂場で、水道用の魔道具に水魔法が付与された魔石をはめ込み湯船に水を張り、お次は火魔法の付与された魔石を湯炊き用の魔道具にはめ込み湯を温める。
ちなみに風呂場の貼り紙に『勝手に魔石を持ち帰ったものは、金貨壱千枚の罰金を課す』と書かれていた。それを読んで、高位冒険者のような金持ちでも手癖の悪さはやはり治らないものなんだな、と旭は改めて思った。
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三時間後、四人は既にリナの作った美味しい食事を食べ終えてから、全員が風呂も済ませ、今は各々自由にくつろいでいる。
旭は『大陸の名城百選』という題目の本を、リナは旭の入った湯を抜き再び湯を張り直してから二度目の入浴を楽しんでいる。
小吉は暇そうにしているタマ子の相手をして旭の読書時間を作っている。
さら二時間が経過すると、そろそろ明日に備えての就寝の時間となった。
「さあそろそろ寝るか。もしなにかあったらすぐ分かるような仕掛けも張ってあるようだし、恐らく全員で寝ても大丈夫だろう。明日も早いそろそろ灯りを消すぞ」
「わかったわ」
「了解しました」
「zzz……」
リナと小吉の了承を取り旭は消灯する。
タマ子は既に萬屋商店において特注で購入した専用ベッドで既に夢の国だ。
三人も疲れがあったのかタマ子に続いて、消灯後間も無く寝入った。
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「さあここからが本番だ、みんな油断するなよ」
翌朝、日が昇る頃には目が覚めた一行は手早く朝食を取り弁当を詰めると、早々と小屋を出発する。
休憩所を後にして未開の地へと足を踏み入れた旭は、先達の冒険者が踏み均した道を慎重に進んでいく。
昨晩、地図とタマ子のから得た情報を照らし合わせると今歩いている草むらを抜けてから、水竜の住処である湖がある。
その左右には、左に地竜の住む平原が広がり、右には鉱物の豊富な山岳地帯があり、そこには暁人と交流のある異民族の地精族が住んでいる。
さらにその奥へ進むと、タマ子の暮らしていた大森林へと道なき道がつながっている。
大森林はその名の通り広大な面積を誇りその広さは奥州全体の約六割を占め、様々な異民族や魔獣が生息し、その最奥は龍が住まうと言われている大山脈までつながっている。
「今日は昨晩話した通り、今歩いている草原を抜けて湖の畔で寝床を確保するとしよう。今から順調に行けば何回か魔獣とでくわしても夕方前には到着するだろう」
「湖で水浴びをしてさっぱりして寝たいもの、絶対夕方までに行きましょうね」
リナは旭に目配せをしながら色っぽく言葉を返した。
「うほほ、その時はぜひ一緒に、っいてて」
旭がリナに誘い文句を言い切る前にタマ子が例の如く旭の顔を引っかいてきた。
お前は俺のなんなんだと思うが、どうにか我慢してタマ子をなだめる。
旭がまたいいところで「またか」と思ってがっくりしていたら、リナがタマ子に見えないように指を口に縦にあてOKとも取れるサインを出してきた。
旭は自然と顔が崩れそうになるが、ここで耐えられなければ男が廃ると最大限の理性を動員してなんとか表情を変えずにやりすごすことに成功した。
「よし、それじゃこれから湖目指して前進するとしよう。みんないくぞ」
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現在草原の道程を三割方踏破したところだ。
一行は積極的に魔獣を狩っていないので、偶然に出くわした中級魔獣を何体か倒してただけで、ここまで順調に進んでいる。
ところがここで旭以外の三人の様子がなにやらおかしい。
「旭様、あそこ一体の草の動きが変でありやす」
小吉が目を凝らして、ある場所を指差す。
「たしかに微かだけど複数の足音が聞こえるわ」
リナが耳に手を当てながら告げる。
「なんかあのへん嫌な魔力を感じるよ」
タマ子が目を閉じ感覚を集中させる。
旭はちょっとした疎外感を感じながら、適材適所だと強がりながらも、三人に指摘された場所に腰に差してあるナイフを数本サクサクっと投擲する。
するとザシュザシュという音は聞こえなかったが、替わりにギャーギャーと魔獣らしき悲鳴が複数聞こえた。
「相手は複数だ。タマ子はあそこに光爆弾を放て、リナは弓で援護、小吉は敵の動きを見逃すな、俺はここで出てきた敵を討つ」
