四月 寒の戻り余波 2 終
今日は二話投稿です。
「何でも屋の<俺>の四季」の方と二重になっていた話は削除しました。
昨日の慈恩堂の店番は、ものすご~く普通に終わった。
掛け軸の中の絵が、見るたび少しずつ微妙に違って見えるような気がするとか。
古い張子の虎の首が、風も無いのに上下に揺れてたりとか。
ちゃんと箱に入れてあるのに、目を離すと何故か下に落ちてる煙管とか。
そんなもん、もう慣れた。慈恩堂ではよくあることだし、気にしたら負けだと思ってる。
──来ると聞いてた客は、結局来なかったしな。
店番より大変だったのは、店の二階で臥せってる店主の看病かな。
熱で目は潤んでるし、ハナはずるずるしてるし。今日退院して無事愛犬タロの許に戻った石田さんほどじゃなかったけど、かなりキツそうだった。なのに、病院へ行くのは嫌がるし。まあ、真久部さんは年寄りではないから体力はあるだろう。年齢不詳だけど。
柔らかアイス○ンを枕代わりにして、額には冷え○タ貼って。食べたくないとぐずるのを宥めてお粥を食べさせ、市販の感冒薬を服ませて。
ん? お粥は俺が作ったよ。一階の台所で。ここんちも、店舗兼住宅なんだよな。冷蔵庫の奥で発見した桃缶を小さめに刻んで出したら、喜んでくれた。
午後にはだいぶ顔色も良くなり、寝息も穏やかになってたんで、安心した。
夕方六時ごろに目を覚まし、空腹を訴えたので、今度は卵粥を。食欲も出てきたようで、鍋一杯ぶんをペロリと平らげ、また薬を服んだ。
七時前に犬の散歩依頼が入ってたから、「もしまた具合が悪くなったら携帯に連絡くださいよ」と言って慈恩堂を出てきた。この店の閉店作業も慣れたもんよ。馴れたくなかったけど。
今朝電話してみたら、もう自力でお粥を作ることが出来たらしい。良かった。「薬も忘れずにちゃんと服んでくださいよ」と念押ししたら、笑ってたけど。
「こんなに酷い風邪を引いたのは、十年ぶりです」と言ってた。引きたくなくても引いてしまうのが風邪。俺も気をつけよう、うん。風邪引くと怒られるんだ。元義弟の智晴とか、智晴とか、元妻とか、娘のののかに。なにも好き好んで引くわけじゃないのに・・・
理不尽だ。
それにつけても、寒の戻り、怖い。