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世界

随分と間が開いてしまいました。申し訳ありません。

先週中頃にお腹を壊しまして、家人が留守ですので、放っておいたのですが、とうとう我慢しきれなくなり、医者にかかるはめに・・・・2回通院で、抗生物質を処方して貰い、今週初め頃には良くなったのですが、その間に溜まった仕事が・・・・それもあまり無理できないため、出張しなければならない仕事は来週に回ることに・・・今週は土日も仕事しなければいけないようです。


この国ではいくら気をつけていても、感染症は当たり前なんで、それほど気にはしていませんのですが、今回のはかなり強烈でした。どこで食べたものがいけなかったんだろう??表で食べるときはかなり気をつけているんですが・・・

なにはともあれ、第57話です。

滝川からの情報は興味深いものだったが、海上に居る限り、何も出来ることは無かった。気にはなったが、それよりも、目の前にある課題の解決が先決であった。

復旧した通信装置は、それまでの物と比べて、数倍も通信速度が向上していた。そのため、回線復旧直後から、知性体は調査機構のメインコンピューターである、「地球シミュレーターII」に対して、これまで以上のリクエストを送信していた。前回、「みこもと」がこの衛星通信装置を設置した直後は、「みこもと」のメインコンピューターに接続され、当初の3ヶ月ほどは「みこもと」のメインコンピューター経由で「地球シミュレーターII」に接続されていたが、「みこもと」の業務に支障を来すほど通信量が増大したため、「地球シミュレーターII」と直接接続されるように設備を新設した。今回新たに取り付けられた衛星通信装置はそれに特化したものだった。以前の単純なQPSKと異なり、スペクトラム拡散を用いたデーター伝送は傍受解読を非常に困難な物にしていた。(これには「みこもと」で用いられているUWB高速データー伝送技術と同じ物が使用されている。)

これなら仮に米政府がエシュロンを用いて傍受しても、伝送データーの再構築には相当な時間が必要と思われた。この知性体についてはいつかは公にしなければならず、それまでの間、邪魔が入らなければ十分と考えられており、その目的には最適の装置だったと言える。

ともかく、通信回線が復旧したことで、内地での研究に支障は無くなった。次は防護対策だった。取りあえず、新装置は全て厚さ7mmのステンレス鋼板でできた筐体内に収容され、その筐体から直接アンテナ・ドーム支柱が伸びていた。さらに浮力体舷側に長さ2.5m、直径19mmのこれもステンレス鋼製の丸棒を15Cm 間隔で立て、乗り移り防止を図った。この改装で浮力体の喫水が変化したが、元々かなりな余裕がある設計なので問題は無かった。また電源もこれまでの太陽光パネルから波力発電方式(灯浮標などに使用される。)に変更、これで浮力体外部には一切電源装置が無い状態になった。これらの装置、筐体も全て今回の改修で予定されていた物であり、唯一、乗り移り防止柵のみが現場で決定されただけであった。


これらの対策を終えた頃、「みこもと」のレーダーに目標が現れた。全ての対策を終わり、衛星通信の試験中だった「みこもと」は、この目標を捕捉するため、移動を開始した。南西方向に現れた目標は「みこもと」が移動を開始すると、逃げるかのように方向を変え、海域から離れる針路を取った。AIS(船舶情報自動通報装置)によれば、件の韓国調査船であった。「みこもと」は20海里ほど追尾した後、針路を180度変え、浮力体近傍へ戻る航路に乗った。

吉村と山下船長は連名で、調査機構にこの再接近を報告、同時に滝川にも連絡、滝川は調査機構と調整の上、調査機構名で公式ルートを通じて妨害行為を政府に報告した。また滝川は総務省筋を通じて報道機関にリーク、一部の報道機関では「韓国調査船日本のタンパク塊監視用海洋観測装置に妨害行為」という見出しが躍ることになった。調査機構は政府への報告に吉村達が送ったビデオを添付しており、報道に乗った事からも政府は重い腰を上げて、韓国政府に外交ルートを通じた文書による抗議を行わざるを得なかった。この抗議に対する韓国側の反応を計っていた滝川は、韓国政府が「でっちあげだ」と騒いだ瞬間、米国の知り合いを通じて、破壊行為のビデオをネット上に公開した。この浮力体からの水中画像や音響観測データーは米国コーストガードにも送られており、当然ながら米国政府もこの破壊行為を把握している。同時に調査機構から政府への公式報告が公開され、その報告書には添付されたビデオの一次ソース所有先が記載され、それにははっきりと米国沿岸警備隊の名が記載されていた。これにより人的被害を出しているハワイ州や米西海岸の市民が、この破壊行為に抗議の声を上げた。逆に日本では多くの報道機関がこの事件を報道しなかった事もあって、抗議の声が出遅れていたが、ネットを中心に米国の報道などから、事実が判明するにつれ、徐々に騒ぎが大きくなりつつあったが、ホノルルで発生したような、韓国領事館への投石などの騒ぎには至っていなかった。しかし、全てが公開されているにも関わらず、それを報道しようとしない報道機関への風当たりは強く、報道機関自らが国民の知る権利を侵害している、との批判に答える術を持たなかった。


