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再出港

第55話です。

最近はほとんど更新が週一になっていますね。済みません。今週は今日からカルナバル(カーニバル)ですので、来週火曜日までお休みです。少し書きためようと思って居ます。

家族がブラジルへ里帰りしましたので、一人でのんびりしていますが、猫がうるさい。^^;;;

娘が居ないので、私の膝で寝ようとしまして、15分ごとに降ろすんですがすぐに戻ってきて・・・

猫に邪魔されなければ、来週は2回更新が出来ると思いますが、なにせ猫が・・・・・・

あれから6ヶ月が過ぎようとしていた。「みこもと」は「かいえん」を失い、「ドリイ」も艇体の放射化が酷く、耐圧殻を含む全体の80%にも及ぶ部分を廃棄しなければならず、新たな艇体を建造する方が経済的であることが明白になり、廃棄される事が決まったため、運用主体を失って埠頭で無為の時を過ごす事しかできなかった。しかし、調査メンバーはそれなりに多忙だった。第2号の建造が決まった「かいえん」のために、長崎、野瀬、一の瀬、津田の操縦者4名は設計陣との調整に追われていた。長野、田中もやはり新造が決まった「ドリイ」2号の設計に忙殺されていた。村木、望月の生物学系2名は、次回ノーベル賞の有力候補であったため、学会活動にやはり忙殺され、調査機構の事務所には吉村と若干のメンバーしか残っていなかった。

