いつかの年の<俺>小話 梅干しの季節
今日は広瀬のお婆さんの梅干し作りのお手伝い。
梅、前の晩から水に浸けてアク抜きしておくのか。知らなかった。
お婆さん、洗って水に浸けるまでは良かったらしいが、その時、腰を少し痛めたのだという。
「あまり時間を置くと、せっかくのいい梅が悪くなってしまうのでねぇ」
溜息をつくお婆さんは、笊に上げて水を切った大量の梅から、竹串を使ってちまちまとヘタを取り除いてる。俺はそれをきれいな布巾で拭いてせっせと水気を取っていた。
ヘタ取るの、俺がやりましょうか、と言ったんだけど、慣れない手でやって梅の果肉に傷がついたら困るからとやんわり断られた。意外に繊細なんだな、梅干し作り。
「昔は『梅一升塩一升』と言ったものだけど」
お孫さんたちの希望で、今は少しだけ塩を控えているらしい。とはいえ、控えすぎるとカビが生えやすくなるんで、その辺の兼ね合いが難しいのだとか。
『その家の主婦の体調が悪いと、その年の梅はうまく漬からない』とか、色々教えてもらった。昔からあるものだけに、言い伝えもいっぱいあるみたいだ。
中が分かりやすいガラスの大瓶に、拭き上げた梅と塩を交互に重ねるように入れていく。こうやっておくとだんだん梅酢が上がってくるんだそうだ。上手く漬かるといいなぁ。
帰りに、去年漬けたという梅干しをもらった。広瀬のお婆さんの梅干しは、紫蘇を入れない白干し、という作り方らしいんだけど、ふっくらして美味そうだ。食欲ない時はこれだな。
20100702