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制限海域

出先から帰ってきて自宅から更新しようとファイルを開いたところ、ファイル破損と表示され開けなくなりました。バックアップはすでに掲載した分までしかありません。仕方なく思い出しながらまた書いています。およそ4話分くらいのデーターが飛びました。ふぅ・・・

第22話です。

推敲が甘くなっています。誤字、脱字等あると思います。ご容赦ください。

「みこもと」に随伴するために派遣された駆逐艦はおなじみの「ステザム」だった。また、「ステザム」との連絡士官として乗船してきたのは、これまたおなじみのジョーブ中佐だった。

「ステザム」は放出された核汚染物質を含む気泡の中に入ってしまったため、乗員の被爆は軽微で済んだものの、艦各部に洗浄しきれない高濃度汚染域が出来てしまい、特殊な洗浄法を用いなければ、除染が不可能な状態であった。このため、戦闘行動に制限があることから、比較的安全と思われる「みこもと」随伴に派遣されたのだった。ジョーブ中佐は第7艦隊司令部付きであるため、第57任務群とは命令系統が異なり、艦隊司令部には彼の居場所が無かったため、志願して「みこもと」に乗り込んで来た。もちろん、吉村や船長と知己があることも大きな動機ではあった。中佐という階級は「ステザム」艦長と同じであり、つまり、艦長以外の「ステザム」士官から、命令を受ける必要がない、と言うことでもある。米第7艦隊指揮下に無い、日本の公用船に乗り込む連絡士官としては非常にやりやすい立場であった。

もちろん、吉村や船長も日本滞在が長く、日本語も堪能なジョーブ中佐の連絡士官乗船は歓迎すべきことであった。彼は乗船と同時に持ち込んだ艦隊衛星通信装置を、「ステザム」の技術下士官とともに「みこもと」の乗員の協力を得て、船橋内に設置した。「ステザム」との通常交信は一般のマリンVHF通信機で行うが、軍事的に重要な通信はこの通信端末を用いて行われるのである。また、この通信端末は艦隊司令部でもモニターでき、当然ながら「みこもと」の位置、針路、速度などがリアルタイムで艦隊旗艦CICでモニター出来る様になっていた。

「みこもと」は「ステザム」と会同すると、針路を180度に取り、新たに米海軍が設定した制限海域から抜ける航路を進んだ。速度はゆっくりとした16ノットだった。これは補給ポスト付近に高線量汚染があるため簡単には燃料補給を受けられず、残燃料に不安を抱える「ステザム」の状況を考慮したためだった。

それでも20時間ほどで制限海域外側100海里付近に達し、「みこもと」はここで当初計画通り、72時間のモニタリングのための漂泊に入った。「ステザム」は「みこもと」から方位10度方向に約3海里ほど離れて同様に漂泊していた。

モニタリングの漂泊とはいえ、すでに「みこもと」の聴音能力を承知している「ステザム」から、音響監視を依頼されていたため、「みこもと」は「金魚」を曳航しておよそ5海里ほどの距離を8の字型に行きつ戻りつしていた。

「みこもと」の受聴した音響信号は船内の処理装置でデジタル化され、長野たちの努力で、船橋の軍用衛星通信端末に繋ぎ込まれていた。このため、「みこもと」が捉えた水中音響は、リアルタイムで「ステザム」のイージス端末または艦隊旗艦のデーター処理端末で処理され、水中音響データーベースとの照合により、それが潜水艦でデーターベースに記録があるものである限り、イージス端末に接続された各艦艇、航空機に表示されるようになっていた。このシステムの実証は漂泊を始めて間もなくなされることになった。