「吉村主任、お電話ですよ。海自の滝川さん。」

「お、ありがと。みっちゃん、可愛いよ、みっちゃん。」

「だからセクハラだって言ってるでしょ。それ。海に出てる時はカッコ良いのに、事務所だとなんでオッさんになるんだろ、主任は・・・」

あれから2年が過ぎ、研修生の肩書きが取れ、正式雇用となって何度か海にも出ている八木みどりがいつもの調子で取り次いだ。

「まぁまぁまぁ、そうとんがらずに。へい、提督、何かご用ざんしょか?」

「ああ、吉村さん、おはようございます。そちらへお伺いしたいんですが、今日体空いてますか?」

「へい。あたしだけがヒマしてるって、怒られたところでござんす。」

「ああ、そうなんですか。それじゃすぐにお伺いします。」

「へい、お待ちしております。」

「ああ~、みっちゃん、滝川提督が来るそうだ。なんでお茶とお茶菓子ね。接客経費で落としておいておくれ。」

「ダメです。一昨日経理から釘刺されたばかりでしょ。調査課は一連の事件で金を使いすぎてるから、接客にはあめ玉一個のお金も出せませんって。」

「あ~~~、あれね。うん、そんじゃ船務の岩永事務長に・・・」

「それもダメ。昨日残っている課員と飲み会やろうとして断られたばっかりでしょ。全く懲りないんだから。」

「え~~~、何か無いのぉ~~~」

「事務所の冷蔵庫に残り物の羊羹がありますけど、あれ長野さんが大事にしてたヤツですよ。」

「おぉ、長野やつか、構わん。適当に切り分けて用意しといて。」

「知らないっと。長野さんキレると何するか判らない人ですけどね。」

「何、俺が食った事が判らなければ問題無い。ん、みっちゃん、何その手は?」

「口止め料。」

「うん、昼飯ね。」

「社食じゃダメですからね。太っちゃうといけないからヘルシーなコースで手を打ちますわ。」

「鬼!・・・・」

滝川は1時間ほどでやってきた。

「吉村さん、お時間取らせてすみません。」

「いぇいぇ、提督自らおいでになるんじゃ、無碍にもできませんから。おーい、みっちゃん、お茶お願い。」

「ああ、八木さんすみませんね。お手を煩わせてしまって。」

「いえ、とんでもないです。どうぞごゆっくり。」

「相も変わらず提督と俺への態度の違いは何なんだ?提督とそんなに歳は違わないはずなのに・・・」

「デリカシーの違い。」

「チッ!ところで、今日は何でしょう。提督。」

「ええ、それなんですが、例の知性体との交信設備、米海軍が目を付けたようで・・・。」

「しかしあれはタンパク塊の監視用で済んでいるのでは?」

「ええ、そうなんですが、多分エシュロンと思いますが、衛星へのデーターを解析されたようなんです。」

「全く。あいつらは敵なのか味方なのか・・・・」

「それで、偵察情報に寄れば、韓国の調査船が向かってるようなんですが・・・」

「それも米海軍の意を受けてと言うことですか?」

「いえ、そこまで掴んでいるわけではありませんが、タイミングがなんと言いますか・・・」

「ああ、なるほど。」

「で、この一件、裏には安全保障省が絡んでいるようなんです。」

「ああ、例の二人組が所属していた処ですね。」

「ええ。米海軍の中には連中をあまり良く思わない勢力がありましてね。おかげで判ったわけですが。」

「なるほど・・・しかし、今あれを表に出されるとかなり困った事になりかねない・・・どう対処しますかね。」

「それなんですが、『みこもと』を出せませんかね。海自の艦艇だとどうしてもあれですから・・・」

「ああ、そういう事ですか。船は出せると思いますけれど、装備がねぇ・・・『かいえん』も『ドリイ』も無いですから。」

「ええ、それは判ってます。以前の『しんかい6500』はまだ保管されているんじゃないですか?」

「ええ、保管されては居ますが、潜水に耐えるコンディションとは言い難いですよ。」

「いえ、実際に潜っていただく必要は無いと思います。対外的に潜る装備を積んで出た、と言うのが重要なんで。」

「で、実際には『みずなぎ』辺りを1000mより浅い処へ潜らせてお茶を濁すと。」

「まぁ、そういう事になります。」

「機構の上との話は出来てますね。」

「ええ、うちの上が今日午後から話にくるはずです。」

「いや、いつもながら手回しが早い。」

「恐縮です。」

「ところで韓国の調査船は今どの辺ですか?」

「まだ日本海を出てませんから、3~4日中に出港願えれば『みこもと』なら間に合うと思うんですが・・・」

「了解です。村木と望月は学会ですから体が空きませんが、他のメンバーは大丈夫でしょう。早速動きましょう。山下船長とも連絡を取らないといけませんし。」

「大変なお願いをして申し訳ありません。ただ、あれを今知られるわけには行きませんから。」

「ええ、それは判ってます。」

滝川との会談後、吉村は動き出した。「みこもと」再出港の段取り調整のためだった。船長と機関長に連絡を取り、早急に出港体勢を作る事を依頼、調査員達にも現在の仕事を引き継いでもらう準備を指示した。しかし、機構上層部の動きは遅々としていた。話の性質上、「みこもと」の出港は機構自身の判断という形を取る以外無かったが、それに付随する責任問題の回避に汲々としていたのが原因だった。滝川との会談から1週間が経っても出港命令が機構から発令されなかったのだ。内々で可能な準備はすでに整えていたが、燃料や食糧などの購入品は出港命令が下りなければ、予算を執行できない。

吉村は何度か上に掛け合ったが、その度に返ってくるのは曖昧な答えだった。この事態を心配した滝川は、非常手段を採った。防衛省から手を回し、機構上層部の一人、出港に強硬に反対していた理事の首をすげ替えたのだ。財務省から天下っていた人間だった。海洋調査機構には、その任務の性質上、防衛省からの天下り組がそれなりの力を持っている。現理事長は文部科学省出身だったが、副理事長は防衛省組であった。この伝を使って、防衛省から財務省にそれなりの話がされたのであろう。件の理事は別の財団の理事へ横滑りの形で排除され、空席には防衛省からの出向者が座った。このような茶番劇に時間を費やした結果、出港命令が下された時には、すでに会談から10日が過ぎ去っていた。

「みこもと」が設置した衛星通信装置浮力体周辺に向かっていた韓国調査船は、日本海溝付近で調査活動に入ったため、いまだに問題海域には到達していなかったが、調査が終わればそちらへ向かうものと思われた。「みこもと」は出港を急いだ。

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