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翌年の師走頃の<俺> 轢き逃げ 2

結果から言えば、犯人はすぐ捕まった。


俺がナンバープレートを覚えていたのもあるし、どの車種、とすぐに答えられたことも大きいだろう(名称は知らない。でも、この辺りで良く見かける<金太銀太タクシー>と同じだったんだ。乗ったことないけど)。


遺留品もあったしな。俺がとっさに投げ出した傘の柄が、偶然轢き逃げ車のスモールライトのカバーを砕き、道に散らばった。


傘はそのままタイヤに巻き込まれてから弾き出されたんだが、折れ曲がった骨の部分に車の塗装が付着した。さらに、任意で容疑者の車を調べたら、その傘の繊維がホイールから見つかったという。


ぐちゃぐちゃになった傘が、まさにボロ雑巾状態で道路に転がっているのを見た時は、アキコちゃんや俺がこうなってたかもしれないと思って、ぞっとした。


ブレーキも踏まずに道の反対側を歩いていた俺たちに突っ込んできた原因は、よそ見だそうだ。ケータイでメールを打っていたのだという。それと、直前まで犯人のいたホテルのバーの店員の証言によると、完全な酒気帯びだったらしい。泥酔とまではいかなかったそうだが。


それでも、犯人は最初、代行運転を頼んでいたという。だが、その運転手が到着する前に、待ちきれなかったのか、自分で運転して駐車場から走り去ってしまったらしい。


犯人は大学生。車は、父親からの誕生日プレゼントだったそうだ。

──それを聞いたとき、俺は溜息しか出なかった。




ひき逃げ、といっても、俺の怪我は大したことはない。


腕をミラーの端が擦ったのと、アキコちゃんを抱えて無理に身体を捻った結果、足首を捻挫した。ただそれだけだ。


病院に運ばれて医師の診察を受けた際、びしょ濡れになった服を脱がされたんだが、あの時はびっくりしたぜ。左の肘の外側が、内出血で真っ青。というか、黒に近かった。道理で痛いと思った・・・ 


けど、骨も神経も腱も何ともなくて、ただの打ち身で済んだらしい。ただの、とはいえ、ちょっと動かせないくらい痛かったけど。今は痛み止め効いてるみたいだからいいけどさ。


足は事故直後からヤバいなぁ、と思っていたら、案の定、後から倍くらいに腫れ上がってしまった。これではまるで、象の足・・・


腕は全治一週間、足は全治二週間と診断された。


アキコちゃんは、どこにも怪我はなかった。良かった。本当に良かった。念のためと、俺と同じようにMRI検査を受けた際には、トンネルめいた装置の中に入れられるのが怖くて泣いたそうだけど、それはご愛敬。


運び込まれた病院は、偶然にもアキコ・ママの職場だったようで、会社から飛んで来たパパとともに、泣いて娘の無事を喜んだ。そりゃ泣いちゃうよなぁ。その気持ち、よく分かる。


もしも娘のののかがこんな目に遭ったら・・・と思うと、俺だってたまらないよ。


もらい泣きしそうになりながら親子三人を眺めていたら、背後から俺を呼ぶひっく~い声が聞こえた。


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□■□ 逃げる太陽シリーズ □■□
あっちの<俺>もこっちの<俺>も、<俺>はどこでも変わらない。
『俺は名無しの何でも屋! ~日常のちょっとしたご不便、お困りごとを地味に解決します~(旧題:何でも屋の<俺>の四季)』<俺>の平和な日常。長短いろいろ。
『古美術雑貨取扱店 慈恩堂奇譚』古道具屋、慈恩堂がらみの、ちょっと不思議なお話。
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