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一年で一番長い日 キリ番リクエスト はんぺんの冒険 2

「さかばやしさんですか。えっと・・・」


せめてお茶くらいご馳走したいが、どうしよう。迷惑かな? 


真昼間、こんな寂れた公園にいるくらいだから忙しくはないんだろうが・・・ 隙の無いスーツ姿。営業途中で一息入れてるサラリーマンか、はっ、もしや、家族にリストラ・カミングアウトが出来なくて、九時から五時まで黙って外で時間を潰すしかない、哀しい中途採用求職難民だろうか?


辛いよな、リストラ。俺も経験者だからよく分かる。朝から必要以上にきっちりスーツを着こんで会社に行くふりをし、ハローワークに通い、雨が降ってなければこんな公園で、コンビニおにぎりを齧りながら時間を潰すんだよな。


男のそこはかとない黄昏っぷりに、俺はつい自分の体験を重ね合わせてしまった。


その時、どこかで爆竹のような音がした。

何だ? 暴走族のバックファイヤか? まだ昼間なのに五月蝿いなぁ。


あ?


俺は声を上げる暇も無かった。気がついたら、男の腕に捕まえられ、夏樹とともに地面に引き倒されていた。男は俺たちを庇うように覆いかぶさりながら、忙しなく周囲をうかがっている。


な、何だ?


と、空から何かが落ちてくる。それにぴくっと反応した男は、俺たちを抱えたまま素早く木の陰に飛び込んだ。


「あ、あの?」


あまりの驚きに、俺は言葉が出なかった。いきなり地面に引き倒されたり、強引に腕を取られて木陰に引っ張り込まれはしたが、サカバヤシと名乗ったこの男が俺と夏樹に危害を加えるとは、不思議に考えなかった。


「静かに!」


押し殺した声で怒られた。言われたとおり黙って伏せていたが、それっきり何も起こらない。俺はそろそろと頭を上げ、さっき空から降ってきたものを見た。もちろんそれは不思議なペンダントに守られた美少女なんかではなく、どうやら風船の残骸に見えた。


とすれば、さっきの爆竹のような音はこの風船が割れた音か。上空でカラスが鳴いている。どこかから飛んできた風船を、カラスがつついて割ったと考えるのが自然だな。


「あのー、何とも無いようなんですけど、さっきの音、風船が割れた音だったみたいだし。もう立ち上がってもいいですか?」


俺の問いに男は大きな溜息をつき、悪かった、と呟いた。


「いや、悪いとは思いませんけど、・・・あなたは、俺とこの子を守ろうとしてくれたんでしょう? 日本は銃に縁がないからああいう音が聞こえても危機感を感じないけど、そうでないこともありますしね」


「さかばやしのおじちゃん」


「・・・何だ?」


「さかばやしのおじちゃんは、ぼでぃーがーどみたいだね。このあいだ葵ちゃんと見たでぃーぶいでぃーとそっくり。かっこいいね」


子供はにっこりと邪気のない笑顔を向ける。その服を軽く叩いて埃を落としてやりながら、男は肩を落とした。


「・・・動くものと、突然の物音」


サカバヤシは呟いた。


「俺はそれに異様に反応してしまうんだ。悪気は無かった。許して欲しい」


だからか。俺は納得した。夏樹が木の枝から落ちた時、あんなに素早く行動を起こせたのは、彼の習性(?)のせいだったんだな。


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□■□ 逃げる太陽シリーズ □■□
あっちの<俺>もこっちの<俺>も、<俺>はどこでも変わらない。
『俺は名無しの何でも屋! ~日常のちょっとしたご不便、お困りごとを地味に解決します~(旧題:何でも屋の<俺>の四季)』<俺>の平和な日常。長短いろいろ。
『古美術雑貨取扱店 慈恩堂奇譚』古道具屋、慈恩堂がらみの、ちょっと不思議なお話。
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