いつかの年の<俺> 藤の蔓 その1
元が数日掛けての細切れになっているので、一話一話が短いです。
今日は海の日にふさわしく、素晴らしい晴天だ。昨日も晴れてたし、明日も同じくらい晴れるだろうけど。
で、俺は今、お寺の境内。海の日とはいっさい関係なく、土と仲良くしながら草むしりに励んでる。何でも、近々この寺で檀家の五十年忌を営むらしく、当日に向けて、普段は放っておくようなところにも手を入れることにしたという。
あっち~! ちょっと休憩。緑の葉が涼しい屋根を作ってる藤棚の影に座り、ぼーっとしながら持参の塩麦茶を飲む。あー、風が通って涼しい。
「ご苦労様です」
声に振り向くと、縁側に住職が立ってた。朝のお勤めが終わったのか。どうりで、いつの間にか読経の声が聞こえなくなっていた。
「いえいえ。お仕事ご依頼ありがとうございます。今、ちょっと休憩させてもらってます」
営業スマイルでにっこり笑うと、そうですか、と住職もにこりと笑顔を返してきた。
「よかったら、こちらへ来て、お茶菓子はいかがですかな。よく冷えた葛饅頭がありまして」
「ありがとうございます! 実は甘いもの食べたいなー、なんて思ってたんですよ」
俺は喜んでおよばれすることにした。
20100719