その頃、船橋に詰めていた吉村に音響観測室の黒岩から連絡が入った。

「吉村さん、潜水艦らしき推進器音、方位120度、距離8海里以上、深度350m」

「了解、黒岩。ジョーブ中佐に確認して貰う。」

「了解です。」

「ジョーブ中佐、音響観測室から潜水艦らしき推進器音検知したそうです。確認願います。」

「了解デス。すぐに『ステザム』に連絡しマス。詳細をお願いしマス。」

「本船からの方位120度、距離8海里以上、深度350m」

「了解。」

数分後、通信端末の呼び出し音が鳴った。

「吉村サン、探知した潜水艦は友軍のものデス。688級潜水艦がパールから本隊に向かっているようデス。艦名は判りまセン。」

「了解、それなら安心です。あー、音響観測室黒岩、探知潜水艦は友軍と判明。以降モニター不要。」

「吉村さん、了解。それ以外の音響に注意を集中します。」

「宜しく頼む。」

本来、日本の公用船でこのような事を行うのは、いろいろと五月蠅い事になるのだが、任務群本隊から離れ、固有の対潜へりを持たないアーレイ・バーク級イージス駆逐艦である「ステザム」は対潜へりの運用ができなかったため、「みこもと」の聴音能力に頼るしか方法が無かったのである。「みこもと」にしても、すでに複数の潜水艦を探知しており、また中国海軍の強硬な態度から、米艦隊の庇護下で行動する事は必要であった。


「みこもと」が漂泊を開始してから24時間が過ぎた頃、船橋の通信端末が呼び出し音を鳴らした。船橋当直に付いていた2等航海士はインターカムで自室に引き取っていたジョーブ中佐を呼び出した。船橋後部の水先人用船室を自室としていたジョーブ中佐は数秒で船橋に現れ、交信を開始した。すぐに通信を終えたジョーブ中佐は、自ら船長室に連絡を入れ、1階下の船長室応接間に降りていった。そこには隣室の吉村も来ていた。

「船長、吉村サン、今、艦隊司令部から連絡で、中国艦隊から2隻の駆逐艦が離れ、こちらへ向かっているそうデス。艦隊の早期警戒機によれば、我々の周囲300海里にはこちらの艦隊以外船は居まセン。目的は『ステザム』か本船以外にありまセン。対処の準備をお願いしマス。」

「判りました。しかし何で我々なんですかね。それに我々の存在をどうやって知ったんですかね。」

「向こうの意図はわかりまセン。存在は衛星だと思いマス。動いている船を衛星で捉えるのは、かなり難しいデスが、我々はもう24時間以上、この位置からあまり動いていまセン。それで衛星で発見されたのでショウ。」

「しかし、対処って言っても、調査機構本部からは明確な指示があるからなぁ。72時間のモニタリング終了までにはまだ40時間以上あるしなぁ。」

「吉村さん、本船の安全には換えられませんよ。私は船長として、危険が有るなら早期に避難すべきと思っています。」

「しかし、汚染はかなり深刻で、このまま放っておくわけにも・・・」

「吉村サン、この辺は海流が弱いですから、拡散には月単位の時間がかかると思いマス。状況が良くなってからでも遅くは無いと思いマス。原子力艦を除いて、軍艦はあまり長い間補給ナシではいられまセン。」

「なるほど。この状況も長くは続けられない、と言うことですか。」

「そうデス。57任務群も『ニミッツ』が居ますカラ、頑張ってマスけれど、『ステザム』のように燃料に不安が出てマス。」

「ジョーブ中佐、了解しました。本船は退避準備に入ります。まだ時間はありそうですから、中国艦のレーダー覆域に入る前に避退しようと思います。」

「了解デス。『ステザム』とその方針で協議しマス。」

「お願いします。吉村さん、そういうわけです。研究員にも周知お願いします。」

「判りました。私も研究員の安全が第一です。船長の方針に同意致します。」

「なんか、とんでもないことになって、研究員諸君には申し訳ない。状況が状況だけに勘弁して欲しいと伝えてください。」

「いや、船長が謝られる事じゃありません。仕方が無い事ですから。」

「そう言っていただけると気が休まります。それではお願いします。」

船長はそう言って、当直員に状況と今後の方針を伝えるために船橋に登っていった。吉村はすでに夜明けまでの時間が6時間を切って居る事もあり、起床後全員呼集をかけて伝達することにし、自室に引き取った。ジョーブ中佐は「ステザム」と連絡を取り「みこもと」の方針を伝え、0800に「ステザム」艦長と再協議する事になった。

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