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take11:今日はライバルです

「シマウマに関して私は疑問に思う事がある」

「ほうほうほう、それは何だねアザカ君?」

 学校からの帰り道、アザカとマナミはいつも通り益体のない話をしていた。

「シマウマといえばそのスマートな身体に刻まれた白と黒の模様で有名だが、あれは一体白地に黒なのか、黒地に白なのか、という問題がある」

「ほうほう」

「昨日も姉上やミミの他、スピノザやデンデン、さらに五匹のネコを交えて熱心な意見交換をしてみたのだが、結論は出なかった。故にマナミの意見を聞いてみたいのだが、さて」

「え~っと、シマウマの模様は白地に黒か、黒地に白か、だっけ?」

「左様、果たしてシマウマのシマの正体は何れであろうか」

 マナミは難しそうに「ん~、そうだな」とアゴに手を当てる。

「う~ん、む~ん」

 数秒後。

 やがて太陽の様な笑顔になって

「どっちでもいいじゃんそんなのさ!!」

 腰に手を当てツインテールを払い、勝ち気のスマイル。要するにいつものポーズでカラっと言った。

 その直後、アザカがブラックホールから帰還してきた様な顔をしたので「アザカ?」と聞けば、アザカは顔に両手を当ててしくしくしくと肩を揺すった。

「ううう、報われないよマナミ。報われないよ。昨日私達が一生懸命議論したお題がどうでも良いだなんて、そんなのシマウマが報われないよ」

「え、あれ? シマウマが可哀想なの?」

「ううう、だってそんな定義があやふやな哺乳類なんてサバンナを闊歩してたらすぐに動物愛護団体に溺愛されちゃうよ」

「え、あれ? それ不幸なことなの? よく分らないけどゴメン!」

 バシっと両手を合わせてゴメンナサイのポーズとってるマナミ。アザカは手を下げて

「閑話休題、喉が渇いたので一緒にジュースでも飲まないかマナミ?」

「え、あれ? うん。良いよ」

 何時もの公園に二人で入った。

 そこでで、先客よろしくグリーンパイソンが滑り台をエンジョイしていた。

 マナミはその登っては滑ってを繰り返しているヘビを見ながら

「スピノザが散歩に出てるって事は、どこかにアミ姉様も……」

 とキョロキョロ。しかし次女は

「いや、たぶん同伴者とかいないと思う」

「え、それ脱走?」

「何時もの様にソロで御散歩中だ」

「しかも日常的に?」

「最近はご近所さんも慣れて、たまにご飯とかもらってる」

「すげー」

 二人はスピノザを見守りながら並んで座って、途中の自販機で買ったジュースをそれぞれチビチビと飲んでいた。マナミは炭酸系でアザカは緑茶だった。

「なぁアザカ?」

「うむ?」

「御茶はジュースなのか?」

「怪しいな。でも気にしない」

「珍しいな。ジュースを一緒に飲もうってアザカが言ったらいつもアザカはジュースしか買わないのに」

 言ってからマナミはグビグビとノドを鳴らしながら飲み、アザカは上空をボウと見上げながら

「シマウマの模様よりはどっちでも良い事だ」

 マナミはむせた。

 しばらくすると公園にミミがやってきて、二人の間に座った。

 スピノザは最近この三女の挙動に興味があるらしく、室内でも公園でもその首をミミの方にロックオンしている事が多い。

 キャッキャとミミは公園内を走り回り、スピノザはにょろにょろとその後ろをうねって追尾している。

 マナミがその様子を何か真剣な面持ちで見つめているので、アザカは問うてみた。

「ツインテール勝ち気っ娘や、一つ聞いてみたい」

「なんだね? ポニーテールメガネっ娘」

「もしかして、どうしてあのグリーンパイソンはミミを気にしているのか、気になっているのではないか?」

「おお、さすがは親友。その通り。何か理由があるのかい?」

 ミミとスピノザを見つめているマナミに対して、アザカは頷いた。

「実はミミもズピノザも宇宙人なんだ」

「へぇ」

 キャッキャと言いながら、今度はミミが滑り台に登り始めた。スピノザも後ろに続いた。

 無言だったのでマナミが親友の方を向くと、親友は超新星爆発を喰らった様な顔をしていたので「アザカ?」と尋ねると、親友は顔に両手を当ててしくしくしくと肩を揺すった。

「ううう、即答過ぎるよマナミ。即答過ぎるよ。せめて即答するにしても「なわけないじゃんッハッハッハ」ってオツム緩そうな感じに否定して欲しかったよ、ううう」