韓国政府はこの動きに対し、表面上は日本のでっち上げとして、日本政府を糾弾しようと動いたが、米下院公聴会で沿岸警備隊がビデオは直接、浮力体から受け取ったもの、と言う証言を行い、それがTV中継された事で黙り込むしかなかった。しかし、裏側では浮力体調査の依頼主である米政府の一部勢力と協議、このビデオが日本側から漏洩された事を証明することで火消しを計った。しかし、これは最悪のタイミングでそれを行ってしまった。時を同じくして米海軍は先に遭難した最新鋭潜水艦を正式に就航させたのだ。そしてその就航式の中で試験中の事故に触れ、タンパク塊、巨大生物の脅威にもひるまず、果敢にこの潜水艦を救助、一人の犠牲者も出さずに済んだ「みこもと」とその深海作業艇の功績を称えたのだ。そして、その遭難位置が話題の浮力体の浮かぶ位置であることを明言し、米国の安全保証省勢力を完膚無きまでに叩きのめすことになった。そして下院秘密公聴会において、ジョーブ中佐の報告書が公開された事で、止めをを刺されることになった。米国政府の公式依頼を受けた船舶に乗り込み、米国納税者である乗り組み員の救出に対し、妨害行動とも認定される行為を米海軍士官に対してまで行ったのである。また潜水艦そのものも、米国納税者が納めた金で建造されており、それを失わずに済んだ事は、一重に「みこもと」の功績であることは明白だった。そして今回の破壊行為の発端となった、浮力体への調査依頼も国家安全保障省独断で韓国政府に依頼がなされており、国務省は全くの寝耳に水であったことも判明した。確かに韓国以外依頼できる処が無かったのは事実だったが、議会に報告もされず、国務省も知らないとあっては、越権行為である可能性が強かった。確かに法制上、国家安全保障省は独断での行動が認められており、テロ活動に対する守秘から、議会への報告も義務づけられては居なかったが、それは米国内、もしくは米国内で行われる恐れのあるテロ行為を含む破壊工作に対してであって、米国の財産と国民を救出する活動に対して制限を加える権限は明記されておらず、また、外交に関する事柄は国務省との調整が必要であることは明白であった。

この大失態から、国家安全保障省の解体が議会での議題に上り、折から中東方面の情勢が険悪であったため、解体はされなかったが、これまでのような活動は米国内に限定され、対外活動は国務省の指揮下に置かれることになった。大幅な権限の縮小であった。そして、この程度の活動であるのなら、FBI、CIA、DIA、などの組織がすでに存在し、経費的に見れば、これら既存の組織を拡充する事で対処が可能な部分がほとんどだった。

しかし、この過程で、韓国は完全に見捨てられたと言って良かった。のみならず、米海軍の行動に関連する貴重な情報を提供する観測ポストを破壊し、なおかつ、今回のタンパク塊問題で逐次遅滞なく情報を公開した日本政府の行動により、ハワイ州や西海岸では、多数の米国民の命が救われている。その日本を米国内の勢力と結託し貶めようとした行動は、米海軍のみならず、米軍全体に問題行動として認識され、また一切の武器を韓国に向けていない日本への行動に対し、現在も戦争状態が続く北朝鮮への対処には、コルベット艦撃沈事件や砲撃事件などに見るように、甘い面しか見えない韓国政府、軍に対する信頼がほぼゼロにまで落ち込んだ事は、致し方のない事であった。これを機に、韓国駐留米軍は2013年に指揮権返上と相まって、韓国からの撤退、及び国連軍の安全保障を見直す動きが発生し、これに対して韓国政府、軍部は叩頭せんばかりの態度で米軍の翻意を計ったが、失われた信頼を取り戻す事はできなかった。

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