旭は素早く三人に指示を飛ばす。
「うん。……むうー」
タマ子は素早く魔力を溜め始める。
「わかったわ」
リナも既に矢をつがえており、すでに一射目を打ち終えた。
「……」
小吉は集中して草むら周辺を見ている。
数秒後、早くもタマ子のチャージが終わったようだ。
「くらえー、ばぁーん」
タマ子の手から打ち出された彼女の倍以上の光球は、あっというまに目的地に着弾し、そこを中心に半径十メートル程の爆発を引き起こした。
これが中級光魔法の光爆弾である。
この魔法は同時に複数の敵を攻撃できるため、群れで攻撃してくる魔獣に対してとても重宝している。
「敵五、いや六きます。兎です」
小吉が光爆弾で打ち漏らした魔獣の来襲を皆に知らせる。
「よし」
旭はすばしっこい兎用に槍を捨て、腰の形見の剣を抜く。
小吉の言葉から約三秒後、草むらから六羽の兎が一斉に旭にかかってきた。
その内一羽はリナの弓でもう一羽はタマ子が光の矢(小)で旭の下にたどり着く前にしとめた。
さらにもう一羽は小吉が相手をしている。
小吉もここにきて旭が毎日稽古をつけているおかげで戦闘力が上昇し、ある程度の魔獣なら対応できるようになったのだ。
こうして旭は結果として三話の兎を相手にすることになった。
はっきり言おう、楽勝である。
「ふんっ、雑魚が」
旭は襲いかかってきた兎の一羽を剣の一振りであっという間に切り殺し、その隙に飛び掛ってきた一羽をカウンター気味に左の拳で殴りつけた。
その一撃は兎の顔面を原型を留めないほど破壊した。
最後の一羽は先の二羽が命がけで作ってくれた隙を利用し、仲間の借りを返さんとばかり血走った目つきで旭の喉元に噛み付く。
旭はそれを顎を引いただけで避けることをしなかった。
兎の牙は旭の顎に食い込まれるはずだったが、現実は牙の先端だけかろうじて皮膚を突き破った程度で、旭の顎を砕くことなど夢のまた夢であった。
「とっとと死ね」
旭は顎に引っかかった兎に左拳を一撃お見舞いしその命を刈り取った。
「みんな無事か!」
旭が声をかけると、小吉のほうもリナ達の援護があったせいか既に兎を片付けていた。
皆の無事を確認すると小吉に兎を検分させる。
「こいつは風切兎ですね。その瞬発力から風を切るほど動きが速いとのことからこの名がついたようです。
このあたりを縄張りにして数十匹で行動する雑食魔獣です。討伐推奨位は今のような群れ単位で正三位となります」
いきなり上級魔獣と出くわしたが、流石に腕利きの三人が集まっているためほぼ無傷でくぐり抜けることができた。
時間がないので小吉に討伐部位のみを切り取らせて、一行は湖に向けて再び出発する。
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「あきらー、あとちょっとで湖だよー」
それから一行は何回か風切兎と同等のレベルの魔獣の襲撃を受けるも、それを楽々と返り討ちにして目標時刻より一時間程早く目的地の湖へと到達しようとしていた。
「思ったより早く着いたな、これもみんなの頑張りのお陰だ」
旭が皆に労いの言葉をかける。
多少は疲れの見えていた一行だか、目的地まで目と鼻の先となった状況になれば足取りも軽やかになり、あと数分もすれば湖の目の当たりにできる予定であった。
だがその瞬間一行は目を疑う光景を目の当たりにする。
なんと湖の主である討伐推奨位正二位の水竜が顕現し何者かを攻撃しだしたのだ。
「あれば水竜か、見た所なにやら戦っているみたいだな。とりあえず近くまでいってみないか」
「旭様それは危険です」
「私はいいと思うわ、この四人なら普通に戦っても勝てそうだしね」
小吉は反対でとリナは賛成のようだ。
タマ子のは旭の意見に反対することは有り得ないのであえてふれていない。
「大丈夫だっていざとなりゃ逃げりゃいいんだ。たとえ追いかけられても、陸地ならこっちに分があるんだあらそう心配するな」
「わかりやした、あっしも旭様が行くというなら覚悟を決めますよ」
意見を揃えた四人は水竜に見つからないように体勢を低くして湖に近づく。
しばらく匍匐前進のような形で進むとなにやら戦闘音楽が聞こえてきた。
旭が目を凝らすと、なんとその先には筋骨隆々の男と、短めの髪の美女を付き従えた十代前半と思われる美少女が水竜と戦っていたのである。
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