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迎撃

今度はバックアップファイルが飛びました。書き直した分が全てアクセス不能。仕方なくまた書き直しています。ディスク・ユーティリティーで見ると、起動ディスクが不良となっています。しかし、起動にも他の操作にも異常はなく、不良もSMARTのエラーのようです。しかし、問題は起動ディスクだけで、バックアップの外付けディスクは異常になっていません。

なんか、ウィルスみたいな感じだったんで、ウイルスソフトを別のものに更新して検査しましたが、結果は無し。なんだろう・・・

それでは23話目どうぞ。

この頃、第57任務群本隊は、輪型陣の中央に航洋タグボートとそれに曳航される潜水艦、その左右にタイコンデロガ級イージス巡洋艦を置き、その前方に空母「ニミッツ」を置いた艦隊陣形で新たに設定された制限海域の東側限界線近くに達し、南東へ進んでいた。中国艦隊はすでに圧懐した潜水艦の沈没点付近に到達しており、海底の捜索を行うらしき海洋調査船と駆逐艦1隻を沈没点付近に残したまま、57任務群本隊の後を追って南下していた。艦隊から分離した2隻は方位南南西に向かい、漂泊する「みこもと」と「ステザム」への最短コースを進んでいた。中国艦隊には2隻の補給艦と思しき艦が随伴していたが、「ニミッツ」艦載機の偵察では中国艦隊が補給を行った形跡はなかった。

「みこもと」と「ステザム」は、中国艦が約100海里の距離に近づいた時点で、核汚染モニタリングを打ち切り、任務群本隊とは逆の西に向かって「ステザム」の燃料事情が許す最大速度24ノットで避退を開始した。この時の中国艦の速度は21ノット程度であったため、中国艦が「みこもと」の現在位置に達する頃には、西方に120海里程度の距離を取れると考えていた。本隊とは逆方向へ避退したのは、「みこもと」の帰路を考慮したためであった。本隊へ接近する方向、つまり東へ避退した場合、本隊を追尾する中国艦隊との接触を回避するために、相当な大回りが必要だった。補給を受けられなかった「ステザム」より燃料事情は良いとはいえ、有り余っているいるわけではない。東へ避退した場合、中国艦隊を迂回する航路では、日本領海までの燃料事情が著しく不安になるためだった。

しかし、「みこもと」も「ステザム」も中国側の彼らへの関心の度合いを読み違えていた。というよりも、事実上手出しが不可能な空母機動艦隊である57任務群本隊よりも、たった2隻、それも1隻は非武装船であることが確実な「みこもと」と「ステザム」なら、彼らの力でどうにかなると踏んだのかも知れなかった。他の手段を持たない中国側は、相当な衛星資源を「みこもと」と「ステザム」の2隻に集中したのだろう。「みこもと」が避退を始めて1時間半程度が経過した時だった。船橋の軍用通信端末が呼び出し音を鳴らした。当直中だった2等航海士はブリッジ後部の水先人室で休んでいたジョーブ中佐を呼び出した。数秒で船橋に姿を現したジョーブ中佐はすぐに軍用端末で交信を開始した。短い交信が終わると、彼は自分で船長室に連絡を入れ、階下の船長室に降りていった。

船長室応接間にジョーブ中佐が入ると、船長と吉村がすでに待っていた。吉村の自室は船長室の隣にある。

「ジョーブ中佐、何かあったのですか。」船長の山下は聞いた。

「ハイ。こちらに向かっていた中国艦が針路変更シテ、高速でこちらに向かっていマス。『ニミッツ』の早期警戒機が探知しまシタ。このままだと、後3時間ほどでレーダー覆域に入りマス。」

