ある年の<俺>小話 12月20日。 芙蓉の誘い 2 終
俺だって、依頼を断ることがある。<何でも屋>といっても、出来ることと出来ないことが・・・
「クリスマスパーティーで、ホステス役~?」
思わず語尾が跳ね上がる。ホステスだぞ、ホステス。ホストじゃなくて。いや、ホストでも無理があるけどさ。
──報酬ははずむわよ、な・ん・で・も・や・さん?
携帯電話から聞こえる芙蓉の声は、男とも女ともつかぬ不思議なトーンだ。口調も女言葉だし、今現在女装中なわけだな。
「断る。ホステス、ってことは、女装だろ? クリスマスの仕事予定はもう決まってるしな」
──あら。残念だわ。もっと早くから予約しておけば良かったのね。
「そういう問題じゃない。忘年会のお誘いも断っただろ、俺」
──そうだったわね。でも、うちみたいなお店は、年末がかき入れ時なのよ。忘年会でしょ、クリスマスパーティでしょ、今年はカウントダウンパーティも予定してるから、とても忙しいの。人手がいるのよ。
「だから! 女装させるつもりだろ?」
──当然じゃない。
そう答える声は、笑ってる。
「裏方ならいいけど、女装はダメ。ということで、そちらの依頼はお請け出来かねます。悪しからず!」
さらに高くなる笑い声を強制終了。ついでに、電源も落とす。
ったく。単に俺をからかいたかっただけじゃないのか、芙蓉のやつ。俺だって、年末は忙しいんだ! ・・・一応。