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いつかの年の<俺> 藤の蔓 その6

ここ、って、どこですか? 住職!


ドキドキドキ。何か怖い。聞くのが怖い。でも、聞かなければ聞かないで、それはそれでまた怖い。


「いつ、誰が始めたことなのか、それは知りません」


相反する思いに引き裂かれ(大袈裟だな)、内心で身悶える俺のムンクな精神状態に気づくこともなく、住職は続ける。


「ただ、昔から言い伝えられているのですよ。『どうしても亡骸が燃えない時は、藤の蔓を一緒に燃やせ。そうすれば、亡骸は燃えて無事お骨になることが出来る』とね」


「何でですか?」


何ゆえ、藤の蔓?


「分かりません」


住職は首を振る。


「分かりませんが、ご遺体がどうしても燃えきらない時、言い伝えの通りにすると、本当にそれまでが嘘であったかのように、無事に燃えてきれいにお骨になるのです」


「えっと・・・」


俺は回らない頭で考えた。ともすればフリーズしそうになる頭で考えた。


「さっきの葬儀社の方が、わざわざこちらに藤の蔓をもらいに来たっていうことは・・・」


「久しぶりに、どうしても燃えないご遺体が出たということでしょう。あんなに慌てていたところを見ると、よほど時間が押していたんでしょうな。火葬場も、日によってはかなりな過密スケジュールになるようですから」


そういえば、この暑いのにあの人、真っ青な顔してたなぁ・・・


「その、無事に燃えるんでしょうか」


住職は頷く。


「燃えるでしょう。藤の蔓が効かなかったという話は、これまで聞いたことがありませんから」


最終兵器ってか、リーサルウェポンみたいなもんなんだろうか。

・・・藤の蔓が?


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□■□ 逃げる太陽シリーズ □■□
あっちの<俺>もこっちの<俺>も、<俺>はどこでも変わらない。
『俺は名無しの何でも屋! ~日常のちょっとしたご不便、お困りごとを地味に解決します~(旧題:何でも屋の<俺>の四季)』<俺>の平和な日常。長短いろいろ。
『古美術雑貨取扱店 慈恩堂奇譚』古道具屋、慈恩堂がらみの、ちょっと不思議なお話。
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