「こちらの避退が向こうに知られたと言うのですか!」

「ソウデス。おそらくかなりな数の衛星を我々の海域に集中させたのデショウ。」

「困った事になりましたね。本隊からの支援はあるのでしょうか。」これは吉村だった。

「ハイ。艦隊司令部からは航空機の支援を出すといっていマス。ただ足止めはできないでショウ。」

「『ステザム』の燃料の件もありますから、さらなる増速もコース変更も難しいでしょう。」

「吉村さん、それはこちらも同じですよ。これ以上燃料の消費が増えれば、小笠原領海までの最短コースを取らざるを得なくなります。」

「困りましたね。しかし、このまま進むしか方法は無い。」

「そうですね。警戒しながら向こうの出方を待つしか方法は無さそうです。ジョーブ中佐、そのように『ステザム』に伝えて戴けませんか。」

「ワカリマシタ。どちらにせよ、『ステザム』にも採れるオプションはそう多くないと思いマス。」

3時間後、中国艦がVHF通信可能範囲に入ったと思われる頃、「みこもと」のVHF通信機から中国語と思しき音声が流れ出した。船橋当直員がすぐに船長を呼び、船長はジョーブ中佐と吉村を船橋へ呼んだ。吉村は中国語と思われることから、自室からチャンを船橋に呼び出していた。遅れて船橋に入って来たチャンに吉村は、

「チャンさん、すみませんね。どうも中国語で呼び出しを受けているようなんですが、通訳をお願いできますか。」

「判りました。やってみます。」

まだ距離が遠いため、FM方式のVHF通信でも、若干の雑音が混じっており、慣れないチャンは聞き取るのに苦労していた。中国艦はまだ水平線下にあった。

「あまりうまく聞き取れませんでしたが、内容は停船命令のようです。日本船は直ちに停船して接近を待て。従わなければ必要な措置を取る。と繰り返して言っています。」

ジョーブ中佐はチャンの翻訳を「ステザム」に中継した。しばらくの協議の後、今後の交信は「ステザム」が行う事となった。交信は衛星リンクを通じて、57任務群旗艦「ブルーリッジ」、ハワイのCINCPAC、ワシントンの国防総省にリアルタイムで中継されていた。交信は英語で行われた。


<ステザム>「こちらを追尾中の中国艦、こちらは合衆国軍艦『ステザム』である。貴艦の発した停船命令の説明を要求する。当該日本船は当艦による随伴を受けている。」

<寧波>「『ステザム』こちらは中華人民共和国軍艦『寧波』である。日本船は中国領海を侵犯した疑いがある。当艦は日本船の拿捕命令を受けている。停船して指示に従え。」

<ステザム>「こちら『ステザム』。貴艦の主張は理解不能。当海域は中国領海では無い。国連海洋法条約に照らし、貴艦に当該船の拿捕権限は無い。また、貴艦の行動は海賊行為防止に関わる国連決議に違反している事は明白である。直ちに追尾を中止し、針路を変更せよ。」

<寧波>「こちら『寧波』。本艦は中華人民共和国法により、権限を与えられている。直ちに停船して指示に従わなければ、しかるべき処置を執る。命令である。停船して接近を待て。」

<ステザム>「『寧波』こちら『ステザム』。貴艦は自分が何を言っているのか理解しているのか?注意して置くが本交信は全てしかるべき部署に中継されている。貴艦の持つ権限は合衆国軍艦はもとより、日本国政府公用船に対しても及ばない事は明白である。従って貴艦の指示に従わなければならない義務は無い。逆に、本艦は合衆国政府より与えられた権限により、海賊行為防止に関わる国連決議に明白に違反する貴艦らに対し、直ちに追尾行為を中止するよう勧告する。従わない場合、本艦に与えられた権限に基づき、しかるべき処置を執るが宜しいか。」


この「ステザム」の通信に対する返答は、水平線上に現れた煙の尾を引く二つの光点だった。直後に「みこもと」船橋の通信端末から、「ヴァンパイア、ヴァンパイア」のミサイル警報が流れ出した。この時の「みこもと」と「ステザム」の位置関係は、警戒配置についた事もあり、10海里以上離れて、中国艦と「みこもと」を結んだ線上に「ステザム」はあった。「みこもと」からは遙かに霞んで見える「ステザム」から4本の煙の帯が上がり、その先端に4つの光点があった。「ステザム」が迎撃を開始した瞬間だった。

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