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take10:今日は宇宙人です

 日曜の夕食後、次女と三女はローテーブルで向かい合って今日も程良い議論を交わしていた。

「ベタベタだと侮るなかれ。使い古され、有り触れたモチーフにこそ信頼性とはあるものだ。やはり宇宙人が存在するならば、それはクラゲのように足がたくさあって光線銃とか持ってたりするだろう。そして円板型のUFOに乗ってワープしまくる」

 次女が人差し指を立てて言えば

「ミミの宇宙人はもっとすごい!!! 手に足が生えてて頭に尻が生えててな!!!」

「むむ、手に足が生えてて頭に尻が生えてて……ほう」

「お腹に背中がある!!!!」

「お腹に背中……ほう」

 次女は腕を組んで目を閉じる。ソファーではグレートデンが寝そべって、その脇でネコが五匹で団子を作っている。グリーンパイソンはいま、カーペットで寝そべって雑誌を読んでるアミの枕になっていた。

「手に足が、頭に尻が、腹に背か。ふむ」

 アザカは目をトロンと開けた。

「察するに、それは足に手があり、尻に頭があり、背に腹があるのではないか?」

 途端に三女のクリクリの目がキラキラと輝いた。

「すごいすごいすごい!!!! アザカすごいな!!! ミミの頭の中見えたな!!」

「うむ。何となくだがミミの言っている事が分ったのだ。それは恐らく、逆立ちをした人間ではないか?」

「違う!!! 宇宙人だ!!」

「え」

 スピノザが首をもたげ、アミが読んでいる雑誌に顔を寄せた。長女はヘビにも見える様に少し本をズラしてやった。

「むぅ、そうか。宇宙人だったのか。ところでその宇宙人は何色をしているのだ? やはり最強の緑か?」

「えっとな!! 昨日まで緑だったけど今は速い色!!」

 え、速い色? 次女は首をかしげた。

「速くてな!! 光線銃が飛び出てきて円板型のUFOにワーピしまくる色!!!」

「むぅ」

 アザカは、ワーピ? と再び首をかしげ、そして腕を組んだ。

 寝像の悪い灰ネコが、黒ネコの鼻を前足でちょいちょいとしている。

「姉上はどう思う?」

「何かしらアザカ?」

 アミが妖しく目を細め、雑誌からアザカに目線を向けた。スピノザも遅れてアザカの方を向いた。

「もしもこの世に宇宙人がいるとすれば、それはどのような姿形をしているだろうか? ちなみに私はクラゲのように比較的ベタな形をしているのだと思う」

「ミミはアザカ!!」

 え、私? 次女は三女の方を見た。デンデンが寝相の悪い灰ネコの頬を舐めた。灰ネコは大人しくなった。今度は黒ネコが後ろ足でデンデンのふくらはぎをちょんちょんし始めた。デンデンは昼寝を再開した。

「宇宙人……ねぇ」

 しっとりと長女は溜息を吐いた。スピノザは頭を動かして雑誌のページをめくった。

「左様、宇宙人である。果たして如何なる姿か?」

「ミミはお腹すいた!!!」

 え、私情? アザカは首を傾げたが、そういえばジンベイの袖にセンベイ袋を入れてたか、と思っ至ってゴソゴソ。

 アミはやがて不敵な笑みを浮かべた。

「スピノザは宇宙人よ?」

 次女はピタっと動きを止めた。

 三女のお腹が『ぐ~』っと鳴った。

 茶ネコが目をさましてアミの近くに寄り、彼女の赤髪にスンスンと鼻を鳴らすと、マタタビでも味わった様にウットリと寝てしまった。

「スピノザは……宇宙人だったのか」

 次女はトロンとした目をグリーンパイソンに向けた。グリーパイソンはアミの髪の上で寝ている茶ネコの、その尻尾の揺れ具合を見つめている。

「そうよ。この子はアンタレスから遥々やってきた宇宙人なの。今は複雑極まりない事情によってグリーンパイソンの姿をしているけれど、わたしたちの見ていないところでは真の姿に戻っているはずよ」

