ある年の<俺>小話 11月21。 智晴、インフルエンザに罹る 1
元義弟の智晴が、インフルエンザに罹ったらしい。新型のではないということだが、心配だ。
──だから、今日の面会は悪いけどキャンセルさせて欲しいのよ。私はこの通り出張中だから、ののかの送り迎えが出来ないの。
電話の向こうで、元妻が溜息をつく(今、ヨーロッパにいるらしい)。心配なんだろうな。彼女、あれで、弟思いだから(智晴は「弟いじめだ」っていうだろうけど)。
ののかに会えないのは寂しいけど、そういう事情なら仕方ない。気持ちを切り替えて、「じゃあ、俺が智晴の看病しに行ってくるよ」と言ったら。
──ダメ! ダメよ。あなた、ただでさえ風邪引きやすいし、インフルエンザにも弱い方でしょ。
・・・えらく反対されてしまった。元妻からの電話を切った後、すぐに智晴からメールが来た。「看病なんかに来られたら絶対うつるので、来ないでくださいね」だって。
確かに、俺、風邪とインフルエンザには弱いけどさぁ・・・
だけど、俺だって心配だし。生意気な元義弟だけど、世話になりまくってるし。
後で、風邪とか引いた時限定の智晴の好物、差し入れに行って来よう。ドアノブに袋を引っ掛けに行くくらいなら、いいだろ?
しかし智晴も変なやつだなぁ。普段、高級なもの食べてるくせに、熱が出てる時だけプッチンプリンと黄桃の缶詰しか食べられないなんて。桃缶はともかく、智晴とプッチンプリン・・・似合わない。