ある年の<俺>小話 ある日の智晴
エガタイムも終わったので、KOSPIを閉じ、僕は食事に出かけることにした。今注目しているマザーズの銘柄は安定しているし、端末に張り付いている必要もない。
午後三時。普通ならティータイムだ。夜は食事の約束があるし、軽いもので済ませよう。そう思って車で行き着けのカフェに向かう途中、フロントグラスの向うに、何でも屋家業に励む義兄を見かけた。
いつも同じところで髪がぴょこんとはねているので、後姿でもすぐ分かる。
義兄は、顧客らしき老婦人から中華まんをもらっていた。美味しそうにほうばりながら老婦人との世間話に興じているらしい義兄は、楽しそうだ。
前の会社をリストラさえされなければ、姉と別れることもなかっただろうが、今の仕事の方が義兄には向いているような気がする。
カフェで一時間ほど過ごし、書店を梯子して帰る途中、また義兄を見かけた。
今度は、犬を連れた老人に焼き芋をもらっている。礼を言ってるらしい義兄の素晴らしい笑顔。あれを見ると、食べ物をあげたくなるのもよく分かる。
そうだね、僕も明日あたり、タイヤキでも買って差し入れに行くとしようか。きっと義兄は喜んでくれるだろう。
ああいう人を見ていると、殺伐とした気持ちが和む。
2009.11.13