 黒ネコがアクビと共に目を覚まし、ヒクヒク寝ている茶ネコを発見。興味をそそられて近寄り、またこの猫もスンスンと鼻を鳴らすと、「ニー」とうっとり寝てしまった。

「真の……姿……」

 アザカは窓の外をトロンと眺めた。

 天気は良かった。

 スズメが横切った。

「真の……姿……」

 呟いた。

 三女が次女の袖口から出ているセンベイ袋を取った。そしてそれを開けてポリポリポリ。

 インターフォンがなった。

「ミミが出る!!!」

 三女が勢いよく立ちあがって玄関へズダダダダダ。騒がしい音に三匹のネコも目を覚ました。スピノザはアミと雑誌を見比べている。次のページを気にしているのか。

「お邪魔しま~~す!!!」

 張りのある声にアザカは目を向けた。何時でもどこでも腰に手を当て、勝ち気スマイルのツインテール。マナミだった。

 アザカは小さく手をあげる。

「しゃろーむ、マナミ」

「フーテ・ミッターフ、アザカ!」

 マナミはしゃがんで次女にタッチ。

 三女は花が咲いた様な笑顔で

「みるふぃーゆマナミ!!!」

 マナミは笑ってから三女を抱きあげて

「ガトーショコラ、ミミ!!!」

 ぎゅうと抱き締めたら、ミミはキャッキャと喜んで彼女のツインテールを両方からグイグイグイ

「あああううう、パージできないパージできないそれ」


「はぁ、宇宙人ですかアミ姉様」

 きちんと正座をして両手を膝の上にあて、フンフンフンとマナミは頷いた。アミも身体を起していて、周りにグルグルグルとスピノザを巻いている。

「ええ。マナミちゃんにとって宇宙人ってどんな姿形をしているのかしら?」

 アミは改めて尋ねた。

 ネコ五匹は、うち二匹がアザカのかいている胡坐の上でゴロゴロし、一匹はマナミの肩にぶら下がり、一匹はミミのオモチャになり、最後の一匹はセンベイの袋を気にしていた。

「そうですね~。ふむ。まぁ人間社会に紛れているなら、やっぱり目立たない格好をしてるんじゃないでしょうか? 例えば、それこそ人間そっくりだったりとか」

「ほぅ、人間そっくりか。もしそうなら既に私達は気付かないうちに彼らと接触しているやもれないな」

 アザカはネコの耳を指でくすぐりながら言った。マナミはまた勝ち気スマイル。

「アザカ。お前はいつもボ~っとしてるから、知らないうちに宇宙人に拉致されて、見たことも無い星に連れて行かれてしまうかも知れないぞ?」

 アザカは想像する。

 公園のベンチに座っていたら、頭上に円盤が出現。

 ライトに照らされ目がくらんだら、そこにグングングンと吸い上げられている自分。

 足元では、ネコ五匹がニーニー鳴いて見上げている。

「むぅ、それは困ったな。私はまだこの星を離れるわけにはいかないからな。何せやり残したことがたくさんある」

「ほうほう。それは何だねアザカくん?」

 尋ねるマナミに、アザカはトロンと頷いた。

「私は」

「アザカは?」

「もっと」

「もっと?」

「お前と楽しく遊んでいたい」

 ピタリと、マナミの動きが止まった。

「それに、ミミとも姉上とも、デンデンともスピノザとも、ネコ達とも。もっともっと、一緒にいたいからな」

 アザカは虚空にボウとした視線を向けた。

 視線の先には空があった。

 空の先には宇宙が広がっていた。

 アミはしっとりと溜息を吐いた。

 ミミは寝返りを打った。

 マナミはツインテールを流した。

「その時は、ワタシもさらわれるなきっと」

「むぅ、何故に?」

 アザカがトロンとした眼差しを向ける。

「UFOが来るような場所にアザカがいくならさ、たぶんワタシがソバにいるだろ?」

 次女が珍しくクスリとなった。

「……そうか。マナミはいつも、そういうヘンチクリンな場所には必ず着いてくるもんな」

「そ。だからだよ。まぁ銀河系変わってもよろしくだわ」

「宇宙旅行も、マナミとなら退屈しないかもな」

 二人で笑った。

 デンデンがアクビをしてから起きあがり、ソファーを降りてアザカの隣へ。そしてそこで丸まった。

 目は次女の方に向けている。

「バウ」

 一度吠えた。寝言だろうか、三女が「……アザカいかない」と言った。

 アミが赤毛をサラサラサラと流し、不敵に笑んだ。

「わたしの可愛い妹とその可愛いお友達をさらっていく様な宇宙人が、無事に地球を抜けられるかしらね?」

 そのとき確かに、ネコ五匹が全てゾワゾワっと総毛立った。グレートデンも総毛立った。

「ねぇ、スピノザ?」

 アミに目を向けられると、グリーンパイソンはゆっくりとマバタキし、また雑誌の方に目を向けた。

 三女が目を覚ましたようだ。

 眠そうに目をこすっている。

「ミミ……夢を見た」

 そして「ふや~」とあくび。

 むにゃむにゃ。

「ほう、それは?」

 次女が問うた。

 ミミは目をこすり終わると、スイッチが入った様に目がくりくりとなり、アホ毛も『みょみょ~ん』と何時ものポジションになった。

 元気良く言う。

「ね~ちゃんがUFOを爆破する夢!!!!!!」

 アザカとマナミは腕を組んだ。

 デンデンは二人と長女を見比べた。

 ネコは五匹とも顔を突き合わせてニーニー鳴きあった。

 スピノザは三女の方をじっと見つめた。

 アミは、アミは時計の針を見た。

 午後二時だった

 妖しく目を細める。

 不敵に笑んだ。

「オヤツは何が良いかしらね?」

「イチゴのタルトなど」

「アップルパイ!!」

 次女と三女が答えた後、長女は立ち上がった。

 黙っているマナミに流し目。

「即答しなかったマナミちゃんには、罰としてわたし特製のトロピカルフルーツパフェを食べてもらうわ」

 へ? と言うマナミ。アミは赤髪をサラサラと手の甲で流した。

「新鮮な果肉と手作り生クリームの滑らかさが織りなす極上のシンフォニーに身も心もスウィートになるといいわ」

 アミはウィンクしてからキッチンに向かった。

 マナミは顔を真っ赤にしてカーペットに大の字になった。

 そこへネコ五匹は団子を作りに向かった。


END

どうも無一文です^^


節目の十話なので挨拶をば。

御覧下さってどうもです。

評価や感想を頂けると漏れなく創作意欲の滋養分になります。

しかたねー、話を育ててやるぜ!

という奇特な方は宜しくお願いします。


それでは引き続き、この益体のない話をまったりお楽しみください

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