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翌年かその年の<俺>  ある双子の兄弟 芙蓉と葵 1

整理整頓のため、「何でも屋の<俺>の四季」からこちらに移します。元のタイトルは「ある日の<俺> 8月28日。 ある双子の兄弟 芙蓉と葵」です。全く同じ話なので、既読の方はスルーしてください。


ややこしくてすみません。

グレートデンの伝さんの朝の散歩を終え、続けてミニチュアダックスフントのメイちゃんとダークくんの世話をし、さていったん事務所に戻るか、とぼーっと歩いていたら。


「おじさーん!」


ピンクのほっぺの、可愛い男の子が駆けて来る。背中からのぞいているのは、見覚えのある白い犬のぬいぐるみ。


「夏樹くん! 久しぶりだね。はんぺんも元気かい?」


「うん! 葵ちゃんがね、これつくってくれたの。はんぺんとお出かけするとき、落とさないようにって」


そう言って、夏樹くんは叔父に作ってもらったという、背中の小さなハンモック型のバッグをぽんぽんと叩いた。はんぺん、というのは、その中に詰め込んで(?)あるぬいぐるみのこと。つぶらな瞳がキュートだ。しかし、白いから「はんぺん」と名づけたこの子のセンスが・・・ちょっと心配ではある。


「そっか、良かったね。ところで、まさか一人でここまで来たんじゃないよね?」


この子は一度、たった一人で俺の事務所まで来たことがある。まだ小学校に上がる前だったのに。


「パパときたの。ほら!」


長身の影が近づいてくる。夏樹くんはまた走っていって、その足に抱きついた。子供は元気だなぁ。この子も、この四月から小学一年生。娘のののかと同い年だ。


って、それはともかく。

芙蓉か? 芙蓉が来たのか?


げ。


昨日あいつのことを思い出したのが悪かったのかもしれない・・・


「久しぶり」


そう言って夏樹君を抱き上げ、にっこり笑ってみせる芙蓉は・・・男前だ。本日の彼は、男装だった。


ん? 男装っていうのも変だな。元々男だし。


まあ、どっちでもいいけど。芙蓉は芙蓉。他の誰でもない、日向芙蓉という人間だ。・・・こいつと同じ顔の弟は「ヒマワリ」になってしまったけどな。日向葵(ヒュウガ アオイと読んでやってくれ)。


「お、おお」


俺はぎくしゃくと片手を上げ、挨拶を返した。嫌いじゃないけど、なんか苦手なんだよな、芙蓉。


「そういえば、パソコンのアダプタ、調子どう?」


にこにこにっこり笑顔の芙蓉。さすが、笑い仮面の息子だ。彼ら双子の兄弟、そろって父親とは縁を切ってるけど。


「お陰様で、いいよ調子は。元々同じ機種のやつだったし」


俺は引きつり笑顔で答える。今年の一月、まだ寒い頃。俺は芙蓉から古いパソコンのアダプタを譲ってもらったんだ。その時出されたあの条件は・・・


いや、正直、もう思い出したくない。


「そう。じゃあ変身した甲斐があったね。美人だったよ、あなた」


だから! 思い出させてくれるなよ・・・


「えーと、何のことかな? 覚えてないなー」


自分でも白々しいと思いつつ、俺は芙蓉から目を逸らせて明後日の方に目をやった。

初投稿当時の後書き

変身=女装。

この時の話は、「一年で一番寒い日」に。そのうち、またこちらか『一年で一番長い日』の方に投稿します。


このお話も本当は『一年で一番長い日』に入れる方が良かったかな、と思いつつ、前日の話と少しだけ関連しているのでこちらに。

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前日の話とは、「ある日の<俺>8月27日。酔芙蓉」です。

整理整頓については、本日5月16日の活動報告にて。


ptとブックマーク、ありがとうございます。

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□■□ 逃げる太陽シリーズ □■□
あっちの<俺>もこっちの<俺>も、<俺>はどこでも変わらない。
『俺は名無しの何でも屋! ~日常のちょっとしたご不便、お困りごとを地味に解決します~(旧題:何でも屋の<俺>の四季)』<俺>の平和な日常。長短いろいろ。
『古美術雑貨取扱店 慈恩堂奇譚』古道具屋、慈恩堂がらみの、ちょっと不思議なお話。
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