「アザカ~。いまお前は泣いてる女の子にカテゴライズされてるために深追いはしないが、今さりげなくワタシが傷付くような言葉を入れなかっただろうか?」

 ミミが滑り台を滑り下りること三度目、公園入口に同じ年ぐらいの女の子を認めると目をキラキラとさせた。

 ウェーブのかかったクッキリ二重の、人形の様な子だった

「あ~! アヤカだ!!」

 と、三女は一緒に遊ぼうオーラを全開だった。しかしアヤカと呼ばれたその子は

「ふん」

 と、つれない猫の様にソッポを向いて行ってしまった。

 一方ミミはそれを残念がって消沈するかと言えばそういうことはなく、そのままズダダダダダっと走って公園を出て、彼女の後を追って行った。

 アザカとマナミとズピノザはそれぞれその様子を見守っており

「いまのって、ミミちゃんの友達?」

 マナミが小首を傾げると、アザカは俯いて腕を組んで「ん~」と呻った。

「友達、友達……そうだな。あれはそう、うん」

 そう言って顔をあげて

「一つの友達の在り方だと思う」

「一つの友達の在り方?」

「ライバルとも言う」

 そんな結論をつけた。

 ミミは走ってアヤカに追いつくと肩を並べた。しかしアヤカは我関せずという感じにお澄ましして歩いている。

「アヤカ!! 何してるのか!?」

「帰り道よ、見て分らない?」

 そっけない言い方だったが、ミミは元気一杯だった。

「家に帰ってるのか!? ミミも一緒に帰る!」

「そう、勝手にすれば?」

 そうして二人は並んで歩いたが、やがて分かれ道に来た。

「じゃぁミミは家こっちだからまた明日な!」

 バイバイと手を振っていこうとしたミミの手を、アヤカがガシっと捕まえた。

「待ちなさいよ。一緒に帰るの」

 ミミはポカンとなった。アヤカは不機嫌そうにフンとそっぽを向いた。

「一緒に帰るって言ったのミミじゃない。だから私は一緒に帰るのよ」

 ミミは右の通りを見て

「あ~~~~、でもアヤカはあっちで」

 次に左の通りを見て

「ミミはこっちで。あ~~~~~~」

 ミミはアホ毛をヒクヒクと動かして思考した。

「あ~~~~~~」

 目も回し始めた。

「う~~~~、でも一緒に帰るってミミ言ったし~~」

 知恵熱も出て、頭から湯気も出た。が

「あ!!!」

 やがて頭に電球が灯った。

「アヤカ遊びに来るか!? ミミの家に今から遊びに来るか!?」

 と言った。しかしその提案に、アヤカはフンとそっぽを向いた。

「いやよそんなの。私は家に帰るの」

 ミミはそこで初めて消沈した様な表情を見せた。アホ毛も項垂れた。

「だからミミが私の家に来なさいよ」

「えぇ?」

 ミミが顔をあげた。アヤカはそっぽ向いたままだ。

「来なさいよ」

 二度言ってもポカンとなっているミミに、アヤカは痺れを切らしたのか。そのまま手を握って強引に先導を始めた。

「ア、アヤカ!?!? ミミを誘拐するのか!?!?」

「するわよ。当たり前よ」

「誘拐するとな!! ね~ちゃん来るぞ!?」

「来ればいいわ。まだガトーショコラはたくさんあるもの」

「アザカも来るぞ!?」

「いいわよ。まだオレンジのタルトだってあるもの」

「ネコとネコとネコとネコとネコとデンデン」

「え~っと、えっと。……大丈夫よ!」

 ちょっとムキになってる感じにアヤカは言った。足も止めない。何だかミミも向きになって、

「でもでも、ヘビもくるぞ!?」

「ふぇ!?」

 初めてアヤカは動揺した様な表情を浮かべた。まるで人形みたいな目を丸くして。

 ミミは調子に乗る。

「緑色でな!! 大きくてな!! グルグルでな!! 目と歯が飛び出ててるブタのすごいヤツ(注:カバです)よりもたぶんスゴイぞ!」

「ううう……ヘビ」

「な!? スゴイな!?」

 勝利を確信したミミがフィニッシュの言葉をかけた。クリクリの目は勝ったきまんまんだった。

 アヤカはたじろぎかけたが、それでもお嬢様的な意地か何かあるのか、またフンとそっぽを向いて

「すごくないもん!!」

 言ってから、ギュっとミミの手を強く握ってより足早に歩き始めた。

「あ~、あ~、アヤカはすごいな!?」

「そうよ。私の方がすごいのよ、ふん」

「爆発も出来るのか!?」

「簡単よ、そんなの」

「あ~、あ~、やっぱりすごいなアヤカ!」

 たぶん、三女に勝てる唯一の存在だった。


END

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